斉藤茂吉がこよなく愛した翁草。この花が光善寺に庭に植えられているので、この季節になると身近に見ることができる。白く長い絹毛に覆われた花茎に、暗紅紫色の花をつける。派手さのない地味な花で、その色は一見不気味さえ感じさせる。花が終わって種子が、翁の銀髪のような羽毛で覆われる。茂吉は、チングルマのような翁草の姿を愛でたのかも知れない。
翁草野の枯色はしりぞかず 橋本多佳子
茂吉は翁草の花の色を、「かなしきいろの紅や」と歌に詠んだ。幼いころ遊んだ郷里の山道に翁草が群生していたの忘れかねていた。東京に空襲が激しくなって、茂吉は金瓶に疎開する。さらに歌の門人の好意で、大石田に疎開して大戦を迎える。大石田で茂吉は病床の人となった。茂吉の晩年の姿は、翁草こそが相応しいような気がする。疎開を終えて東京へ帰っていくとき、茂吉は金瓶にたちより、翁草に別れを惜しんだ。
われ世をも去らむ頃にし白頭翁いづらの野べに移りにほはむ 斉藤 茂吉
久しぶりの雨に喜んで、花びらが少しほころんだ。
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