読みたい文庫がいくつかあって、それを買って読み始めたけれど、村上春樹の短編集がでたので発売日に購入した。
短編集だからあわてずにひとつ読んでは2,3日休みしながら、それでも読み終わりました。
不愉快な、もとい不可思議な女に翻弄される男の話は特に好きな分野ではないけれど、そのなかで何度も書き直したという「木野」が長編作につながる構成力で一番すきな話となった。
女性に翻弄されるというよりかは善と悪との両極に翻弄される中間というがらしい。神田とかいてカミタと読む客が長編にでてくるJなどの独特の雰囲気をもって楽しい。
それでは気に入った幾節を。
家福は首を振った。「今のところ履歴書までは必要ない。マニュアル・シフトは運転できるよね?」
「マニュアル・シフトは好きです」と彼女は冷ややかな声でいった。まるで筋金入りの菜食主義者がレタスは食べられるかと質問されたときのように。 “ドライブ・マイ・カー”
それに対して僕はどんなことをいったのだろう?何か口にしたはずだが、思い出せない。いずれにせよ、そのあとひとしきり沈黙があった。道路の真ん中にぽっかり開いた穴を両端から二人でのぞき込んでいるような沈黙。 “女のいない男たち”
もう一つきにいったところがあるけれど、その分は話の筋に重要な文になるので残念ながら記載はあきらめます。