JAZZ最中

考えてみればJAZZばかり聞いてきた。いまもJAZZ最中。

転落の街 マイクル・コナリー 著 古澤 嘉通 訳

2016-10-04 21:46:08 | 



いつも買う、孤高のアウトロー、リー・チャイルドのジャック・リーチャー物の最新作「61時間」でリーチャーが一寸年取って切れがなかったというか、そんな感じなのでこちらもいつも買うハリー・ボシュはどうだろうと、こちらも即買いで読み始めた。

懐疑っぽいというか、哲学的なところのあるこのシリーズ、ボッシュは健在でした。

 「ハリー、悪はこの世に存在すると信じているの?」
 「もちろんだ。もし悪が存在していなければおれはこの仕事に就いていないだろう」
 「悪はどこからくるものなの?」
 「いったいなんの話だ?」
 「あなたの仕事よ。あなたはほぼ毎日悪と対峙している。悪はどこからくるものなの?人はどうやって悪の存在になるの?空気のなかにあるものなの?風邪をひくように悪にかかるのかしら?」

このボッシュシリーズ、ボッシュがジャズ・ファンなのでいくつか場面が挿入されるのがたのしい。

彼女になる女性が自宅に来た場面

 「なにか音楽をかけて、グラスを取ってくる。すぐに戻る」
 室内にもどると、ボシュハDVDプレイヤーのスイッチをいれたが、スロットになにが入っているか定かでなかった。すぐにフランク・モーガンのサクスフォンが聞こえ、それで充分すばらしかった。

だんだんマニアックなミュージシャン選びになっているような気がします。絶対このアルバムがスロットに入っていたと思います。



1992年に録音された「You Must Believe In Spring」で、フランク・モーガンがK・バロン、T・フラナガン。ローランド・ハナ、バリー・ハリス、ハンク・ジョーンズとそれぞれデュオしたものです。

続けて娘のマデリンとすごしている場面

 CDチェンジャーが次のディスクに以降し、すぐにボッシュはチェット・ベイカーのトランペットだとわかった。曲は、ドイツから輸入盤になっている「ナイト・バード」だった。ボッシュは、ベイカーがその曲を1982年サンフランシスコのオファレル・ストリートにあるクラブで演奏するのを見た。ライヴでベイカーを見たたった一度の機会だった。そのころにはベイカーの雑誌に表紙を飾れるような容姿とウエストコースト流のクールさは、ドラックと人生の疲れに吸い取られてしまっていたが、それでもまだベイカーはトランペットの音色をまるで闇夜に響く人の声のように奏でることができた。その六年後、ベイカーはアムステルダムのホテルの窓から転落して死ぬことになる。



娘のマディとのもう一場面

ニ十分後、ボッシュは自宅玄関のドアを通り抜けたところ、娘がリビングで音楽をかけながら本を読んでいるのを目にした。入り口でボッシュは片手にタコスの袋を持ち、反対の手に殺人事件調書を脇に抱えてブリーフケースをもったまま、立ち尽くした。
 「なに?」マディが訪ねた。
 「アート・ペッパーを聴いているのかい?」
 「うん、本を読むのに合っていると思って」
 ボッシュは笑みをうかべ、キッチンに入った。

素敵な娘に育ってきているのです。まずはここから始めているのが良いでしょう。




ボッシュの方は年を取っていくけど、変化をしながらも個性を変えない強さがあって、また次もお会いしましょう。

コメント
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