二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

時への挨拶(ポエムNO.2-06)

2013年03月03日 | 俳句・短歌・詩集

やがてこの人たちも老いるだろう。
胸の奥がキリキリと痛む。
わかっているようでわからない。
わからないようでわかる。
そういったあいまいな感覚がぼくを混乱させている。

ぼくが乗っている小舟はもうすすまない。
いや 幽かにすすんでいる。
一年かかってようやく数メートル。
そんなゆっくりした動きなので
一日 二日ではあたりの眺めはまったくといっていいほど変化がない。

彼も彼女も老いるだろう。
現に老いてしまった人はさらに。
大輪の牡丹のように咲きほこっていた人もしぼんでしまったな。
急がずに急いで 呻かずにうめく。
走らずに走り 泣かずに泣く。

大勢なのにひとりで ひとりなのに大勢。
老いているのに若く 若いのに老いている。
ぼくはそれらをモーツァルトの音楽によって知ったのですね。
いま聞こえているのはヴァイオリン協奏曲の第3番。
フジツボのように岩にしがみついてぼくはそれに耳をすましている。

さよなら こんにちは。
こんにちは さよなら。
生まれかわるとしたら猫がいいな。
そんなやくざな妄念を 時が容赦なく噛みくだく。
一日 二日ではあたりの眺めは
まったくといっていいほど変化がないのだけれどね。

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