のしてんてんハッピーアート

複雑な心模様も
静かに安らいで眺めてみれば
シンプルなエネルギーの流れだと分かる

第 三 部  五、生けにえ (王子とカルパコ)

2014-12-24 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
王子とカルパコ    ウイズビー王子は王の間に近い一室に幽閉されていた。そこは王子が生の国で自分の部屋として使っている一室だった。その部屋も、ここ黄泉の国では、全体に赤茶けて見えた。そこには王子が見慣れた調度品もいくつかあった。それらはおそらく長い年月、この王子の居間にあり続けているのだろう。王子はそのいくつかを、懐かしそうに触ってみた。机の引き出しを開けると、ゴキブリの死骸が山のよ . . . 本文を読む
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第 三 部  四、救い主 (ジルの処刑)

2014-12-23 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
ジルの処刑    ヅウワンは毎日骸骨兵から拷問を受けた。自分の死はエミーのせいだと言わせようとするのだった。ヅウワンの心に憎しみを植え付けようとする骸骨兵の責め苦は、ヅウワンの心の広さに比例して大きくなっているのだった。ヅウワンは毎日その苦痛に耐えていた。  「母さんごめんなさい、私のために。」エミーは何度もヅウワンに謝った。  「いいのよエミー。」ヅウワンはその度にエミーの頭を . . . 本文を読む
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のしてんてん絵画の解説(9)

2014-12-22 | のしてんてん絵画を知っていただくために
のしてんてん絵画の紹介。本日は小品です。 9作目は主題の箱にバラの花を添えた作品です。箱は心を表す私のもっとも信頼するものでこんな話があります。星の王子様というお話のなかに、王子様が子供にゾウの絵を描いてくれとせがまれ、いろいろ描いてやるのですがどれも違うと納得しません。困った王子は最後に箱の絵を描いてやります。この箱の中にゾウが入っているんだよと言ってやるとやっと子供は納得したというお話で、あ . . . 本文を読む
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第 三 部  四、救い主 (地下道)

2014-12-22 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
地下道     狭い闇の中を、小さなランプの灯りに照らされた四人の人影が、黙々と歩いていた。先頭には剣を腰に下げた男、その後ろにたくましい体格の大男、次に華奢な体つきの女と男が続いていた。  「大丈夫か。」   二番手を歩く男、バックルパーが先頭に太い声をかけた。   「間違いない。左右は違っても、この国の地下道も我らの国のものと全く同じだ。ここを . . . 本文を読む
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第 三 部  四、救い主 (反 乱)

2014-12-21 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
反 乱    セブズーの市街を外れたランバード山脈の麓に黒い森が茂っている。人が入ると二度と出て来れないと言われる樹海がその奥に広がっている。昼間でも光が届かないその樹海には人を惑わす妖怪がいると信じられていた。そんな妖怪も逃げ出すような、人間の群れが 一つの集団を作って樹海の中に拠点を作っていた。  テリーをリーダーにした集団『黄色いふだ』が警備隊の追撃を逃れて逃げ込み、そこに . . . 本文を読む
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第 三 部  四、救い主 (ジ ル)

2014-12-20 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
ジ ル    ウイズビー王子はジルと共に地下牢にいた。カルパコの裏切りはウイズビーにとっては意外な展開ではなかった。むしろ最初からカルパコの心根をそのように見ていたのだ。  カルパコは突然ウイズビーの前に現れ、刃物を向けて飛び掛かって来た。その姿は悪魔そのものだった。カルパコを許すわけには行かなかった。牢の中で首を切るつもりだったのだ。  しかし、パルマの説得にあってカルパコを解 . . . 本文を読む
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忘れ得ぬ日

2014-12-19 | 日記
喪中のはがきが届く季節になった。 ポツリポツリと届く新年の挨拶を辞する文面は読む気も起らないが、いっときそこに記された故人の名に思いをはせる。 その中に、私の友人の名があった。 私が本気で絵を描き始めた時から知っている数人の中の一人、心の友だった。 二人で山に登った。六甲山縦走が最初だった。山を知らない私にその素晴らしい世界に誘ってくれた。ペース配分を知らず、途中でへばった私の鼻先をハイヒ . . . 本文を読む
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第 三 部  三、市街戦 (赤い玉)

2014-12-19 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
赤い玉    空が赤く染まり、夜が明けた。すっかり日が昇って、普通なら青一色に染まる天空がどこまでも赤かった。初めて見るものにとっては、不気味な息詰まるような光景だった。   まるで町全体が燃えているように見えた。ゲッペルは広場の見える建物の窓からそんな光景を眺めていた。部屋の中ではバックルパーとエグマ、ダルカン、それにユングがテーブルに座っていた。テーブルにはコンク茶と . . . 本文を読む
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第 三 部  三、市街戦 (ゲッペル対ゲッペル)

2014-12-19 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
ゲッペル対ゲッペル     『黄色いふだ』のアジトを出て、バックルパー達はユングのアパートに招かれた。そこで一夜を明かすことになったのだ。  黄泉の国に来て初めての夜だった。『黄色いふだ』の戦士達とともに、夜が明ければ作戦を開始することになっていた。   作戦会議で赤い玉を奪うためにいくつかの方法が検討されたが、結局セブズーの広場に結集している警備兵を郊外に引 . . . 本文を読む
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第 三 部  三、市街戦 (女牢二)

2014-12-18 | 小説 黄泉の国より(ファンタジー)
女牢二    深い眠りの底の方から、ゆっくり意識が戻って来たとき、ぼんやりした感覚が騒がしい叫び声をとらえた。エミーは驚いて起き上がった。  見ると、牢の入り口近くに囚人が集まって、何やら口々に言い合っているのだ。エミーは何事が起こっているのか見当もつかなかった。ぼんやりした目をこすって、エミーは囚人の騒ぎを眺めていた。囚人達の中心に誰かが倒れているようだった。   「 . . . 本文を読む
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