『人生に乾杯!』(原題:Konyec)
監督:ガーボル・ロホニ
出演:エミル・ケレシュ,テリ・フェルディ,
ユーディト・シェル,ゾルターン・シュミエド他
ハンガリーの作品。
原題は「おしまい」を意味するロシア語からきた“Konyec”。
81歳と70歳のジジババによる強盗劇にこんな邦題が付いているので、
お気楽なコメディを想像しました。
そのため、観終わった直後は肩すかしを喰らわされた気分。
しかし、原題の意味を知ったとき、なんだかジーンと来ました。
夫のエミル、81歳。妻のヘディ、70歳。
ふたりの出逢いは1950年代にさかのぼる。
共産主義体制になって間もないころ、共産党の運転手を務めるエミルは、
ブルジョワの屋敷へ私物没収に向かう党員たちに同行する。
階上を調べていたエミルは、屋根裏部屋に身を隠すヘディを発見。
見逃してほしいとダイヤのイヤリングを差し出すヘディに、
エミルはそれを返し、彼女をかくまう。やがてふたりは結婚する。
あれから50年以上の月日が経ち、いまはわずかな年金暮らし。
家賃も払えず、役人が徴収に来れば、部屋で息を殺す。
昔の想いは今何処、腰痛に悩むエミルと糖尿病を患うヘディの間には、
投げやりな会話しかなされない。
そんなある日、役人が差し押さえにやって来る。
エミルの蔵書がごっそり持って行かれそうになったとき、
ヘディが差し出したのはあのイヤリング。
役人は黙って受領証を書くと退散する。
この瞬間、心の中で何かが弾けたエミルは、
運転手時代に支給された愛車のチャイカに飛び乗ると、
当時から車内に残されていた拳銃トカレフを片手に郵便局へ。
こうしてエミルは次々と強盗を犯すのだが……。
防犯カメラには顔が丸写り。
すぐに指名手配され、ヘディのもとを刑事が訪れますが、
捜査に協力すると見せかけて、ヘディはエミルとともに逃走します。
途中ではねてしまった女刑事を人質にして。
まさにジジババ版『ボニーとクライド 俺たちに明日はない』(1967)。
コメディとしては中途半端に重苦しい雰囲気があるのに、
警察はボンクラすぎて、笑えるような笑えないようなビミョーさ。
超脇役の車オタクの刑事だけは可笑しいです。
でも、原題の意味を知ったときに感想は変わりました。
過酷な情勢下で生き抜いてきた彼らが、
人生の終わりに近づいて、成し遂げたかったこと。
ヘディの望みは『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997)を思い起こさせます。
人生に誇りを。
監督:ガーボル・ロホニ
出演:エミル・ケレシュ,テリ・フェルディ,
ユーディト・シェル,ゾルターン・シュミエド他
ハンガリーの作品。
原題は「おしまい」を意味するロシア語からきた“Konyec”。
81歳と70歳のジジババによる強盗劇にこんな邦題が付いているので、
お気楽なコメディを想像しました。
そのため、観終わった直後は肩すかしを喰らわされた気分。
しかし、原題の意味を知ったとき、なんだかジーンと来ました。
夫のエミル、81歳。妻のヘディ、70歳。
ふたりの出逢いは1950年代にさかのぼる。
共産主義体制になって間もないころ、共産党の運転手を務めるエミルは、
ブルジョワの屋敷へ私物没収に向かう党員たちに同行する。
階上を調べていたエミルは、屋根裏部屋に身を隠すヘディを発見。
見逃してほしいとダイヤのイヤリングを差し出すヘディに、
エミルはそれを返し、彼女をかくまう。やがてふたりは結婚する。
あれから50年以上の月日が経ち、いまはわずかな年金暮らし。
家賃も払えず、役人が徴収に来れば、部屋で息を殺す。
昔の想いは今何処、腰痛に悩むエミルと糖尿病を患うヘディの間には、
投げやりな会話しかなされない。
そんなある日、役人が差し押さえにやって来る。
エミルの蔵書がごっそり持って行かれそうになったとき、
ヘディが差し出したのはあのイヤリング。
役人は黙って受領証を書くと退散する。
この瞬間、心の中で何かが弾けたエミルは、
運転手時代に支給された愛車のチャイカに飛び乗ると、
当時から車内に残されていた拳銃トカレフを片手に郵便局へ。
こうしてエミルは次々と強盗を犯すのだが……。
防犯カメラには顔が丸写り。
すぐに指名手配され、ヘディのもとを刑事が訪れますが、
捜査に協力すると見せかけて、ヘディはエミルとともに逃走します。
途中ではねてしまった女刑事を人質にして。
まさにジジババ版『ボニーとクライド 俺たちに明日はない』(1967)。
コメディとしては中途半端に重苦しい雰囲気があるのに、
警察はボンクラすぎて、笑えるような笑えないようなビミョーさ。
超脇役の車オタクの刑事だけは可笑しいです。
でも、原題の意味を知ったときに感想は変わりました。
過酷な情勢下で生き抜いてきた彼らが、
人生の終わりに近づいて、成し遂げたかったこと。
ヘディの望みは『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997)を思い起こさせます。
人生に誇りを。