夜な夜なシネマ

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『ちちり』

2010年08月24日 | 映画(た行)
『ちちり』
監督:細野辰興,いまおかしんじ,五十嵐匠,サトウトシキ,窪田将治
出演:安亜希子,土方くるみ,斉木里絵,伊勢みはと,井川祐輔他

『あんにょん由美香』(2009)にも出演していた、
良質のピンク映画を撮るいまおかしんじ監督の名前に釣られてレンタル。

内容はまったく知らず、映像が流れはじめて数秒後には、
あまりの素人くさい演技に、レンタルしたことを後悔したのですが、
なかなかおもしろい試みであることがわかりました。

演技のワークショップ「Workshop@FAITH」なるものがあり、
そこで講師を務めるのが第一線で活躍する個性派映画監督たち。
彼らが、ワークショップに参加した俳優(つまりはほぼ素人)を起用して、
予算や時間などの条件、また、ベースとなる脚本も同じにして、
それぞれがショートムービーを制作。それが本作でした。

だから、5本ともあらすじにすれば同じ。
小説家志望の好子は、あちこちの文学賞に応募し続けているが、
入選には至らず、凹んでいる。
学生時代に一緒に同人誌を出していた勇磨は、
とっくに小説家になる夢などあきらめ、今はサラリーマン。
勇磨からプロポーズされた好子は、結婚を決意。
それを祝福しようと、仲間たちがカフェに集まる。

カフェのみで撮影がおこなわれています。
ベースが同じ脚本でも、監督が替われば全然ちがう話に。
どうやらこのワークショップの参加者はさほど多くはなく、
しかもほとんどがリピーターのようで、
1本目で好子役だった人が、2本目ではその友人役だったり、
1本目と2本目とで同じ役柄の人がいたりします。

こう言っちゃなんですが、やはり素人ですから、見た目は垢抜けません。
さらにはクサすぎる演技の役者さんが多くて(走り出すシーンにはドン引き)、
それゆえ学芸会を観ているような気分にさせられます。
そんななか、いまおかしんじ監督の作品では女性が可愛らしくて、
ピンク映画出身だからなのかなぁと妙に感心。

いろいろな細かい設定は作品によって異なるのに、
必ず登場するのが漫才コンビ。
それと、好子の原稿を勇磨が裏紙に使うというくだり。
この必須条件にこだわった理由を考えるのも楽しいですし、
それを各監督がどう見せるのかも興味深いところでした。

ちなみに、「ちちり」とは「まつぼっくり」のことだそうです。
イタリアでは、まつぼっくりは幸福を運んでくるアイテムだとか。

良い試みだと思います。

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