二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

夕焼けを見る人(ポエムNO.2-27)

2013年11月24日 | 俳句・短歌・詩集
初冬の風は透明な牙や爪を研いで川べりに立つ人に襲いかかる。
木が身をよじって その暴力に抵抗している。
いさかいはいつまでたっても絶えることがない。
遠くからマンドリンの響きが聞こえているが
あれはほんとうはなんの音だろう?
悲しみには悲しみの
よろこびにはよろこびの音色があって
あるいはその中間に 悲しみでもよろこびでもない
無数の音色があって
ぼくはその響きに敏感なんだ。

背後でだれかが大きなくしゃみをする。
世間からたいして相手にされないうらぶれた男が水っ洟をすすっている。
十年なんてつい昨日のようさ。
ゆくあてもなく寄り道ばかりしてきたな。
だから きみもぼくもここにいる。
大切な用事はあさっての方角になんかない。
きみやぼくの過去も おとといの方角になんかないのと同じだ。
自虐的にはなるな それ以上。
ぼくがいえるアドバイスはそれだけ。
だろう?

きみがぼくで ぼくがきみだとして
・・・たいして変わり映えないだろうね。
そいうことだったし これからもそうだろう。
きみとぼくのあいだを冷たい初冬の風が吹き抜けていく。
頬っぺたや指先をひっかいたり
痺れさせたりしながら。
まもなく壮大なシナリオのないドラマがはじまる。
夕焼けという名の。
この川岸は無料の一等席。
「ほら ほらね。見ててごらんよ あのヒコーキ雲」

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