ことばをたどっていったら
一人の男の背中にぶつかった。
暗い夜のような路地の奥で。
ゆっくり眼をさましながら
ぼくはその路地の奥からもどってきた
けさはやくに。
自分がこの世の役に立たない人間だと知った日から
詩人は苦しんで
自暴自棄になるほど苦しんで。
非力なことばにさらにすがった。
「朔太郎さん 萩原さん」
と呼びかけたけれど彼は振り返らなかった。
一日の底のような場所から頭をもたげ
ベッドから起きあがる。
そんな路地から出て会社へと向かう。
そのくり返しでできたささやかな
穴のあいたりんごみたいな日常。
身も凍るような風がときおり吹抜ける。
飽きもせず ぼくは音楽やことばの紐をたぐって歩いていく。
出会うのはぼくの分身ばかり・・・
といってしまっては虚しすぎるね。
錆びた鉄板のようなものにガツン! と頭をぶつける。
それはおそらく 詩人の魂なんだろう あるいは音楽家の。
身も凍るような風がときおり吹抜ける。
「さて 今日はお昼になにを食べるか?」
外に出て 見あげた空をおおいつくすバラ色の雲。
ぼくは一瞬にしてことばを失う。
さて 明日はだれに遇いにいこう・・・。