温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

下諏訪温泉 旦過の湯(リニューアル後 2014年4月訪問)

2014年08月07日 | 長野県

お湯の熱さと渋い佇まいの両面で入浴客を痺れさせてきた下諏訪温泉の公衆浴場「旦過の湯」は、2012年12月に完全リニューアルされましたが、その後なかなか行く機会が無く、先日ようやく訪れることができたので、遅ればせながら簡単にレポートさせていただきます(なお旧浴場の記事はこちらです)
場所は以前とほぼ同じなのですが、外観はすっかり様変わりしており、はじめは見逃しそうになってしまいました。以前は湯田坂を下りきったところに建っていましたが、現在は坂がまだ下りきらない途中に面しており、以前湯屋があったところは駐車場として整備されていました。早い話が、以前の湯屋と駐車場を入れ替えたような感じです。


 
駐車場の前には熱いお湯が滴るお湯汲み場が据えられ、また、駐車場の奥には旦過第1・第2源泉の源泉小屋があります。小屋の上に載せられている赤文字の行灯は、旧湯屋の袖看板に用いられていたものですね。



湯田坂に面した蔵のような建物の白い漆喰壁には丸い鏝絵が施されていました。これも以前には無かったものですね。修行僧が頭に載せた傘をおさえつつ、右手で錫杖を突きながら桜咲く街道を歩いている姿が描かれています。旦過の湯は修行僧のために鎌倉時代に建てられた旦過寮がその起源とされていますので、鏝絵はそれをイメージしているのでしょう。


 
玄関に下がる暖簾をくぐって館内に入ると、エントランス部は横に長いガラス窓が採用されており、十分な採光が確保されています。また番台まわりも天井を高くして開放感な雰囲気を生み出すとともに、木目とホワイトの2色を基調にして温もりと落ち着きのある空間環境が保たれており、その佇まいゆえ、番台ではなくフロントと呼んだほうが相応しいかもしれません(なんてね)。料金は券売機で支払い、券を番台に差し出します。番台のおばちゃんも館内の明るさに負けないくらい朗らかな方でした。



脱衣室も以前の銭湯然とした雰囲気とは打って変わって、まるで旅館のような綺麗で清々しいインテリアとなっており、洗面台が2つ設けられたり、枠の大きな棚やロッカー(有料)が用意されたりと、使い勝手も格段に向上しました。


 
浴室も明るくて天井が高く、清潔感と開放感を兼ね備えた素敵なお風呂に生まれかわり、しかも露天が増設されたことには驚きました。洗い場にはシャワー付き混合水栓が8基設置されており、シャワーから出てくるお湯はおそらく源泉かと思われます(ボディーソープ等の備え付けはありません)。また洗い場の中央には荷物を置くラックが設けられ、下段に風呂桶、上段に利用者の風呂道具を置けるようにしており、これによって風呂道具の置きっぱなしによるシャワー占拠を未然に防いでいました。


 
洗い場の壁には葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」がタイルにプリントされているのですが、どうも様子がおかしいので絵に目を近づけてよく見たところ、なんとこの絵は地元の風景や浴場の関係者などを写した細かい絵が寄せ集まって構成されているのでした。いわゆるピクセルモンタージュというものですね。なお女湯は同じく葛飾北斎の「凱風快晴」(通称「赤富士」)なんだそうです。旦過の湯のリニューアルに携わった方々の愛着や地元愛が伝わってきますね。


 

浴槽は旧浴場時代と同じく2つに分かれています。旧浴場では表向きは熱さによって分けていたのですが、実質的には両方熱くて、熱いお湯に慣れない方には入りにくかったかと思います。でもリニューアル後はちゃんと湯加減が二段階に調整されており、それぞれの湯口には「やや熱めの湯」や「熱めの湯」と記された札が立っていました。
手前側の「やや熱めの湯」は4~5人サイズで、私の体感で44℃位です。確かにやや熱い湯加減であり、入りしなは脛にピリっとくる刺激が走りますので、慣れない人には熱く感じるでしょうけど、徐々に体を沈めていけば慣れていない方でも支障なく入れちゃうかと思います。一方、窓側の「熱めの湯」は2~3人サイズで、湯口の札には46℃と記されていますが私の体感ではそれ以上の温度があるように感じられ、新しくなったお風呂でも「旦過の湯」の伝統をしっかり守っていました。私が訪れた時には地元客と外来客が半々のようでして、外来客は爪先をちょこんとつけただけでその熱さにおののいていましたが、地元の方は当地の慣例とばかりに皆さん必ずここで肩までしっかり湯浴みなさっており、私も意地を張ってこの熱い湯船に浸からせてもらいました。なお浴槽の傍には湯揉み棒が用意されていますので、もしどうしても熱くて入れない場合は、短絡的に加水せず、まずは棒でしっかり湯揉みしましょう。


 
新「旦過の湯」で注目すべきは、公衆浴場なのに露天が増設されたことでしょうね。といっても一帯には民家や旅館が密集していますから、周りは塀でがっちり囲われ、頭上も白い半透明のアクリル波板で完全に屋根掛けされており、屋外の開放感は殆ど無く、景色も全く楽しめませんが、腰掛けや石灯籠を配して坪庭のような趣きを造ろうと努力していますし、大和壁や屋根の隙間から風が入り込んできますから、露天風呂らしい雰囲気は味わえるかと思います。



浴槽は4~5人サイズで、湯加減は子供でも安心して入れる42℃前後。湯口には内湯のような説明の札は無いのですが、おそらく加水や自然冷却によって温度が下がっているのでしょう。内湯・露天ともに通常は槽縁の切り欠けからお湯が流下していますが、人が湯船に入ると縁の全辺から勢い良く溢れ出します。
使用源泉は旧浴場時代と同じく、上述の源泉小屋で湧出する旦過第1源湯と旦過第2源湯のミックスで、見た目は無色透明、芒硝的な味や匂いと極僅かな塩味が感じられます。スルスベ浴感の中に弱い引っ掛かりも混在しているようですが、スルスベの方が優っています。湯使いは完全放流式で、どの浴槽でもシャキっとしたフレッシュなお湯を楽しめました。また湯上がりは肌がしっとり潤うとともに、いつまでも湯冷めせず、体の芯に熱源が埋め込まれたかのような温まりが長い時間に亘って持続しました。

旧浴場の遺伝子を継承する熱い湯船と、外来者でも入れる標準的な湯加減の湯船を兼ね備えた新「旦過の湯」は、まさに地元民と外来客が交流できる素敵な空間であり、私の訪問時は日曜日だからか、朝9時頃だというのに(男湯だけで)常時10人近い客がおり、駐車場でも他県ナンバーが目立っていました。ネット上では旧浴場の風情を懐かしむ声も散見されますが、私個人としてはリニューアルした現状の方が好みです。これからも下諏訪温泉の顔でありつづけるでしょうね。


混合泉(旦過第1源湯・旦過第2源湯)
ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉 56.0℃ pH8.70 混合比率→旦過第1源湯:旦過第2源湯=60L:380L 溶存物質1157.9mg/kg 成分総計1157.9mg/kg
Na+:244.5mg(66.17mval%), Ca++:104.1mg(32.33mval%),
Cl-:193.5mg(32.40mval%), SO4--:513.3mg(63.47mval%),
H2SiO3:52.4mg, HBO2:20.3mg,
(平成21年7月23日)
加水加温循環消毒なし

JR中央本線・下諏訪駅より徒歩10分(900m)
長野県諏訪郡下諏訪町湯田町3441  地図
0266-28-0823

5:30~22:00(21:30受付終了)
230円
ロッカー(100円有料)・ドライヤー(10円/3分)あり、タオルや石鹸など販売あり

私の好み:★★+0.5
コメント
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