「『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する」という長いタイトルは、どうもしっくりこないが、内容を端的にあらわしている。
30年ぶりの新訳という亀山郁夫さんの「カラマーゾフの兄弟」(光文社文庫5分冊)が、なんと昨年(2007年)55万部を突破した。これはこの種の本としては驚くべき数字で、マスコミで話題となった。どういった年代のどういった読者の支持をあつめたのか、そういった、いささかミハー的な興味によ . . . 本文を読む
NHKブックスに収録されている現行本。ただし、わたしが持っているのは昭和46年5月、第14刷りとあり、現在は装幀が変わっている。
埴谷雄高さんはいわゆる「戦後派」を代表する作家のひとりで、長編小説「死霊」短編集「虚空」「闇の中の黒い馬」で知られている。わたしが若かった70年代には、高橋和己などとならび、さかんに読まれた作家だが、現在ではあまり読まれていないとみえ「死霊」以外は入手しにくい。
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十数年ぶりに読み終えて、深いふかいため息のようなものが唇をついて出た。ため息の大部分は驚嘆であり、賛嘆である。一章ごとに、苦悩と崇高と哄笑が炸裂し、読者の胸に食い込んでくる。「うん、ここは覚えている。そうだったな~」とうなずいていたのは最初の数十ページだった。わたしはたちまち「新しい体験」のなかに投げ込まれることとなった。読むたびに「新しいドストエフスキー」。こういった体験をとても2000字程度 . . . 本文を読む