マネジャーの休日余暇(ブログ版)

奈良の伝統行事や民俗、風習を採訪し紹介してます。
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上・庚申さんのさなぶり参り

2018年07月16日 08時44分45秒 | 明日香村へ
ナワシロジマイと呼んでいる家さなぶりの在り方は、今年も無事に田植えが終わりましたので当家の豊作を願う家の祭りごとである。

住居を建て替えたことによってこれまであった竃から炊事場のコンロに移ったものの、今でもこうして祭りごとをしてきたのはFさんのお母さんだ。

昭和5年生まれの母親はこの年の2カ月前に圧迫骨折を患って難義していたという。

なんとか歩けるようになったものの、以前よりは身の安全を考えて行動するようになったという。

その母親が、いつもなら一夜明けた翌日に供える庚申さん参りをしてくださる。

私の記録・取材する点を考慮されて実施してくださる。

前年に取材させてもらった先祖送りや小正月の小豆粥御供参拝も気遣ってくれた。

ありがたいことであるが、外歩きに無理して出かければ、何らかのリスクを伴うのが怖い。

慌てないように、介助するつもりで同行させていただく庚申さん参りである。

昔は4軒の講中でしていた。

それぞれが家の田植えを終えたらF家と同じように竃に供えた苗さんを庚申さんにも供えていたという。

添えものなどを持って庚申さんに向かう。

急な坂道であるが、杖を搗いて歩く婦人の歩きに合わせて登る。

距離はそんなに遠くない。

F家より上にある家は3軒。

うち2軒が庚申さんの前に建つ。

広い場の崖上にあるのが庚申さんであるが、階段の高さに婦人は登ることもできない。

頼まれて私が供えることになった。



三把の苗さんを供えた庚申さんにある花立ては四カ所。

それぞれにお家に咲いていた花を立てる。

お花はカーネーションであろうか。

いろんな色が混ざっているカーネーションが綺麗。



線香立ては三つ。

それぞれにマッチで点けた火を移す。

燭台は二つ。

それぞれにローロクを立てて火を点ける。

準備が調ったところで庚申下に居る婦人に声をかける。



それを合図にそっと手を合してお念仏。

静かに唱える念仏は般若心経であるが、声は聞こえない。

心で念じる心経である。

できる限りお参りをしてきたが、お参りできない場合もある。

そのときは若い人が庚申さんに奉ってくれるので、私は下でこうして参っているという。

(H29. 6.11 EOS40D撮影)