二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

「如何なる星の下に」をめぐって

2015年08月09日 | Blog & Photo
読む前からこんなに興奮するのははじめてかも。
なにが・・・って、高見順の「如何なる星の下に」という小説のこと。
どこからどう糸をたぐってこの本にたどり着いたのか、もうよく覚えていない。
講談社文芸文庫の一覧を、ああだこうだ眺めていて、へええ、高見順って作家がいたな・・・と思い出した。
講談社文芸文庫には欲しい本が十冊かそれ以上あるのだけれど、お値段が高い。
文庫本でおよそ1500円はするから、おいそれとは揃えることができない。
平成の私小説作家・西村賢太さんにひきずられ、おもに大正・昭和の私小説の作家たちのラインナップを調べていた。Amazonのレビューあたりを参考にしては。
木山捷平とか、小山清とか、名前だけ知ってはいるが、読んだことのないマイナーな小説家がまだまだ存在する。

そうしているうちに、「如何なる星の下に」にぶつかった。
それからここへ飛んだら、なんと、なーんと、七回にも渡り連続アップされているではないか!!( ・_・) それだけ中身が濃いということにつながる。

「東京紅團」
http://www.tokyo-kurenaidan.com/

■如何なる星の下に(1)
http://www.tokyo-kurenaidan.com/takami_asakusa_01.htm

ここをつぎつぎクリックして読んでいるうち、夢中になってしまった。「如何なる星の下に」に関連する浅草地図を読書の手引きにプリントアウトしながら♪

いやはや・・・そのうち、「お好み焼き、もんじゃ」の染太郎へ出かけていきた~~いなどと(笑)。

さてさて、TOPに掲げた写真左は「日本文学全集49」の高見順集、昭和41年新潮社刊。
写真右は高見順「如何なる星の下に」の新潮文庫版。平成6年刊、新潮文庫の復刊シリーズの一冊。
とくに赤い本「日本文学全集49」の高見順集は今日、午前中に手に入れたばかり。
解説の評論家平野謙が、つぎのように書いている。

《高見順を代表する長編として、数おおいその仕事のなかから「如何なる星の下に」と「胸より胸に」の二編をえらんだのは、もとより私自身の責任である。しかし、この二編を選定するについては、実は伊藤整と中村真一郎の意見があずかって力あるのである。
「如何なる星の下に」について、伊藤整は書いている。
「如何なる星の下に」に関する限り高見は天才だと思わなければならない」と。伊藤整は昭和三十年ころ「如何なる星の下に」をよみなおしたのだが、「読み進に従って、この作品がちょっとも力を失っていず、水から揚げたばかりの魚のように生き生きしており
その鱗の一つ一つが光っているような実感が伝わって来ることに驚いた。むしろ昔読んだ時よりも立派に見える」のに三嘆して、「天才」というような「最高級の言葉」を、多少冗談めかしてではあれ、吹聴する気にもなったのだ、と書いている。》(以下略)

気むずかしい平野謙さん、小うるさい伊藤整さんにここまでいわせるんだから、期待は高まる、たかまる(笑)。


「如何なる星の下に」でいまもっとも手に入れやすいのは、講談社文芸文庫版だろう。
東大出の知識人で、転向文学者の高見順その人には、いまでもたいして関心はない。
しかし、東京紅團の記事と、平野謙の評言は、わたしの興味をかきたてるに十分すぎる刺激になった♪

ネットをずいぶん検索してみたが、「如何なる星の下に」に関する納得できるようなレビューを発見することができなかった。
浅草には以前からわたしも関心をもっていたし、近ごろでは、「ぺるそな」を撮った鬼海弘雄さんにどっぷり浸ったところ。
土地とそこに根付いた伝統文化を背景に、人間のドラマを描く。
そう簡単ではないと思うし、この「如何なる星の下に」は、川端康成「浅草紅團」と双璧、いや作品の出来栄えはそれ以上・・・と称えられている。

まったくのところ、読む前から興奮というのも、本読みの愉しみの一つといっていいだろう。


講談社の文芸文庫がここに4冊写っている。ある意味で充実のラインナップといえるだろう、学術文庫もすごいけど。
いま少し低価格(千円前後)なら、そうためらわず買えるが、仕方あるまい。

いつか書いたことがあったはずだが、本屋さんは、わたしにとっては単に本を仕入れにいく場所ではなく、大事な散歩コースなのである。ふらふらと歩いてみないと、どんな出会いが待っているかわからない。実店舗がなくなったら、どんなに淋しいことか!
出会いとはいきあたりばったり・・・なのである。予測がたたないというか、予測を超えている。
ある本を買おうと思って出かけたのに、じっさいはその隣にあった本を買ってしまったなんて、それこそ不可測な現実っぽくて、胸ときめくではないか♪

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