二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

雨露風日(ポエムNO.4-08)

2020年08月16日 | 俳句・短歌・詩集
   (2019年8月 高崎)



そうかそうだったんだね。
なにが「そう」なのかわからず
隣りにすわった友人の横顔を見つめる。
プラタナスの木陰に錆びた空き缶が二個ならんでいる

・・・とでもいうように
きみとぼくはならんですわっている。
この世という迷宮で迷って
迷って

迷った涯にここへ辿りついたんだ。
ぼくだけじゃなくきみも。
足許で雑草がなにかささやいている。
本通りからはずれたのはもうずいぶん昔。

名前があるようでない
どっこい ないようである。
そんな生き方しかできなかった。
雨露風日。

曲りくねった裏通りばかり歩いてきたね。
きみの猫背が語っているもの。
手や足のすり傷が銅メダルのように
かすかに鈍く光っている。

そうかそうだったんだね。
今度はぼくがきみにいう。
長かったような 短かったような
紆余曲折の

ありふれたストーリーの退屈さ。
「どうする これから?」
自販機でブラックコーヒーを二個買って
また元のベンチに戻る。

雨露風日。
そんなことをくり返すにもあきあきしたけど。
コーヒーを飲みおえたらどこへいこう。
裏通りから裏通りへ

ニコンの古めかしいフィルムカメラをぶらさげて
この一日のおわりを満喫している。
いたるところにころがっている退屈も
存分に 存分に満喫できるねカメラさえあれば。



※ 雨露風日ということばは幸田露伴「望樹記」から借りています。

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