夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

『春画先生』

2023年10月21日 | 映画(さ行)
『春画先生』
監督:塩田明彦
出演:内野聖陽,北香那,柄本佑,白川和子,安達祐実他
 
イオンシネマ茨木にて、公開初日のレイトショー鑑賞。
 
春画ですからね、R15+指定もまぁそうかと思いますが、
それよりもヒロイン役の北香那が堂々の脱ぎっぷりを見せ、
柄本佑との絡みのシーンもバッチリこなしています。
この子、どこで見たんだっけと思っていたら、
そうか、“バイプレイヤーズ”でアシスタントプロデューサー役だった子か。
 
塩田明彦監督にしても出演者の顔ぶれにしてもそこそこ客を呼べそうだけど、
109シネマズでもTOHOシネマズでも上映館なし。
新興宗教団体製作の作品を何回も上映するぐらいなら、こっちを上映してほしい。
 
レトロ喫茶に勤める春野弓子(北香那)は、ある地震の日、
激しく揺れる店内で微動だにしない男性客とその手元の春画の本に目を奪われる。
その男性は変人で通る“春画先生”こと芳賀一郎(内野聖陽)。
揺れが収まると、芳賀は弓子に名刺を差し出し、
春画を学びたいならば明日にでも家に来るようにと言って立ち去る。
 
まさか本当に家に行くなどということはするまい。
そう思っていた弓子だが、初めて目にした春画が頭から離れず、芳賀の家へ。
長年仕えるお手伝いの本郷絹代(白川和子)があからさまに嫌そうな顔をしているのに、
芳賀は一向に気にすることなく、弓子を芳賀家へ通わせる。
 
芳賀の指導で春画を学ぶうち、その奥深さに魅了されると共に、
芳賀自身にどうしようもなく惹かれてゆく弓子。
しかし芳賀を担当する編集者の辻村俊介(柄本佑)によれば、
芳賀は妻に先立たれてから肉欲を断ち、彼のもとを訪ねる女性を辻村が抱いているのだと言う。
その場合、辻村は必ず芳賀の了承を得ていたそうだが、
弓子に関してだけはいつもと芳賀の反応が異なり、了承はしたものの弓子だけは特別らしい。
 
弓子こそが執筆の原動力になっていると感じた辻村は、
自分と弓子の情事の声を芳賀に聞かせるという行動に出る。
最初は憤っていた弓子だが、こんな形でしか芳賀を支えられないと開き直る弓子
 
ところが、芳賀の亡き妻の双子の姉、藤村一葉(安達祐実)が現れる。
めらめらと燃え上がる嫉妬の炎を消せない弓子だったが……。
 
弓子がとても幼い気がして、こんなに欲情を掻き立てられるものだろうかと思わなくもないですが、
エロがとてもユーモラスに描かれていて、しばしば笑いました。
春画の見方も映画を通して教えてもらっているかのようで、
そうか、局部だけに目を奪われがちだけど、全体を見なければいけないのですね。
内野聖陽演じる芳賀の解説にいちいちうなずいてしまいます。
 
最後のくだりはこれでいいのかどうか、私には疑問。
芳賀に縋りついていた弓子が、彼をどう愛するべきか気づくというところ。
えーっ、結局、芳賀ってマゾなのかよとツッコミ入れたくなりました。
 
柄本佑をこういう役で見かけることが多くなりました。
相変わらず格好良いとは思えないのに、適当そうなのに善い奴、そんな役柄が似合っています。
でもあの目の覚めるようなマリンブルーのブーメランパンツ姿はご勘弁。(^^;

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『アンダーカレント』

2023年10月20日 | 映画(あ行)
『アンダーカレント』
監督:今泉力哉
出演:真木よう子,井浦新,江口のりこ,中村久美,康すおん,内田理央,永山瑛太,リリー・フランキー他
 
なんばパークスシネマにて、3本ハシゴの〆がこれ。
 
原作は2004年から2005年に渡って『月刊アフタヌーン』に掲載された豊田徹也の漫画。
いつの頃からか、好きだなと思うと今泉力哉監督作品だったということが多く、
これも今泉監督が映画化してくれて嬉しいです。
 
銭湯“月の湯”を亡父から継いだ関口かなえ(真木よう子)。
夫の悟(永山瑛太)と共に月の湯をずっと守っていくつもりでいたのに、悟が突然失踪。
しばらく休業の末、おばの木島敏江(中村久美)の手を借りて再開する。
 
ある日、銭湯組合から紹介されたという堀隆之(井浦新)が職を求めてやってくる。
銭湯に勤めるにはもったいないぐらいの資格を複数持つ堀にかなえは驚くが、
堀はぜひともここで働きたいらしく、家が見つかるまでのあいだ住み込むことに。
 
自分のことはいっさい話そうとしない堀ではあるが、仕事ぶりは真面目で、
ご近所さんにもすぐに溶け込む様子を見て、かなえは次第に穏やかな気持ちを取り戻すように。
 
旧友の菅野よう子(江口のりこ)と久しぶりに会ったかなえは、
最初は悟の失踪を隠していたものの、話の流れで打ち明けてしまう。
すると菅野は夫の知り合いの探偵を紹介してくれると言う。
 
待ち合わせ場所にいた探偵の山崎道夫(リリー・フランキー)はどう見ても胡散臭い。
しかし、調査が進むにつれて、悟の何もかもが嘘だったことがわかり……。
 
うーむ、途中まではやっぱり今泉監督が好きだと思いながら観ていたのですけれど。
143分は長すぎます。最後の30分になってからのかなえと悟の会話にイライラ。
 
この町では20年前に悲しい事件がありました。
小学生だった少女が何者かに連れ去られ、後日、池で絞殺体となって発見される。
そしてその犯人は今も捕まっていません。
 
本作を観るかぎり、犯人は悟でしょうと思うのですが、違うのでしょうか。
少女が連れ去れるのを見ていたかなえは犯人から「絶対誰にも言うな。ずっと見ているからな」と脅された。
悟が見張るためにかなえに近づいて結婚した、そういうことなのでは。
 
そして殺された少女の兄が堀。これは作中でも明らかにされています。
仲良しだった妹が殺されて一家はバラバラに。
妹の姿を求めて町に来た堀は、これからどうするのか。
 
全体の雰囲気は好きですが、かなえと悟の煮え切らない会話にゲンナリ。
そこをもっとシンプルにして、2時間以内にまとめてもよかったのでは。
最後は、リリー・フランキー、通報しろ!ここに警察が来て悟つかまれ!と思っていました(笑)。
私としてはちょっと残念。

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『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』

2023年10月19日 | 映画(ら行)
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(原題:Rock, Stock and Two Smoking Barrels)
監督:ガイ・リッチー
出演:ニック・モラン,ジェイソン・ステイサム,ジェイソン・フレミング,デクスター・フレッチャー,スティング,
   スティーヴン・マッキントッシュ,ヴィニー・ジョーンズ,レニー・マクリーン,P・H・モリアーティ他
 
ガイ・リッチー監督の新作公開直前、1998年の本作がリバイバル上映されていました。
めっちゃ面白かったことは覚えているけれど、劇場では観たことがない。
これはぜ~ったい観に行かなきゃ後悔すると思ってなんばパークスシネマへ走りました。
 
現在リッチー監督は55歳だから、本作の公開当時は30歳。
イギリスの俊英としてもてはやされ、この1本で一流監督の名を得ました。
なんてったって、新人監督でありながら英国の映画興行収入1位を稼いだのですから。
ショーン・ペンと離婚したマドンナと結婚して、またまた話題に。
マドンナと別れた後は一回り以上下のモデル、ジャッキ・エインズリーと再婚。
人のよさそうなオッサンの顔をしていますが、結婚相手はみんな派手だわ(笑)。
 
さて、本作について。
始まってしばらくのうちは、登場人物が多すぎてワケがわからない。
こんなややこしい話だったっけと思っていたら、すぐに面白さが炸裂。ニヤニヤが止まりません。
 
ロンドンの下町。
エディ、ベーコン、トム、ソープは盗品を売るなどして小銭を稼ぐ4人組。
一攫千金を狙って“ハチェット(=手斧)”の異名を持つハリーが仕切る賭場に出たい。
金のない奴は出られないから、4人で金を出し合ってなんとか10万ポンド集める。
 
ギャンブルの才覚があるエディが皆の金を預かって賭場へと乗り込むものの、
ハリーは部下を使ってひそかにイカサマをおこない、
エディに50万ポンドもの借金を負わせて1週間以内の返済を求める。
 
そんな大金を用意できるわけがない。4人はない知恵を出し合うが無理に決まっている。
指を詰めて済めばいいほうで、命もどうなることやら。
絶望的な気分になっているとき、エディの部屋の隣室でよからぬ相談をしているのが壁越しに聞こえてくる。
 
どうやら金持ちのぼんぼんが小遣い稼ぎに大麻を育てて売っているらしく、
それが上物であることから、客は富裕層の人間ばかり。
鍵はいつも開けっぱなし、大麻も金もたんまり部屋に放置されている。
あれを全部いただいてしまおうというのが隣室の相談。
 
隣室の悪党が持ち帰った大麻と金をこちらが奪い取ってやろうじゃないか。
4人は計画を練って実行、いとも簡単に成功したかに見えたが……。
 
めちゃくちゃ面白いです。
まさに金は天下の回りものというやつで、ついでに大麻も天下の回りもの。
そうそう簡単には転がっていないし、もとをたどればぐるぐる回っていただけ。
 
リッチー監督のお気に入り、ジェイソン・ステイサムは私のお気に入りでもありますが、
この頃の彼よりも今の彼のほうが好きだなぁ。何が違うのかしら。
見た目はそれほど変わっていないように思うけど、なんか今のほうが断然カッコイイ。
 
カッコイイんだけどみんなどこかマヌケで、そのマヌケっぷりに笑ってしまう。
4人組のあとの3人にはニック・モラン、ジェイソン・フレミングデクスター・フレッチャー
エディの父親を演じるスティングがまた超シブくて。
借金の取り立て屋はいかつすぎるヴィニー・ジョーンズ
彼の最後の台詞を借りたい。「面白かったぜ」。
 
サイコー。また劇場で上映されたら必ず観に行きたいです。

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『オクス駅お化け』

2023年10月18日 | 映画(あ行)
『オクス駅お化け』(英題:The Ghost Station)
監督:チョン・ヨンギ
出演:キム・ボラ,キム・ジェヒョン,シン・ソユル,オ・ジンソク,キム・スジン他
 
まったく、どうしてこんなにホラー映画を観に行ってしまうのか。
最近公開されたホラー映画だと、邦画の2本はスルーしましたが、
これは怖いだろうと思いながら好奇心を抑えきれず。
有休を取っていた日、なんばパークスシネマにて昼間の回を鑑賞しました。
 
原作は韓国の短編ホラーウェブ漫画。脚本を担当したのは『リング』(1998)の高橋洋。
また、脚本協力(って具体的に何をするのか知らないけれど)が白石晃士
日韓合作のホラー作品で、韓国ではスマッシュヒットを飛ばしたそうです。
 
ゴシップ記事をメインとするウェブニュース配信会社に勤める新人記者ナヨン(♀)。
鉄道の保安係の職に就く親友ウウォンとスンジュン(共に♂)に面白ネタの提供を求めている。
 
2人から聞いたセクシーな女性に撮影許可を得て写真を配信したところ、
実はその人は女性ではなく男性。
酔っぱらっていたらしく、撮影許可など出していないから示談金を払えと言われる。
女社長のモは激怒し、稼げるネタを書けないのなら示談金はナヨン自身が払えと言う。
そんなものを自分で払えるわけがない。
なんとか世間の話題をさらうネタが落ちていないものかとウウォンらにすがりつくナヨン。
 
すると、ウウォンが渋々始めた話は、廃駅となっている地下鉄オクス駅のこと。
最近そこに入り込んだ人が列車にはねられる事故が起きた。
その折、亡くなった人とは別に、線路脇に子どもがいるのを見たと言うのだ。
 
オクス駅ではこの事故のみならず、自殺者や変死を遂げる者が続出している。
自殺した男性の妹だというテヒに取材したナヨンが記事を書くと、凄い閲覧数に。
亡くなった人の手の甲残っていた爪痕を掲載したところ、
その傷を面白がって真似る若者が頻出。そして彼らもまた変死して……。
 
以下、ネタバレです。
 
オクス駅のあったところにはもともと児童養護施設と井戸があり、
地下鉄を開通させるにあたり、施設は閉鎖されました。
子どもたちは臓器売買のための手術を受けていたことから、それを隠そうと井戸に投げ込まれて生き埋めに。
井戸から出してもらうのを待っていた子どもたちの怨念が募っていたのですよね。
 
怖かったけど、いつものごとく、怖そうなシーンの前には目を瞑っていたので大丈夫(笑)。
ストーリーも面白いとは思いましたが、如何せんバッドエンド。呪いは人に移すことできるのです。
ナヨンがドヤ顔で助かったのはよかったし、移されたのは人でなしだからいいけれど、嫌な感じ。
これで切なさがあればよかったのですけれど。
 
たぶん、ホラーはもう苦手じゃない。好きと言ってもいいかも。

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『白鍵と黒鍵の間に』

2023年10月17日 | 映画(は行)
『白鍵と黒鍵の間に』
監督:冨永昌敬
出演:池松壮亮,仲里依紗,森田剛,クリスタル・ケイ,松丸契,川瀬陽太,
   杉山ひこひこ,中山来未,佐野史郎,洞口依子,松尾貴史,高橋和也他
 
シネ・リーブル梅田ではずいぶん前から予告編がかかっていて、クリスタル・ケイの歌を覚えるほど聴きました。
ここでは東京テアトルグループが開発したという“odessa(オデッサ)上映”を売りにしています。
オデッサは「劇場ごとに最適化されたサウンドシステムに、劇場独自の映画体験が付加される」ということですが、
なんのこっちゃわかりませんね。とにかく、音にこだわったという意味なのでしょう。
 
ちなみに「オデッサ」という名前は、『戦艦ポチョムキン』(1925)に登場するウクライナの港湾都市オデッサから。
オデッサにある巨大な階段は「ポチョムキンの階段」と呼ばれています。
この階段シーンが映画史に大きな影響を及ぼしたことにちなんで、東京テアトルはオデッサと命名したらしい。
 
と、書いてはみたけれど、私が鑑賞したのは109シネマズ大阪エキスポシティです。
上映開始2分前になっても私以外に来場者は無し。今年6度目の“おひとりさま”
あれだけ宣伝していたシネ・リーブル梅田ではもっと客が入っているのでしょうか。
なんだって他に客がいないのに、私はエグゼクティブシートの端っこに座っているのか(笑)。
移動してもいいかなと思いましたが、動くのも面倒になってそのまま端席で。
 
原作は現役のジャズミュージシャン、南博の回想録『白鍵と黒鍵の間に ジャズピアニスト・エレジー 銀座編』。
普通にジャズの話だと思っていたら摩訶不思議な世界。原作未読なのでなんとも言えず。
こうなったのは冨永監督だからですか。それとも原作からしてこんな感じ?
 
舞台は昭和も終わりかけの夜の銀座
クラシックピアノを学んでいた博(池松壮亮)は、本当はジャズピアノをやりたい。
師事していた宅見(佐野史郎)から「硬い。キャバレーへ行け」と言われ、本当に場末のキャバレーへ。
 
仮面をつけてピアノを弾いていた博に、ふらりと現れた謎の男(森田剛)がある曲をリクエスト。
ところがその曲『ゴッドファーザー 愛のテーマ』は銀座では弾いてはならない曲として有名。
というのも、それをリクエストできるのはただひとり、界隈を牛耳る会長・熊野(松尾貴史)のみ。
しかも演奏を許されているのも会長のお気に入りのピアニスト・南(池松壮亮の一人二役)だけで……。
 
もう最初から摩訶不思議なんです。
こういうタイプの作品だと最初からわかっていれば戸惑わなかったのですが、
若かりし頃の博と人気ピアニストになってからの南どちらも池松くんが演じているとは。
いや、ま、南と博はもともと同一人物ですから、ひとりで演じるのが妥当なわけだけど。
 
博の横を南が通り過ぎて、会長がやってくるクラブへと向かう。
過去と現在を同時に見せられているというのか、どっちも現在でそこに昔の僕と今の僕が居合わせているというのか。
南と博を別人に見立てる構成は面白いけれど、とてもついて行きづらい。
特に終盤はぐだぐだで、もっと音楽を聴きたかった身としては、なんじゃこりゃになってしまいました。
川瀬陽太とか高橋和也とか、芸達者な人たちが揃っているから余計にぐだぐだ感がツライ。
 
余談ですが、予告編を観たときには南のマネージャー役なのかと思っていた仲里依紗は、
博の先輩でもあり、南と同じ銀座のピアノ弾きでもあるのですね。
そして南の母親役で登場する洞口依子の太りようには目が点になってしまいました。
その昔はモデルでトレンディドラマにも出演していたはずなのに。時の流れは残酷。(--;

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