(大手拓次。ネット上の画像をお借りしました)
・・・承前。
大手拓次の詩は、断定的にいうなら、総じて自己愛を結晶核とする抒情的な“うた”である。中原中也の世界も広い意味で自己愛を結晶核とする詩に属するのだが、中也の“うた”が開放的で陽気なのにひきかえ、拓次はいささか閉塞的で陰気。
そのため、現在では「忘れられた詩人」の一人、という位置づけになってしまった。
近代における抒情詩のゆれ幅 . . . 本文を読む
(大手拓次詩集 「青春の詩集 日本編⑫」白鳳社 昭和40年刊。141編の詩が収録されている)
郷土の詩人、大手拓次、明治20~昭和9年(1887~1934)。
これまで、なにかのアンソロジーで、3~4編は読んでいるはずだけど、
気になる詩人というにはほど遠い、風変わりな詩人で片づけていた。
上州(群馬)出身の詩人では、
萩原朔太郎(1886~1942年)
山村暮鳥(1884~1924年 . . . 本文を読む
(2014年10月)
1 空の波音
とても微かな音なので
めったに耳にすることことはないけれど
空には波音がある。
曇り空には曇り空の
青空には青空の波音が。
空には海水ではなく
大量の大気が存在し うねっている。
風音と区別するのはむずかしいんだ。
空の波音。
ほら ほら
波立って西から東へ
巨大な網目をひろげてゆく。
そうして地表にあるものにぶつかると必ず音がする。
その微かな音 . . . 本文を読む