本日はちょっと写真論ふうに「単焦点レンズとお散歩写真でパーソナルなまなざしを鍛えよう」である。
いかにももっともらしい、気恥ずかしいタイトルではあるけれど、まあ、お許しいただく・・・として(^^;)
この4、5年は、デジカメを手にし、標準系ズームでバシバシと写真を撮っている。アルバムの数がすでに234件にも達している。「はぐれ雲」時代にもよく撮ってはいたけれど、とても、とてもいまのようなハイペースで撮影していたわけではない。
昨年はたぶん、わたしの写歴約40年の中で、いちばんよく写真を撮った1年といえるだろう。それもこれも「デジタル時代」だからこそ。
しかし、そうして写真を日常化していくと、「これでいいのか? 写真って、こんなものだったのか」という疑問が頭をもたげる。
このあいだある本を読んでいたら、現代を代表するフォトグラファーのお一人、鬼海弘雄さんのこんな発言にぶつかった。
《デジタルはたしかによく写る。だが、写り過ぎて物事をよく考えない。物事は欠落した部分がないと、具体的なものは見えてこない。
またプロセスがなさ過ぎて自分のもっているものを濾したり、寝かしたり、発酵させることができない。
写真がいかに写らないかを知ったとき、そこから写真ははじまる。》
(「ハッセルブラッドの日々」藤田一咲のインタビュー・エイ出版より)
鬼海さんは、ハッセルブラッドの使い手として、つとに知られ、「王たちの肖像・浅草寺境内」「ぺるそな」「東京夢譚」などの写真集がある。その撮影カメラとデータを拝見すると、カメラはハッセルブラッド500C/Mオンリーである。このボディを2台もっているという。レンズはほとんどがPlanar80mmF2.8(6×6判の標準レンズ)。
まことに禁欲的なこれだけの機材で、あれほどの作品を撮りつづけ、いくつかの賞を受賞している。
鬼海さんは善良な読者を煙に巻くために、こんないい方をしているのか!?
そんなことはあるまい。むしろ、フィルム写真に賭けている彼の写真論の中核なのではあるまいか? わたしには、とてもまねできないけれど。
アサヒカメラ.netに「靴底の減りかた」というとても興味深いコーナーがあるから、鬼海さんに関心のある方はのぞいてみるといいだろう。
http://www.asahicamera.net/info/blog/backnumber.php?blog_id=kikai
初心者が初心者の域を脱するには、どうしたらいいか?
「はぐれ雲」という写真集団をやっていたころ、仲間にはAさん、Hさんという元プロの上級者がいた。しかし、その他十数人のメンバーの大部分は、写歴2、3年のビギナーばかり。
そこで、そんな質問をよく受けて、うまく答えられず、困惑した覚えがある。
「気になったものを、とにかくバシバシとたくさん撮ることでしょうね」
といって、お茶をにごしていたような覚えがある(笑)。
まだフィルムカメラ時代だったけれど、カメラのオート化がすすみ、初心者でも、失敗のないキレイな写真が撮れる時代となっていた。彼らが撮ってくるチューリップやサクラや紅葉といった定番写真は、どれもかなり退屈、どこかで見たような作品ばかり。
「なぜそこでシャッターを押したのか?」がわからない。パーソナルなまなざしが、欠落している写真は、結局のところ退屈である。
ご自分で撮影した写真を愉しむのは、当然それでいっこうにかまわないが、写真展を開いて、第三者に写真を見てもらう。そこのところで、初心者はつぎのステップへとすすまねばならない。そこのところがよくわからなくて、初心者が写真に飽きてはなれてしまう・・・という出来事がよくあった。そんなことを30代の終わりころから8年もやっていた(~o~)
写真は数をこなすことが必須である。そして、雑誌や写真集に眼をさらす。とにかく、たくさんの写真を見る。眼を鍛える。
センスや感受性のようなものは教えようがないから、あとは一人ひとりが、自身の中にねむる鉱脈にぶつかるまで、掘りすすんでいくしかない・・・ということである。
わたしはおおよそ10年ぶりにフィルムカメラに復帰した。そして、デジタルはたしかに、鬼海さんがいうように《プロセスがなさ過ぎて自分のもっているものを濾したり、寝かしたり、発酵させることができない》のである。
写真を単なる挿絵、イラストとしてタウン誌や新聞のように使うのであれば、「何が写っているのか?」が第一義の問題。ところが、フォトグラファーは、何を「どう写すのか」・・・そしてそれは“わたし”のパーソナリティーとどう関わってくるのかをさぐる。そこに、ほんとうに、ディープな愉しみがかくれている。
「単焦点レンズとお散歩写真でパーソナルなまなざしを鍛えよう」
フィルムへは回帰できないという人は、せめて単焦点レンズを使ってみよう。ズームに慣れてしまうと、とても不自由に感じるだろう。足でかせぐ必要がある。寄ったり、離れたり、アングルを工夫したり・・・とにかく、動きまわる必要がある。
わたしのおすすめは、50mm前後のF値の明るいレンズである。カメラはライカの昔から、この焦点距離のレンズをめぐって進化・発展してきた。
<二脚の椅子>ニコンF3 50mmF1.4 コダックGOLD
デジタルカメラでもかまわない。とにかく、50mm一本勝負で、あなたにいま、どんな写真が撮れるのか?
被写体はあなたの足許、周辺にいくらでもころがっている。
それはたぶん、自分発見のための“小さな旅”となる。あなたの愛は、写真を通じて、なにを語りはじめるか?
・・・さて、わたしも1台か2台のカメラを手にして、今日も小さな旅に出かけよう(^^)/~~~