『ムンバイ・ダイアリーズ』(原題:Dhobi Ghat)
監督:キラン・ラオ
出演:アーミル・カーン,モニカ・ドグラ,クリッティ・マルホトラ,プラティーク・バッバル他
『RRR』を観たらすっかりインドづいてしまい、劇場に行く時間は作れない今、Netflix頼み。
2010年のヒンディー語作品で、日本公開は2011年初春。
その頃はまだあまりボリウッドに興味がなかったように思います。
本作は大スター、アーミル・カーンも製作に名を連ねています。
インド作品を観ると、いつもそこそこの時間に「インターミッション」の表示が出る。
だけど日本公開時は表示が出るだけで休憩時間なし。
3時間程度なら日本人はトイレにも行かずに耐えられるということなのか(笑)。
本作はインド作品としてはめちゃめちゃ短い102分。
本国で休憩時間なしに上映された初めての映画なのですと。
画家アルンは超売れっ子だというのに人づきあいが苦手。
特に妻子と別れてからは殻に籠もって生きてきたが、
ある日の個展でアメリカ在住の女性銀行家シャイと出会う。
シャイは職場から与えられた特別休暇を過ごすために帰国中。
アルンと意気投合してひと晩を過ごすが、
翌朝、アルンは誰ともつきあう気はないと言って目を合わせようともしない。
怒ったシャイは即部屋を出る。その後、アルンは引っ越し。
ところが偶然にもアルンとシャイのもとへ通う洗濯人が同じ。
その男性ムンナはシャイに一目惚れ。
ムンナがアルンの部屋にも通っていると知ったシャイは、
アルンの引っ越し先をムンナから聞き、様子を探るように。
一方のアルンは、引っ越し先で前の住人の忘れ物を見つける。
管理人を通じて返したいと思うが、行き先はわからないと言われる。
忘れ物の中に含まれていたビデオテープを再生してみると、
そこにはヤスミンという女性が映し出され、
彼女が誰かに向けて日々の思いを綴ったらしい動画が入っていて……。
もしも本作を公開後すぐに観ていたら、私はボリウッド好きにはならなかったかも。
つまらないというわけではなく、むしろおもしろいですが、
爽快さ痛快さ、豪胆さはなく、切なくなってしまう群像劇です。
シャイは世界を股にかけて活躍する女性で、もちろん英語も堪能。
以前なら不思議に思ったものでした。
今ならそういうものだとわかります。
ムンナは職を求めてムンバイに出てきた最下層の青年で、
イケメンではあるけれど、知的ではない。
俳優になる夢を持ったまま実現するあてもなく洗濯人を続け、
シャイと良い関係になれるかもしれないと期待しています。
そのシャイにも、夜はネズミを殺す仕事をしているとは言えません。
ヤスミンはアルンが視聴するビデオテープの中だけに出てくる女性。
この部屋に入居した当時は幸せいっぱいだった様子なのに、
夫が戻ってこなくなった部屋で寂しい思いをしながら暮らしているのがわかります。
この辺りは体よりも心を虐げられているふうに感じます。
ヤスミンがどうなったかをアルンが知るシーンは絶望的。
ムンナがシャイとの恋が叶わぬと知って取る行動はとてつもなく切ない。
よかったけど、辛く悲しい作品です。
やっぱりこうじゃないほうがインド映画はいいなぁ。