すっかり疲れてしまってね。
さっき明治のミルクチョコをばりばり食べた。
痩せた犬と太った猫がまだ知られてはいない奈落のそばで眠っている。
のんきなやつら。
一匹のほうは隣家のおやじそっくりでね。
もう一匹はこのあいだまで親しかった女友達と似ている。
ぼくはけさの二時までひとりでウィスキーの水割りを飲んでいた。
華やかな衣装のダンサーがいなくなったあとのような
ガランとした雰囲気がある。
出演者はフランス人でパントマイムの達人。
見物人がその人を取り囲んでいる。
その夢から出てしばらく仕事をし
つぎの夜はまた違った脈絡のない夢の中へ入っていく。
どんな凄惨な事件・事故でも
マスコミの手にかかるとカーニバル化する。
祭りに参加し 片棒をかつぐのが大好きな人びとが
それを食い散らかそうと集まってくる。
インターネットの投稿サイトやmixiでも。
だれもが淋しがりやなんだな――好奇心だけはミズスマシのように強くて。
ぼくはTVのスイッチを消し ベッドに横になる。
「祭りには参加しない」と決めたわけじゃないけれど
たぶん そうだな・・・うーん
不器用だから他人の不幸や幸福に熱狂するのが苦手なんだ。
ぼくの部屋というたいして特徴のないしずかな入り江は好きだけれど。
マラッカ海峡と名づけた細長いスペースの向こうに
たくさんの本やCDが平積みになっていてね
ときおりそいつがドスンと崩れて海峡をふさぐ。
ぼくはこの一夜をあとになって思い出せるように
この詩を書いているんだ。
それだけさ。
生きていくのに ご大層な理由はいらない。
いや 理由なんてその場の思いつきでどうとでもいえるけど
理由はなくてもいいのかもしれない。
いまそのことを考えている。
きみならなんていうんだろう?
虚無的にならない結論をひねり出さなくちゃ あとでもいいから。
※写真は産卵行動中のクロアゲハ。詩とは直接の関係はありません。