田植え作業にサビラキ取材をしていたとき、Tさんの奥さんが話してくれた件である。
実は、といってお話してくださった藁造りの一品。
「茶碗みたいな形の藁造りが一つ残っているねん」という言葉に思わず・・・これは、と思った。
想像した形は藁で作ったもの。
ある部分からぐにゃっと曲げた形。
その部分が茶碗のようになっているなら、アレしかない。
右手を差し出して、こんな感じ。
手で受けるような形のアレでは・・・。
T家は、玄関と裏にある蔵の扉辺りにもアレをぶら下げる。
元日の朝、その手の部分に家族が食べる雑煮の具を少しずつ入れる、というから間違いない。
奥さんはその形からカミサン(※ここでは民俗語彙的にカミサンと表記するが、私的民俗分類では“外の神さん”に位置付ける)のチャワン(※茶碗)と呼んでいる。
カミサンのチャワンに家族が食べる雑煮の具を少しずつ入れる。
お餅、トーフ、ニンジン、ダイコンなどを小さく切った雑煮の端くれを、そのチャワンにおます、というアレを拝見させてもらった。
大急ぎで撮ったものだから、アレはブレブレの映像になってしまった。
田植え作業を終えたTさんに、アレの名前を尋ねたら「ハチ」だ、という。
「ハチは鉢。金魚鉢とか植木鉢の鉢や」と、いっていたことに驚きものの木である。
本来は、元日の朝に炊いた雑煮の余りもの。
細かく切った餅とかダイコン、サトイモ、豆腐も入れる。
場合によれば、ニンジンなどもハチに入れておます。
なお、Tさんの先代になる親父さんもハチと呼んでいたそうだ。
なるほど、どちらも云いえて妙な表現である。
「ハチ」の名前で思い出した資料がある。
平成6年11月に初芝文庫より発刊された『藁綱論―近江におけるジャノセレモニー―』である。
著者は橋本鉄男氏。
「藁」で作る「ジャ」の民間信仰をとらえている書物に「ヤスノゴキ」関連民俗資料一覧がある。
聞きなれない「ヤスノゴキ」とは何ぞえ、である。
書物は、民俗行事取材を丹念に調べ、さまざまな土地に出かけて調査している写真家Kさんが入手したもの。
拝読した『藁綱論―近江におけるジャノセレモニー―』の民俗調査は全国に亘る。
地域特性も一覧でわかる素晴らしい資料である。
さて、「ヤスノゴキ」の一覧表である。
気になるのは奈良県データである。
3地域に同様の形が見られたという調査報告があった。
うち、天理市福住町の井之井にあった苞状形。
ここT家からそれほど遠くない峠を越えた“山田の山間地”の一角にある井之井(※正しくは井之市)。
呼び名は不詳だが、形状は苞状である。
奥さんが云っていたカミサンのチャワンがキーワード。
一覧表を再度調べてみたら、チャワンの呼び名でなく、“カミノハチ”がちらほら登場する地域があった。
群馬県吾妻郡嬉恋町である。
但し書きに「カミノハチといい、木器を用いることがある」と・・。
形状から思い出す類似例が2例ある。
一つは井之市に近い天理市福住町の別所にあった。
二つ目の事例はT家と同じ集落の長谷町である。
三つ目はやや形状が異なるが宇陀市室生の小原にあった。
T家の“カミサンのチャワン”こと、”ハチ”を拝見し、比較検討のためにも、その行為をされる正月2日にお伺いしたく取材許可をお願いした。
ちなみにかつてはサシサバをしていた、というTさん。
親でなく若いもんがサシサバをして、子どもは供えたサシサバを食べていたそうだ。
時季は夏場。
旬のサシサバはそのころに行商がやってきて村に売りに来た。
なぜか村には魚屋が5~6軒もあったにも関わらずサシサバ売りをする行商が来ていた。
サシサバは、お盆における習俗。
生きている親を神さんととらえてカラカラに乾いたサシサバを供えた。
作法は正月のイタダキと同じ。
下げたサシサバは家族みなで食べる家族もあれば、T家のように子どもたちだけが食べることもある。作法は家族によって区々である。
(H30. 4.26 EOS7D撮影)
実は、といってお話してくださった藁造りの一品。
「茶碗みたいな形の藁造りが一つ残っているねん」という言葉に思わず・・・これは、と思った。
想像した形は藁で作ったもの。
ある部分からぐにゃっと曲げた形。
その部分が茶碗のようになっているなら、アレしかない。
右手を差し出して、こんな感じ。
手で受けるような形のアレでは・・・。
T家は、玄関と裏にある蔵の扉辺りにもアレをぶら下げる。
元日の朝、その手の部分に家族が食べる雑煮の具を少しずつ入れる、というから間違いない。
奥さんはその形からカミサン(※ここでは民俗語彙的にカミサンと表記するが、私的民俗分類では“外の神さん”に位置付ける)のチャワン(※茶碗)と呼んでいる。
カミサンのチャワンに家族が食べる雑煮の具を少しずつ入れる。
お餅、トーフ、ニンジン、ダイコンなどを小さく切った雑煮の端くれを、そのチャワンにおます、というアレを拝見させてもらった。
大急ぎで撮ったものだから、アレはブレブレの映像になってしまった。
田植え作業を終えたTさんに、アレの名前を尋ねたら「ハチ」だ、という。
「ハチは鉢。金魚鉢とか植木鉢の鉢や」と、いっていたことに驚きものの木である。
本来は、元日の朝に炊いた雑煮の余りもの。
細かく切った餅とかダイコン、サトイモ、豆腐も入れる。
場合によれば、ニンジンなどもハチに入れておます。
なお、Tさんの先代になる親父さんもハチと呼んでいたそうだ。
なるほど、どちらも云いえて妙な表現である。
「ハチ」の名前で思い出した資料がある。
平成6年11月に初芝文庫より発刊された『藁綱論―近江におけるジャノセレモニー―』である。
著者は橋本鉄男氏。
「藁」で作る「ジャ」の民間信仰をとらえている書物に「ヤスノゴキ」関連民俗資料一覧がある。
聞きなれない「ヤスノゴキ」とは何ぞえ、である。
書物は、民俗行事取材を丹念に調べ、さまざまな土地に出かけて調査している写真家Kさんが入手したもの。
拝読した『藁綱論―近江におけるジャノセレモニー―』の民俗調査は全国に亘る。
地域特性も一覧でわかる素晴らしい資料である。
さて、「ヤスノゴキ」の一覧表である。
気になるのは奈良県データである。
3地域に同様の形が見られたという調査報告があった。
うち、天理市福住町の井之井にあった苞状形。
ここT家からそれほど遠くない峠を越えた“山田の山間地”の一角にある井之井(※正しくは井之市)。
呼び名は不詳だが、形状は苞状である。
奥さんが云っていたカミサンのチャワンがキーワード。
一覧表を再度調べてみたら、チャワンの呼び名でなく、“カミノハチ”がちらほら登場する地域があった。
群馬県吾妻郡嬉恋町である。
但し書きに「カミノハチといい、木器を用いることがある」と・・。
形状から思い出す類似例が2例ある。
一つは井之市に近い天理市福住町の別所にあった。
二つ目の事例はT家と同じ集落の長谷町である。
三つ目はやや形状が異なるが宇陀市室生の小原にあった。
T家の“カミサンのチャワン”こと、”ハチ”を拝見し、比較検討のためにも、その行為をされる正月2日にお伺いしたく取材許可をお願いした。
ちなみにかつてはサシサバをしていた、というTさん。
親でなく若いもんがサシサバをして、子どもは供えたサシサバを食べていたそうだ。
時季は夏場。
旬のサシサバはそのころに行商がやってきて村に売りに来た。
なぜか村には魚屋が5~6軒もあったにも関わらずサシサバ売りをする行商が来ていた。
サシサバは、お盆における習俗。
生きている親を神さんととらえてカラカラに乾いたサシサバを供えた。
作法は正月のイタダキと同じ。
下げたサシサバは家族みなで食べる家族もあれば、T家のように子どもたちだけが食べることもある。作法は家族によって区々である。
(H30. 4.26 EOS7D撮影)