夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『サイドウェイズ』

2010年04月08日 | 映画(さ行)
『サイドウェイズ』
監督:チェリン・グラック
出演:小日向文世,生瀬勝久,菊地凛子,鈴木京香他

あまりに気恥ずかしくて観ているのがツライほどだったので、
本作については書くつもりはありませんでした。
ところが、昨日、巨人のキムタクの訃報を聞き、
一般的な人生の折り返し地点に差しかかったかどうかというぐらいの年齢で
もしも突然倒れてしまったら、どんな想いが巡っただろうと思い、
急に書きたくなりました。

アメリカ映画『サイドウェイ』(2004)を日本人キャストでリメイクした作品。
オリジナルが好きだからこのリメイクを受け入れがたいのではなく、
そもそもなんでこれをリメイクしようと思ったのか意味不明です。(^^;
なお、初回生産限定のDVDプレミアム版とやらでは、
オリジナルもセットされて1本相当の値段。これはお得かも。

シナリオスクールの講師を務める道雄は、
教え子の中から売れっ子ライターを輩出しているものの、
自身はDVD化さえされていない連ドラの1話を担当したきり。
アメリカ在住の親友、大介の結婚式に参列するため、渡米する。

道雄と大介は、20年前に留学したさいに知り合った。
大介は今はレストランの雇われ店主で、オーナーの娘と結婚する。
披露宴でふるまうワインを買い付けに行くという口実で、
結婚式の1週間前に道雄を呼びつけ、羽を伸ばそうという魂胆だ。

ワイン好きの道雄は、大介のその話にほいほいと乗ったが、
大介はワインより女遊びがしたくて仕方がない。
カリフォルニアのナパ・バレーでワイナリー巡りの計画を立てる道雄を
街へとひっぱりだし、ナンパできそうな女性を物色する。

食事に入った店で、ただちに2人組の女性を発見。
声をかけると、1人は留学時代の知り合い、麻有子だった。
もう1人はその友人で日系人のミナ。
偶然の再会を喜ぶ大介と麻有子だが、
当時、麻有子に想いを寄せていた道雄は、どぎまぎして……。

全編、カリフォルニアロケ。
いい役者さんが揃っているのですが、何かがちがう。
演技も台詞も浮いていて、痛々しい感じすら受けてしまいます。
オーナー一家や留学時代の知人などは当然アメリカ人で、
その会話もなんだかそらぞらしく、う~ん、キツイ。

だけど、キムタクが倒れたと聞いたとき、
なぜか本作が頭をよぎりました。
道雄と麻有子の再会を想い、思い残したこと、なかったかな、
もう一度くらい逢いたかった人、いなかったかな、なんて。

心からご冥福をお祈りします。

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『無防備』

2010年04月05日 | 映画(ま行)
『無防備』
監督:市井昌秀
出演:森谷文子,今野早苗,西本竜樹,中村邦晃,柿沼菜穂子他

お笑い芸人→舞台役者の卵→映画学校入学→映画監督という、
異色の経歴を持つ市井昌秀監督。
ぴあフィルムフェスティバルのグランプリ受賞作です。

本作を製作するきっかけとなったのが、監督の奥様の妊娠。
そのホンモノの妻である今野(市井)早苗が妊婦役で出演し、
出産のシーンは実際の出産時の映像。
猥褻性は皆無ですが、あまりに強烈なため、R-18指定となっています。

片田舎の町工場で軽作業に従事する30代の女性、律子。
てきぱきと仕事をこなし、努めて余計なことを考えないよう、
毎日を淡々と過ごしている。

ある日の帰り道、両手に買い物袋を持った妊婦を見かける。
辛そうなその姿に、「持ちますよ」と思わず声をかける。
黙ったまましばらく一緒に歩き、礼を言われて帰宅。

数日後、その妊婦、千夏が職場にパートとしてやって来る。
妊婦ということでどこも断られたらしいが、
万年人手不足の工場なので来てもらうことにしたと社長は言う。
リーダー格の律子は、千夏に仕事の流れを説明する。

律子を除く職場の女性たちは、千夏にあれやこれやと質問攻め。
「ダンナが無職で、しかも、できちゃった婚。私が働かなきゃ」と、
明るく答える千夏に、車通勤の女性が千夏の送迎を申し出るが、
毎日あぜ道を徒歩で通勤する律子を見て、千夏は自分も歩くと言う。
前を歩く律子を振り向かせようと、
千夏はお腹が痛いふりをしてうずくまるのだが……。

ネタバレになりますが、律子は事故で流産した過去があります。
以来、夫とは同じ家に住んでいるというだけで、食事すら別々。
玄関からそのまま自室へ入る夫。部屋に夕食を運ぶ律子。
余計な説明はありませんが、妙な空気が痛いほど感じ取れます。
「便所の紙が切れてるから付け替えておいて」「…はい」など、絶妙の間合い。

そう、行間が素敵な作品だと思いました。
間(ま)が長すぎると感じたシーンもいくつかあるものの、
律子と千夏の間に徐々に芽生える絆に、こちらの心も解きほぐされます。
空と電線と田んぼ。あぜ道の右端から律子の姿が消えたと思ったら、
左端に千夏が見えて……というシーンがとても好きでした。

圧巻はやはり出産のシーン。これを撮りたかったわけだから、
ほかのシーンは所詮オマケなのかと思わなくもないですが(笑)、
こんな作品に仕上がるなら、きっかけはどうでもいいかも。

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『悪夢のエレベーター』

2010年04月01日 | 映画(あ行)
『悪夢のエレベーター』
監督:堀部圭亮
出演:内野聖陽,佐津川愛美,モト冬樹,斎藤工,
   大堀こういち,芦名星,本上まなみ他

エイプリルフールなので、見事に騙される話を。
こんな話は嘘であってほしいものです。

ドラマやバラエティ番組で活躍する堀部圭亮。
本作は彼の長編映画監督デビュー作です。
原作は木下半太の同名小説で、
過去に何度かTVドラマ化や舞台化もされているそうな。
いずれも観てみたくなるキャストとスタッフ陣です。

とあるマンションのエレベーター。
産気づいた妻から電話を受け、自宅へ向かう途中だった小川は、
エレベーター内で気を失ってしまう。
意識を取り戻すと、小川を心配そうに覗き込む男が2人。
関西弁でまくし立てるヤクザ風の安井と、冴えないジャージ姿の牧原。
エレベーターの隅にはゴスロリファッションの女子高生カオル。

数分間の記憶がない小川に、安井たちが説明するには、
小川が乗り込んだ直後にエレベーターは急停止。
その衝撃で小川はマトリックス並みに宙に舞い、
床に打ちつけられて失神したらしい。

エレベーターはまったく動く気配がなく、
助けを呼ぼうとしても応答がない。
携帯で外部と連絡を取ろうとするが、小川の携帯は電池切れ、
安井と牧原は不所持、カオルは携帯を捨てて来たと言う。

しばらくはどうしようもなさそうで、4人はあきらめ顔で話し始める。
エレベーターに乗った理由を聞いてみれば、
ジョギングに行こうとしていたという牧原は良しとして、
安井は空き巣狙い。カオルは飛び降り自殺するため。
小川は愛人に会いに。それぞれがワケありで……。

物語はほぼ3部で構成されています。
まずは上記のエレベーター内の様子。
続いて、実はこういうことになっていたという種明かし。
最後に「マジですか」というドンデン返し。
後味はかなり悪いですが、最後まで展開が読めずに騙されます。

内野聖陽は意外に関西弁が上手く、
しかも、品のないチンピラ風が板に付いていました。
凄い存在感を見せるのは、管理人役の大堀こういち。引きました。(^^;

後からDVD特典の予告編を観たら、
「あかんがな」と突っ込みたくなるシーンが満載。
もしも予告編を先に観ていたら、種明かし以降、
こんなにおもしろく観られなかったかもしれません。

アガサ・クリスティが効果的に引用されていますので、
推理小説がお好きな方もどうぞ。

何にも知らずにご覧になることをお薦めします。

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