一昨日、上野の東京都美術館で開催中の「プーシキン美術館展」に行ってきました。
モスクワのプーシキン美術館が所蔵する17世紀から20世紀までのフランス風景画65点を展示した今回の美術展は、私たちにも馴染み深い画家の作品がずら~り。
そんな中で、今回のシンボル的な作品はモネの「草上の昼食」。フォンテーヌブローの森の美しい木々と木漏れ日のきらめき、華やかに装った男女の楽し気に寛ぐ姿が、モネの魅力を伝えています。
作品はテーマ別にコーナーができていて、まずは「近代風景画の源流」コーナーから、ヴェルネの組作品「日の出」と「日没」(1746年)。イタリアの景観と港を組み合わせた架空の風景とのことですが、朝と夕方の空気感の違いが巧みに描き分けられた美しい作品です。
「自然への賛美」コーナーから、コローの「夕暮れ」(1860~1870)。かつて訪れたイタリアの風景と祖国フランスの風景を融合させた「スヴニール(思い出)」のカテゴリーに属する作品とのことで、確かに『懐かしい気分』を感じます。
右の作品はクールベの「山の小屋」(1874年頃)。解説によれば、クールベは普仏戦争、パリ・コミューンなどの歴史の激動の中でスイスへの亡命を与儀なくされ、失意にあったということですが、豊かな色彩、力強い筆致のスイスの風景画からは落ち着いた心持ちが伝わってきます。
「大都市パリの風景画」コーナーの作品群は夫々に、私の知るパリの雰囲気は基本的に昔からそんなに変わっていないことを感じさせます。
ロワールの「パリ環状鉄道の煙」(1885年)は、暗い空と汽車の吐き出す煙の下でも人々が日常の活動を淡々と続けているパリ郊外の雰囲気をよく表しています。
コルテスの「夜のパリ」(1910年)。夜の帳が下りてもショーウィンドウに明かりが灯り、街行く人々が賑わうパリ中心街の華やかさが生き生きと描かれています。この雰囲気、懐かしいな~、又行きた~い!
「パリ近郊ー身近な自然へのまなざし」コーナーには、モネ、シスレー、ピサロ、セザンヌ、マティスなど、私たちに馴染みの画家の作品が集まっています。トップの「草上の昼食」もこのジャンルに入っています。
上の左はマティスの「ブーローニュの森」(1902年)。独特な色彩と黒い縁取りにマティスの個性が感じられます。右はヴラマンクの「オ―ヴェールの風景」(1924年。)パリ郊外でよく見る小さな町の様子に既視感がありました。
「南へー新たな光と風景」コーナーより、左はセザンヌの「庭園の木々」(1885~1887)。右はドランの「海に並ぶヨット」(1905年)。全く違った個性ながら、夫々に好きな画家・画風ですが、今回は絵そのものより、嘗て訪れた南仏の風景が思い出され、懐かしさで胸がいっぱいになりました。
最後のコーナー「海を渡って/想像の世界」から、ゴーガンの「マタモエ、孔雀のいる風景」(1892年)と、シュルヴァージュの「赤い人物のいる風景」(1927年)。私の余り得意でないジャンルですが、そんな中では明るさとそこまで奇をてらっていない自然さが好ましいと感じた作品です。
平日の猛暑で美術展も空いているのではないかとの目論見は見事に外れ、館内は老若男女ですごい混み具合。一つ一つの作品をじっくり見ることはできませんでしたが、馴染みのあるフランス人画家たちの作品に囲まれて、フランスに行った時のことを思い出しながら過ごした時間は、やはり幸せなひと時でした。
美術館から外に出ると、上野公園は緑の木々と高い空で真夏の空気!それでも暑さに負けない元気な人々が、大勢思い思いに集っていました。(三女)