何度も訪れたことがある天理市長滝町。
山間の地にある村落。
数々の年中行事を撮影、記録してきた。
秋祭りの宵宮、座分け、正月ドーヤ、カンジョウナワ、オコナイ、コンコンサン、閏庚申に涅槃さんも取材してきた長滝の地。
前方に杖をついて歩くお方は、顔見知り。
行事取材に幾度も世話になった。
その当時は、急な山道も軽々登っていたコンコンサン。
後ろから声をかけたいが、これから目指す目的地は、火の見やぐらがある消防団倉庫から急な坂道を登ったどんつき。
柿の木に吊るしたカラスのモチがみつかった。
昨年末、大晦日の夕暮れにかかった電話の声は、写真家のKさん。
砂モチ調査に伺った天理市の長滝。
取材の目的は砂モチ。
現在はしていない、とわかった。
目的を失ったKさんが、その地にたまたま出会わせた高齢の女性。
話の展開は、どこからどうなったのか不明であるが、その女性が云った言葉。
「カラスのモチなら、今からしてやる」、と云われた。
その女性がいうには「翌年には90歳になる」と、いう高齢者。
おばあさんの心に惹かれて、案内してもらったそこは柿の木があるお家。
山の上にあるお家にたどり着いた。
その場で作ってくれたカラスのモチ。
大晦日のその日は、お家で正月の餅を搗いていたようだ。
その餅のうち、いくつかを藁に詰めこんで、柿の木に吊るした。
野鳥に食べてもらうために吊るした藁詰めの餅はカラスのモチ。
藁ズト(※藁束)のようなものを2本用意する。
二つとも、藁束の中に6個ずつのカラスのモチを詰めて柿の木に吊るす。
まさに、Kさんが伝えた通りの場。
柿の木の枝に吊るしていた。
遠景、近景などから見た初見のカラスのモチ。
想像していた通りの形だった。
シャッターを何枚か、押していた音に気がつかれたのか、89歳のおばあさんが、屋内から出てこられた。
私の顔を見るなり、「あんた、昨日の大晦日も、元日にも来てくれて・・・」と、いわれる。
いやいや、そうではなく、大晦日も昨日も、それはKさん。
Kさんから教えていただき、私は今日が初めてです、とYさんに伝えたが・・・
あんた「林檎3個に大きな写真を持ってきてくれたやろ」、と云われるが、それはKさん。
見た目は違うのだが、土地の人ではないから、みな同じように見えるようだ。
入口前での会話。にぎやかし、していたら屋内から出てこられたから若奥さんが、「寒いから家に入って」、と云ってくれた。
玄関土間に据えている客間にテーブル・椅子のセットがある。
お客さんとの会話はこの場で済ませる。
紹介された、Y家の当主。昭和24年生まれのY区長。
70歳までは奈良市法蓮町にある花屋さんに勤めていいた。
義理の父、母が高齢になり、花屋を定年退職後に家族ともども、妻の実家に転居。
親子どもども長滝に転居し、分家のY家を継いだ。
村のことは、なにも知らなかったが、村に認められて区長に就任(※福住連合区長会の会長も勤める)した。
24軒の長滝を預かった区長役。
地区に暮らす先輩たちの支援を受けて役目を務められるだろう。
さて、カラスのモチである。
おばあさんがいうには、百姓はみなしていた、というカラスのモチである。
柿の木に吊るしているからカラスは来ない。
正月開けたら、少し歩いた山行きに梅の木があり、そこに吊るし替える。
そうしたらカラスがやってきて餅を喰ってしまう、と話してくれる。
カラスのモチは、12月30日に搗く正月の餅の一部。
正月の餅から、12個の餅をいただき、藁ヅトに収める。
柿の木に吊るすのは、例年が31日にしているようだ。
また、旧暦閏年の年のカラスのモチは、13個。
ここも見られた旧暦閏年の13の数。
県内の民俗事例に、多彩、多様な民俗。
あちこちの地域行事に13の数を示す祭具。
多すぎると思えるほど数々の事例が各地に継承されてきた。
今日は、元日。ご厚意により、正月の膳から分けてくださった練り物をよばれた。
南天を皿に敷いたそこに盛った食べ物は、蒲鉾に、さつま揚げ。
毎年同じだけど・・という練り物が美味しい。
特別のお店で買ってきたと、いう練り物は、ほんまに旨い。
席を立とう、としたときに気づいた祭具が目に付いた。
「無病息災 五穀豊穣」を記した矢羽根。
その祭具は、たしか見たことがある。
二ノ正月の2月5日は、長滝の年頭行事である正月ドーヤがある。
平成22年2月5日に取材した正月ドーヤは、九頭神社のケイチン、地蔵寺のオコナイにカンジョウナワカケからなる一連の行事。
元々は4日、5日の両日に亘って行われる行事であったが、1日にすべてを終えるよう短縮化された村の初祈祷行事である。
Y家の玄関口に見た矢羽根の本体は矢。
マトウチに描かれた鬼を射る弓から放たれた矢である。
マトウチ射手は、座の一老。
続いて矢を打つ二人の本当家と、受け当家の2人に行司。
打った最後。弓の角で、鬼をバラバラにしてしまう。
鬼のとどめをさす行為。
鬼は無残な形。
鬼を退治した、マトウチの儀式によって、村の安全が確保され、五穀豊穣を願った矢は、拾い集めて持ち帰り、無病息災を願う家の守り神となる。
(R3. 1. 2 EOS7D/SB805SH撮影)
山間の地にある村落。
数々の年中行事を撮影、記録してきた。
秋祭りの宵宮、座分け、正月ドーヤ、カンジョウナワ、オコナイ、コンコンサン、閏庚申に涅槃さんも取材してきた長滝の地。
前方に杖をついて歩くお方は、顔見知り。
行事取材に幾度も世話になった。
その当時は、急な山道も軽々登っていたコンコンサン。
後ろから声をかけたいが、これから目指す目的地は、火の見やぐらがある消防団倉庫から急な坂道を登ったどんつき。
柿の木に吊るしたカラスのモチがみつかった。
昨年末、大晦日の夕暮れにかかった電話の声は、写真家のKさん。
砂モチ調査に伺った天理市の長滝。
取材の目的は砂モチ。
現在はしていない、とわかった。
目的を失ったKさんが、その地にたまたま出会わせた高齢の女性。
話の展開は、どこからどうなったのか不明であるが、その女性が云った言葉。
「カラスのモチなら、今からしてやる」、と云われた。
その女性がいうには「翌年には90歳になる」と、いう高齢者。
おばあさんの心に惹かれて、案内してもらったそこは柿の木があるお家。
山の上にあるお家にたどり着いた。
その場で作ってくれたカラスのモチ。
大晦日のその日は、お家で正月の餅を搗いていたようだ。
その餅のうち、いくつかを藁に詰めこんで、柿の木に吊るした。
野鳥に食べてもらうために吊るした藁詰めの餅はカラスのモチ。
藁ズト(※藁束)のようなものを2本用意する。
二つとも、藁束の中に6個ずつのカラスのモチを詰めて柿の木に吊るす。
まさに、Kさんが伝えた通りの場。
柿の木の枝に吊るしていた。
遠景、近景などから見た初見のカラスのモチ。
想像していた通りの形だった。
シャッターを何枚か、押していた音に気がつかれたのか、89歳のおばあさんが、屋内から出てこられた。
私の顔を見るなり、「あんた、昨日の大晦日も、元日にも来てくれて・・・」と、いわれる。
いやいや、そうではなく、大晦日も昨日も、それはKさん。
Kさんから教えていただき、私は今日が初めてです、とYさんに伝えたが・・・
あんた「林檎3個に大きな写真を持ってきてくれたやろ」、と云われるが、それはKさん。
見た目は違うのだが、土地の人ではないから、みな同じように見えるようだ。
入口前での会話。にぎやかし、していたら屋内から出てこられたから若奥さんが、「寒いから家に入って」、と云ってくれた。
玄関土間に据えている客間にテーブル・椅子のセットがある。
お客さんとの会話はこの場で済ませる。
紹介された、Y家の当主。昭和24年生まれのY区長。
70歳までは奈良市法蓮町にある花屋さんに勤めていいた。
義理の父、母が高齢になり、花屋を定年退職後に家族ともども、妻の実家に転居。
親子どもども長滝に転居し、分家のY家を継いだ。
村のことは、なにも知らなかったが、村に認められて区長に就任(※福住連合区長会の会長も勤める)した。
24軒の長滝を預かった区長役。
地区に暮らす先輩たちの支援を受けて役目を務められるだろう。
さて、カラスのモチである。
おばあさんがいうには、百姓はみなしていた、というカラスのモチである。
柿の木に吊るしているからカラスは来ない。
正月開けたら、少し歩いた山行きに梅の木があり、そこに吊るし替える。
そうしたらカラスがやってきて餅を喰ってしまう、と話してくれる。
カラスのモチは、12月30日に搗く正月の餅の一部。
正月の餅から、12個の餅をいただき、藁ヅトに収める。
柿の木に吊るすのは、例年が31日にしているようだ。
また、旧暦閏年の年のカラスのモチは、13個。
ここも見られた旧暦閏年の13の数。
県内の民俗事例に、多彩、多様な民俗。
あちこちの地域行事に13の数を示す祭具。
多すぎると思えるほど数々の事例が各地に継承されてきた。
今日は、元日。ご厚意により、正月の膳から分けてくださった練り物をよばれた。
南天を皿に敷いたそこに盛った食べ物は、蒲鉾に、さつま揚げ。
毎年同じだけど・・という練り物が美味しい。
特別のお店で買ってきたと、いう練り物は、ほんまに旨い。
席を立とう、としたときに気づいた祭具が目に付いた。
「無病息災 五穀豊穣」を記した矢羽根。
その祭具は、たしか見たことがある。
二ノ正月の2月5日は、長滝の年頭行事である正月ドーヤがある。
平成22年2月5日に取材した正月ドーヤは、九頭神社のケイチン、地蔵寺のオコナイにカンジョウナワカケからなる一連の行事。
元々は4日、5日の両日に亘って行われる行事であったが、1日にすべてを終えるよう短縮化された村の初祈祷行事である。
Y家の玄関口に見た矢羽根の本体は矢。
マトウチに描かれた鬼を射る弓から放たれた矢である。
マトウチ射手は、座の一老。
続いて矢を打つ二人の本当家と、受け当家の2人に行司。
打った最後。弓の角で、鬼をバラバラにしてしまう。
鬼のとどめをさす行為。
鬼は無残な形。
鬼を退治した、マトウチの儀式によって、村の安全が確保され、五穀豊穣を願った矢は、拾い集めて持ち帰り、無病息災を願う家の守り神となる。
(R3. 1. 2 EOS7D/SB805SH撮影)