二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

甘い、あま~いフルーティーな音楽

2010年09月02日 | 音楽(クラシック関連)
ふだんは、アメリカンでブラックー・コーヒーを飲んでいるけれど、
たまには、ミルクたっぷり、お砂糖も少々くわえて、甘口のコーヒーを飲みたくなることがある。
音楽でも、同じような傾向が、わたしばかりではなく、だれにでもあることだろう。
本場モノの韓国キムチはうまいよね。だけど、今日は甘いモノが欲しくなって、
レアのチーズケーキ買ってきた・・・なんてね。

ブルックナーやマーラーの長大な音楽に疲れて帰っていく音楽というのが、わたしにはある。
その最たる1枚が、わたしの場合、メンデルスゾーンとなる。
以前はカラヤンやバーンスタインでも聴いていたが、
いまやこれが手放せない。

交響曲第3番イ短調「スコットランド」 オットー・クレンペラー&フィルハーモニア・フィル(1960年)
〃 第4番イ長調「イタリア」 〃

第3番の第1楽章が鳴り響くと、「いちばん幸せだったころの思い出」が、
どっと洪水のようによみがえってくる。メンデルスゾーンはなんという、甘やかで、優美な交響曲を残してくれたものだろう。しかも、その最大の布教者がクレンペラーときている!

クレンペラーがどんな変人だったかは、興味のある方はリサーチしてみるといいだろう。次からつぎへと、病気やらケガやらに襲われ、それをことごとく克服し、指揮台に立ちつづけた男だ。女にも手がはやかったらしく、エピソードにはことかかない。しかも、笑った顔などみせたことがないような、こわもてで、いかめしい風貌をしている。
この2曲はいろいろな批評家が賛嘆の声を惜しまない名盤として知られ、
わたしも、クレンペラーで聴きはじめたら、ほかのCDはいらないというくらい、惚れ込んでしまった( ´ー`)ノ

あと一歩まちがえたら、シナリオに奉仕する甘美なだけの映画音楽になってしまうかもしれない。
ところが、クレンペラーは、シンフォニーらしい宏壮な構造美を打ち立てながら、そこに自由で、ぽろぽろと涙がこぼれてくるような抒情性をにじませることに成功している。堂々たるスケール感のなかに鏤められた、半透明の音の数々が、ルビーや琥珀やダイヤのように輝いている。じつにフルーティーな音の飲み物。
気むずかしい議論はいらない!
さあ、この一杯を、最後の一滴まで飲みほせ・・・といわぬばかりの指揮ぶりがすばらしい。

ここが、わたしのいわば「隠れ家」なのである。
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