二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ホロヴィッツというピアニスト

2013年03月02日 | 音楽(クラシック関連)

いつかも書いたことがあったように、ピアニスト、ウラディミール・ホロヴィッツの人気は衰えることがないようである。
わたしに選ばせれば、決して10位以内には入ってこないピアニストなんだけれど、世評は極めて高いことは、いまさらいうまでもないだろう。

正統派というより、個性派。そして、演奏メニューは極めて狭い。
「ホロヴィッツの演奏は作品そのものではなくホロヴィッツを聴く演奏である」
作品と聴衆のあいだに、ピアニストが立ちはだかっている。しかもヴェルトオーゾというピアニストが。
だからリストやショパンを聴くというより、「ホロヴィッツの演奏を聴く」ということになる。派手なショービジネスといえばアメリカだろうが、いかにもアメリカ人が好きそうな演奏家ともいえる。「ショパンやリストはもう知っている。さあ、ほかのだれにもまねのできないあんたの名人芸をきかせてくれ」
そういうプレッシャーが彼を、神経質な演奏家に変えたのではないか?
ホロヴィッツはヨーロッパやロシアから新大陸アメリカに渡った演奏家のひとり。ある意味では亡命者の音楽だと、わたしは考えてきた。
つねにホームランをかっ飛ばすということを期待されている、ホームランバッターのように、聴衆・観衆は、興奮と刺激をもとめて高い金を支払う。
しかし、いくらすぐれたバッターとはいえ、100回バッターボックスに立って、100回ホームランをかっ飛ばすなんて不可能(^^;)

そんなふうにわたしはこの演奏家を眺めてきた。
ホロヴィッツはうまいけれど、退屈。演奏が表面的にきこえてしまう。生意気ないい方をすれば、わたしの感性に突き刺さってこないのである。
そういう偏見を抱いてきた。
なぜかというと、その場に現われた聴衆のために弾いているから。

ところが、一昨日、BOOK OFFの散歩でつぎのCDを手に入れた。
「ブラームス:ピアノ協奏曲第2番他」RCA 91.6.21の日付があり、収録されたのは1940~53年。
これはわたしにとっては、たぶんとっくの昔に廃盤となったはずの「幻のCD」だった。なにしろ、共演者はトスカニーニ&NBC交響楽団。
このCDにはさらにソロ演奏5曲が収録されている。そこでわたしがハッとして立ち止まったのはこれ。
・ハンガリー狂詩曲第2番
この曲はよく知っている。はじめて聴き「ホロヴィッツって、こんな演奏をする人なの?」という軽いショックがあって、さらに聴きこんでみた。当然といえば当然ながら、だれが弾いたハンガリー狂詩曲とも似ていないし、なぜかここに、ホロヴィッツのパーソナルな音楽への愛や、体温や、好みや、演奏のクセや・・・そういったものがきこえてきたのだ。
よく知っている曲なので、「ホロヴィッツのヴェルトオジティーって、これを指すのかしら」と感じたので、さらにシューベルトの「即興曲」が収録されているのを、注意しながら聴いた。「おお、ここではホロヴィッツは自分自身のために弾いている!」
わたしは彼の演奏を聴いて、このときはじめてある感動を味わったのだ。

モーツァルトはむろん、ベートーヴェンもたいした演奏を残していないし、伝説のカーネギーホール・リサイタルも知らない。ただなんとなく、リストなどロマン派が得意な、少々ヒステリックなピアニストと考えてきたホロヴィッツに対する偏見を、改めなければならない時期がきているのかもしれないなあ。

1940年の録音となるトスカニーニとの共演は、SPからの復刻らしく、「針音」がかなり聞こえる。もしかしたら、リマスターされた新盤が出ているのかしら?




この写真右はバックハウスのモーツァルト・リサイタル(1956年ザルツブルク・ライブ)。
これはほんとうに安心して身をまかせていられる。モーツァルトの「幻想曲ニ短調K.397」も「ピアノ・ソナタ第14番ハ短調 K.457」もすばらしいの一語。ベーム~ウィーン・フィルとやった最後のピアノ協奏曲27番だって、この曲最高の演奏の一つであることは疑いようがないだろう。

バックハウスをベートーヴェン弾きと決めつけているのはだれだ(~o~)!

写真左は「アサヒカメラ」3月号。東松照明さんの追悼記事が読みたくなって、発売日の翌日買った。だけど、いままで読むのを忘れていた。
写真への関心がうすれていくと、わたしの場合こういうことはよくあるんですよね(笑)。



■参考
http://blogs.yahoo.co.jp/gustav_xxx_2003/62252129.html
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