夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『ランディ・ローズ』

2022年11月25日 | 映画(ら行)
『ランディ・ローズ』(原題:Randy Rhoads: Reflections of a Guitar Icon)
監督:アンドレ・レリス

高校生の頃、の部屋からイングヴェイ・マルムスティーンが聞こえることはあったけど、
やかましいだけの音楽みたいな偏見がずっとありました。
って書いたけれど、いま思い出しました。
そもそも弟がヘヴィメタを聴くようになったのは、
私が中学生のときに買ったレインボーのアルバム“Difficult To Cure”がきっかけだと。
あひゃひゃ、私も聴いていたじゃないか、ヘヴィメタを。

そうなんですけど、ランディ・ローズのことは知らないんです。
ただちょっと気になったのと、上映時間がちょうどよかったのとで、
シネ・リーブル神戸で鑑賞することに。

ランディ・ローズはクワイエット・ライオットの結成者であり、
凄いギターテクニックを持ち、かつ美形で、大人気だったのに、
わずか25歳の若さで乗っていたセスナ機が墜落、亡くなってしまったそうです。

私はランディ・ローズについて何も知らない状態で観はじめたわけですが、
見れば見るほど早世が悔やまれてなりません。
だって、こんなスター要素満載でありながら、めちゃめちゃいい奴。

シングルマザーだった彼の母親は音楽教室を営み、
彼もその影響を受けて幼い頃から音楽に親しみました。
アコースティックギターのみでは物足りなくなって母親にねだったエレキギターを手にしてからは、
彼のギター教師が「もう教えられない。こちらが教えられるぐらい」と舌を巻くほどの技量を発揮。

この美貌なのに、女にだらしなくない。ドラッグやらない。
酒はほどほど飲むけれど、決して酒に飲まれない。
飲んだ翌日も約束をすっぽかしたり遅刻することすらない。
有名になってからも音楽教室の教師として生徒に教え、
生徒が(ライバルと言われていた)エディ・ヴァン・ヘイレンを弾きたいと言ってくれば、
エディの曲を自ら練習して生徒に弾いてみせる。
傲慢さのかけらもなかった好人物そのもの。

好き放題荒れ放題の生活を送っているオジーが今も生きていて、
こんなランディが早死にしちゃうなんて、神様はひどいことをするもんです。
オジーが酒浸りになったのはランディを失ったからという話もあるけれど。

音楽であればジャンルを問わず、どんなものも聴いて、弾いたランディ。
活動期間は短かったにもかかわらず、昨年“ロックの殿堂”入りしたことを天国で喜んでいてくれるでしょうか。
照れくさそうに笑っているかもしれませんね。

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『ミセス・ハリス、パリへ行く』

2022年11月24日 | 映画(ま行)
『ミセス・ハリス、パリへ行く』(原題:Mrs Harris Goes to Paris)
監督:アンソニー・ファビアン
出演:レスリー・マンヴィル,イザベル・ユペール,ランベール・ウィルソン,アルバ・バチスタ,
   リュカ・ブラヴォー,エレン・トーマス,ローズ・ウイリアムズ,ジェイソン・アイザックス他
 
何年ぶりのシネ・リーブル神戸でしょうか。
どうやらこのとき以来、5年半ぶりのようです。
 
封切り日翌日だったこの日、オンライン予約してから行きましたが、まさかの大混雑。
こんなに客が多いとはびっくりです。皆さん、何に釣られておいでなのでしょうか。
 
1957年のロンドン
戦地に赴いたままの夫の帰りを待ち続けるたエイダ・ハリスは、
高級アパートメント家政婦をしながら日々つつましやかに暮らしていた。
 
ある日、雇い主の部屋で目にした1着のドレスにエイダは目が釘付け。
夫人が言うにはそれはクリスチャン・ディオールのドレスで、お値段500ポンド(約85,000円?)。
あまりの美しさに言葉を失うエイダは、いつかディオールのドレスを自分も買いたいと夢を抱くように。
 
夫が戦死したことをついに知らされて悲しむエイダだったが、
親友のバイとアーチーに支えられ、なんとか過ごす。
そしてサッカーくじを当てた(たいした額ではないが)ことをきっかけに、
これは夫が夢を叶えよと言ってくれているにちがいないと考える。
 
パリまでの旅費などを少しずつ貯めはじめ、やっと目標額に到達。
不安を抱えつつもパリへと乗り込むのだが……。
 
素敵な素敵な物語でした。
ディオールへとたどり着いたエイダに女性ディレクターは冷たいし、
富裕な顧客はエイダを見るや不快感をあらわにして蔑む態度。
しかしキャッシュで500ポンド払おうとする客は帰すべきではないと考える会計担当者。
さらにはお針子やモデルたちは、ロンドンから金を貯めてやってきた家政婦に拍手喝采。
なんとかこの勇気ある家政婦にディオールのドレスを着てもらいたいと思うわけですね。
 
エイダ役のレスリー・マンヴィルは実に可愛いおばちゃん。
反対にディレクター役イザベル・ユペールは陰険きわまりなくて上手い。
会計士アンドレ役のリュカ・ブラヴォー、どこで見たっけと思ったら、
『チケット・トゥ・パラダイス』のあの間抜けなパイロットかよ。
本作ではお人好しで超知的なイケメン役。惚れましたね。
そして彼が秘かに想いを寄せるモデル、ナターシャ役がこれまた超可愛いアルバ・バチスタ。
 
金持ちを相手にするメゾンだからと言って、収益が順調ではない。
逆にどの顧客もキャッシュでは払ってくれないから、
手間暇かけてドレスが完成した後でなければお金はもらえません。
思うように利益が上がらないのに、メゾンとしてのプライドが邪魔をして新しいことができないとは。
 
少しだけ背伸びをすれば誰でも買える香水
こんなことがあって販売されるようになったのかなと思います。
ディオールのイメージアップには私は興味はないけれど、絶大な効果がありそう。
 
すごくよかった。

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『ザリガニの鳴くところ』

2022年11月23日 | 映画(さ行)
『ザリガニの鳴くところ』(原題:Where the Crawdads Sing)
監督:オリヴィア・ニューマン
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ,テイラー・ジョン・スミス,ハリス・ディキンソン,
   マイケル・ハイアット,スターリング・メイサー・Jr.,デヴィッド・ストラザーン他
 
気になりすぎて原作を買おうとしたら、まだ文庫化していないじゃあないか。
ならばまだ先でいいやと、映画版を先に観ることにしました。
実家に寄って母と晩ごはんを食べたあと、イオンシネマ茨木にて。
 
で、その原作はディーリア・オーエンズの世界的ベストセラー小説だそうで。
リース・ウィザースプーンが製作を務めたことも話題になっているらしい。
アンミカがCMで「必見」と言ってます。ほんとに必見かどうか観てみましょう。
 
1969年、アメリカ・ノースカロライナ州の田舎町。
裕福な家庭に育ち、町の人気者だった青年チェイスの変死体が発見される。
事故の可能性も高いなか、人々は“湿地の女”に疑いの目を向け、
彼女の自宅を訪れた刑事は証拠を見つけたとして彼女を即座に逮捕する。
 
“湿地の女”と呼ばれて蔑まれてきたのは、カイアという女性。
彼女は両親と兄姉とともに1950年代から湿地帯で暮らしていたが、
DV亭主に耐えかねて優しかった母が家出、兄姉も次々と出てゆく。
やがて父親も蒸発し、わずか6歳だったカイアはひとりぼっちに。
 
学校へ行けず、読み書きもできない彼女のことを住民は知らんぷり。
雑貨店を営む夫婦だけが彼女を案じて手を貸しつづけた。
 
そんなカイアは20歳になる前に湿地帯によく遊びにきていた青年テイトと出会う。
テイトはカイアに読み書きを教え、カイアは図書館の本を読破。
知性を備えて湿地帯に住む生物の研究にいそしむ。
その仲が恋に発展したふたりだったが、テイトは大学進学のため町を出たまま戻ってこない。
 
傷心のカイアに声をかけたのがチェイス。
変わり者のカイアのことを話のネタにしたいだけであろうチェイスだが、
そうだと気づかないカイアはチェイスとつきあいはじめ……。
 
チェイスが死んだのは事件なのか事故なのか。
最後まで引っ張られつづけるので、興味を持って観ることはできます。
 
以下ばりばりのネタバレを。
 
デヴィッド・ストラザーン演じる弁護士はやはり町の住人でありながら、
カイアに対して偏見を持っていなかった数少ない人物。
カイアの弁護を買って出て、彼の真摯な弁論が効いてカイアは無罪を勝ち取ります。
確かに胸を打つ弁論ではあったけど、偏見に満ち満ちた陪審員たちがこれで無罪にするかと思ったりも。
カイアの無実を信じたというよりは、自分たちが善人だと思われたかったからに感じます。
 
ここまで来ても、真実はどうだったのかはまだわからない。
カイアが無罪になったことで、そうか、チェイスは勝手に落っこちて死んだだけかと思うよりほかない。
 
ところが最後の最後。
裁判後に結婚したカイアとテイトは湿地に住みつづけて幸せな生涯を送り、
カイアが静かに息を引き取ったのちにテイトが知る真実。
 
えーっ、やっぱり殺してたんかい。
なんとも後味の悪いオチです。
 
感動的ではない。
初恋の想い出はほろ苦いか知らんけど、初恋の相手が実はその後に出会った男のことも好きで、
結局そいつのことを殺していたと知ったときのテイトの気持ちを思うと居たたまれません。

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『奈落のマイホーム』

2022年11月22日 | 映画(な行)
『奈落のマイホーム』(英題:Sinkhole)
監督:キム・ジフン
出演:キム・ソンギュン,チャ・スンウォン,イ・グァンス,キム・ヘジュン,
   ナム・ダルム,キム・ホンパ,コ・チャンソク,クォン・ソヒョン,キム・ゴヌ他
 
友だちと3人で梅田のおでん屋さんで飲んだあと、私はTOHOシネマズ梅田でレイトショー。
どうしても気になっていた本作を観に行きました。
 
監督は『第7鉱区』(2011)や『ザ・タワー 超高層ビル大火災』(2012)のキム・ジフン。
前作から10年ぶりの新作がこれ。
 
平凡なサラリーマン・ドンウォンは、11年間に渡る節約生活の末に、
ついにソウルの分譲マンションの一室を購入し、妻子と共に幸せを噛みしめていたが、
部屋が傾いているのではと疑いたくなることが起き、一抹の不安を感じる。
 
そんなある日、同僚たちを新居に招いてホームパーティを開いている途中、大地震が。
シンクホール(=原題。地面が陥没して大きな穴が開く現象)が出現し、
マンション全体が地下の奥深くへと飲み込まれてしまい……。
 
ドンウォン役はキム・ソンギュン。チンピラ風で迷惑な隣人マンス役にはチャ・スンウォン
すごく面白そうで、実際面白くて、眠くなどならないはずだったのに。
 
やっぱりビールに日本酒、ワインまで飲んで映画を観に行くのは無謀です。
知らぬ間に爆睡してしまい、起きたときには皆無事生還するところ。
ハッピーなエンディングは観ることができたものの、肝心なシーンをすべて見逃したという。(T_T)
 
上映劇場も回数も少ないからわざわざこの日観に行ったのに、何をしているのやら。
いずれ塚口サンサン劇場で上映してくれないですかね。
そうしたら、『グリーンバレット』のときみたいに、2回目は完全しらふで観に行きます。
 
それはそうとこの邦題、絶対木下半太を意識して付けたと思うのです。
彼の“悪夢”シリーズの中の『悪夢のエレベーター』(2009)の続編にありますもん、『奈落のエレベーター』。
そのイメージが頭にこびりついていて、うとうとしながらも思い出していました。
ああ、木下半太を読みたくなってきた。
 
本作が本当に面白かったかどうかについては、再鑑賞してから書きます。すんません。

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『ドント・ウォーリー・ダーリン』

2022年11月21日 | 映画(た行)
『ドント・ウォーリー・ダーリン』(原題:Don't Worry Darling)
監督:オリヴィア・ワイルド
出演:フローレンス・ピュー,ハリー・スタイルズ,オリヴィア・ワイルド,
   ジェンマ・チャン,キキ・レイン,ニック・クロール,クリス・パイン他
 
母が元気であることを確認してから109シネマズ大阪エキスポシティへ。
 
監督は女優のオリヴィア・ワイルド
こんなものを見せられたら、美人で、演技も上手くて、監督もできるって、
天は二物を与えるどころか三つも四つもブツをお与えになるのだなぁと思います。
 
アメリカ・カリフォルニア州郊外の街ビクトリー。
夫たちは皆、カリスマ創業者のフランクが経営するビクトリー社に勤務。
毎朝車で出勤する夫たちを見送る妻たちは、完璧な暮らしが保証されたこの街で、
掃除に洗濯、料理に育児、綺麗に化粧して高価な服を身にまとい、
頻繁にパーティーをおこなうなど、理想的な専業主婦生活を送っている。
 
ジャックとアリスもこの街の住人。
何の不自由もない毎日に満足していたはずが、アリスは違和感をおぼえはじめる。
きっかけは、同じ街に暮らすマーガレットの様子がおかしくなったこと。
マーガレットは医師から精神を患っていると診断されるが、アリスにはそうは思えない。
それをジャックや隣人で親友のバニーに話しても取り合ってくれない。
 
ある日、自宅の屋根の上でマーガレットが自ら喉を掻き切って転落するのを目撃。
彼女は明らかに自殺したはずなのに、誰もがただの事故だと言い……。
 
1950年代風のファッションや街並みに『ステップフォード・ワイフ』(2004)を思い出しました。
女は男の庇護のもとで生活するものであり、妻を優位には立たせたくない。
妻を愛しているし、虐待などは絶対にしないけど、主は自分。
そんな考えを持つ男性が理想とするのはこんな暮らしなのでしょうか。
 
監督のオリヴィア・ワイルドはバニー役で出演もしていますが、凄い才能の持ち主だと想います。
キャスティングも素晴らしくて、アリス役のフローレンス・ピューにはイライラさせられながら目が釘付け。
この人にこの役を振るかと驚いたのは、フランク役のクリス・パイン
派手なアクションものがメインの兄ちゃんだと思っていたら、これは新境地ですね。
 
ネタバレになりますが、すべて虚構世界の出来事。
ろくでなしの男共が夢見る世界がつくりあげられていただけのこと。
ここからアリスが脱出できるか。
また、虚構世界にいるとわかっていながら居続けようとするバニーの悲哀も感じられます。
 
すごく面白かったけど、相当嫌な話なので、普通にはお薦めしません。(^^;

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