二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

一本の木の隣りで(ポエムNO.2-26)

2013年11月17日 | 俳句・短歌・詩集
こんな空の深さをいつまでものぞきこんでいてはいけない。
ぼくの足は地をはなれ ふわりとはなれて
ブランコに乗ったときみたいな浮遊感にとりつかれるから。
気分がいいとか 悪いとか
なんとでもいえるが
紐を解かれた風船のように心が飛んでいく。

そういえば・・・逢魔が時ということばがあったな。
ぼくはぼく自身から抜け出して浮遊する。
仕事からも家庭からもはぐれて途方に暮れる初老のぼくを
何者かがやってきて連れ去る。
ぼくはとある秋のはずれで
いつまでも帰ってこない行方不明のぼく自身を待っている。

自己肯定と自己否定の影がゆらゆら風に揺れている。
その一本一本が 岸辺の葦のようにたよりなく
あっちへこっちへと首(こうべ)をたれ
ガランとした虚しい夕暮れに挨拶を送っている。
ああ やつも死んでしまったな。
ぼくに宛てた遺書は永遠にとどかないだろう。

一本の木として
根をおろしたところでその生涯をまっとうする潔さに
いまさらのようにあこがれる。
人間ではなく 一本の木だとしたら
この秋の風をどう感じるのだろう。
その向こうからやってくる過酷な冬を。

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