二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

消えゆく街の記憶 ~本庄・深谷編

2014年05月09日 | Blog & Photo
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。信号所に汽車が止まった。」
これはあまりにも有名な川端康成「雪国」の冒頭。
本書は残酷な美の探求者である作者がつむぎ出した、ある種の反ユートピア小説である。
リアリズムに裏付けられた語り口をもってはいるけれど、いま読み返すと、周到に仮構された幻想小説的な味わいがひそんでいる・・・と、わたしは推測している。
あくまでも「片腕」や「眠れる美女」を生みだした、同じ作者の小説として。

わたしは街歩きのとき、好んで区画整理地帯へ足を向ける。
そこには「凍結された街並み」がある。
区画整理によって、再開発は決定したが、いろいろな事由で、その事業が遅々としてすすまない。
そういう地域には、戦後直後、あるいは高度成長期の建築物が多く残されている。

タイムトンネルをくぐって、なつかしの昭和がよみがえってくる。
まさに「雪国」とは、そういう向こう側の世界なので、たとえばわたしの好きな永井荷風「濹東綺譚(ぼくとうきたん)」と通底するフィクショナルな手法が使われている。
後者の場合は、トンネルではなく、隅田川という川が、境界を画している。


1.「『深谷シネマ』の南入口」(Topの写真)
ここはかつて地元では有名な酒蔵があった。
シネマだから、永井荷風や川端康成ではなく、小津安二郎や山田洋次の“昭和”がある・・・というべきかもしれない。
たっぷりとした時間のよどみ。消え去った街角や、人びとの記憶。


2.「マーガレット」
この日上映されていた「小さいおうち」の垂れ幕と、マーガレットの一群。
どちらにピントを合わせていいのか迷ったので、2枚撮影した中の一枚。
映画がおわって、やがて観客が館内から吐き出されてきた。中高年の方々ばかり。


3.「酒蔵のあるポートレイト」
ここでお遇いしたG大学の学生、あゆみさんにお声をかけて、ポートレイトを数枚、撮影させていただいた。
古典文学、近代文学がお好きで、この日は深谷シネマ内にある古書店にやってきて、わたしとめぐり遇った。
めずらしく、4~50分あゆみさんとこの場所で話し込んだ。
愉しい、たのしいひとときが過ぎていった。


4.「栞・四つ葉のクローバー」
わたしとほぼ同年配の志乃さん(俳号)ともお遇いすることができた。
すると彼女、たくさんの四つ葉のクローバーをあしらったカードをプレゼントして下さった。わたしとあゆみさんは「ああ、これなら本の栞にちょうどいいですね」といって、いただいたのであった。イラストではなく、押し花。ほんものの四つ葉のクローバーというところがすごい!


5.「消えゆく街角」
JR深谷駅を背にして300メートルばかり歩くと、ここにぶつかる。
都市計画道路の真っ正面にあたっている。正面にある家と、右奥、水色にみえる家が、移転取り壊しを待っている。もう何十年もこうして待たされていると、このお父さんが教えてくれた。
家の後ろにあるケヤキの大木も、再開発にともなって伐採され、数年後には消えていく。
比喩ではない、予定された“現実”なのだ。


6.「赤い自転車」
本庄市のとある風景。ほそい路地をのぞくと、赤い自転車が・・・。
こういう風景が好きなので、どうしてもレンズを向けてしまう(^^;)
いくら撮っても、飽きることがない。
自転車が1台あることによって、うらぶれた街角にうるおいがかもしだされる。
恐ろしいばかりのスピードで、地方都市の荒廃と、高齢化がすすんでいる。


7.「あっ、風」
ずいぶん遠くから、風鈴のすずやかな音が聞こえていた。
「どこにあるんだろう」
見つかったのはハンガーに吊された1個100円の風鈴。風鈴は風の音楽。
これもまた昭和をしのぶよすがとなる。祖父や祖母がまだ元気で、養蚕や米づくりに明け暮れしていたころのわが家が、記憶の底から立ち上がってくる♪
ショートトリップは、タイムトリップでもある(^^)/~~~



※モノクロームで撮影した5月5日の「前橋」は、もう少し撮りためてから、後日アップします。
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