温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

灘温泉 六甲道店

2014年08月23日 | 兵庫県
 
前回に引き続いて今回も灘温泉を取り上げます。2店舗ある灘温泉のうち、前回は灘警察署近くにある「水道筋店」でしたが、今回はJR六甲道駅から至近にある「六甲道店」です。周囲は震災後の再開発によって建てられたと思しき新しいマンション群が整然と建ち並んでいますが、そんな一角でこの銭湯だけ時間の流れに取り残されたかの如く、昭和初期の建造物によく見られたアールデコ調のファサードが異彩を放っているのですが、てっきり古い建物なのかと思いきや、15年程前の改築時に、このようなレトロ調の外観へ装いを変えたんだそうです。温泉自体は阪神エリアの温泉のご多分に漏れず震災後に掘削されたものですが、銭湯自体は昭和7年の開業なんだそうでして、リニューアルに際してその当時の面影を蘇らせたのでしょう。とってもフォトジェニックな外観ですので、私のようにブログ用に記録する目的が無くても、思わずカメラを構えてしまう人は多いはずです。



「水道道店」と同じく館内は撮影禁止ですので、前回記事同様に下手くそな文章のみでのレポートとなりますが、どうかご了承を。なお玄関前には女湯浴室の一部を映した看板が出ていますので、これを以て浴室内の画像に代えさせていただきます。男湯は女湯と完全シンメトリであり、設けられている浴槽や設備の種類・数などは同一です。

昭和初期から営業している銭湯としてのスタイルを貫こうとしているのか、下足箱の鍵は昔ながらの松竹錠です。湯銭は番台で直接支払います。従業員の皆さんは「水道筋店」と同じくオレンジ色のスタッフTシャツを着ていました。脱衣室は典型的な銭湯のそれなのですが、「水道筋店」を含めた他の銭湯よりも一回り小さいように感じられます。室内には比較的大きな容量のロッカーが設置されている他、扇風機やエアコンも完備されており、湯上がりの火照りを取る体勢に抜かりありません。なおこちらにも監視カメラが設置されてました。

浴室の中央には円形の「温泉浴槽」が据えられ、その手前に真湯使用の「ジェットバス・電気風呂」、奥に「源泉浴槽」と「源泉かぶり湯」が配置されています。レイアウトこそ違うものの、内湯浴槽の種類は「水道筋店」とほぼ同じなんですね。洗い場にはシャワー付きカランが計14基並んでおり、有り難いことにボディーソープやリンスインシャンプーが備え付けられています。

中央の丸い「温泉浴槽」は、キャパとしては8~9人といったところで、湧出温度の低い源泉を入浴に適した温度へ加温した上で循環濾過消毒しており、湯船に張られているお湯は薄い黄土色に弱く濁っており、湯中では黄土色の細かい浮遊物も見られました。また循環と並行して、天井を伝ってくるホースから非加温の新鮮源泉も投入されていました(加水は無いようです)。

ここのお風呂で白眉なのは「源泉浴槽」と「源泉かぶり湯」であり、非加温の生源泉が完全掛け流しの状態で楽しむことができますので、私のようなマニアには堪りません。お湯はまず「源泉かぶり湯」へ注がれ、そして「源泉浴槽」へと落とされます。お湯が投入される「源泉かぶり湯」槽では激しく泡だって白濁していました。「源泉浴槽」は2人サイズで、槽内のタイルは元々白色系だったようですが、現在では温泉成分が表面をコーティングして漆塗りのように黒光りしており、部分的に元々のタイル表面がブチ模様となって現れていました。
加温された「温泉浴槽」のお湯は黄色系の濁りを呈していましたが、手付かずの状態にある源泉はほぼ無色透明であり、口にすると薄塩味・金気味・重曹的清涼苦味・弱炭酸味が感じられ、金気臭とガス臭がほのかに香ってきました。浴槽での温度は31℃前後でして、入りしなこそ少々冷たいのですが、水風呂ほどの冷たさではないため体がすぐに慣れ、やがて爽快感に包まれて源泉の虜になり、あまりの気持ち良さのため湯船から出られなくなってしまいます。事実、私は他にお客さんが入ってこないことを幸いに、数十分間も浸かり続けてしまいました(もし私が出るのを待っていった方がいらっしゃったらゴメンナサイ。この場を借りてお詫び申し上げます)。温度的に爽快であるばかりでなく、入浴中には肌にビッシリと気泡が付着するので、この泡付きも気持ち良さを更に高めてくれます。分析表によれば遊離炭酸ガスは103.0mg程度しかないのですが、実際の泡付きはその数値以上のような気がします。

「源泉風呂」から更に奥へ進むと「露天風呂」と「打たせ湯」、そして別料金のサウナがあり、「露天風呂」は所謂岩風呂でして、41℃前後に加温された温泉が使われており、湯使いとしては内湯の「温泉風呂」と同じかと思われます(即ち加温循環消毒を行いつつ新鮮源泉も同時投入)。尤も、露天といっても周辺は住宅密集地ですから、景色に関しては望むべくもありません。
この「露天風呂」の手前側には「打たせ湯」が音を轟かせながら垂直に落ちており、「水道筋店」の打たせ湯は真湯使用であるのに対し、こちらの打たせ湯は温泉が使われていて、吐出口まわりには温泉成分によるベージュのサンゴみたいなトゲトゲが付着していました。

同じ灘温泉でも「水道筋店」と比べると、こちらのお湯は泡付きが大人しく、湧出量も少ないために「源泉浴槽」のキャパが小さい点は残念ですが、お湯の良さは本物であり、冷温浴を繰り返しながら、とても気持ち良い源泉浴を堪能することができました。


新温泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 32.0℃ pH7.0 35.5L/min(掘削揚湯) 溶存物質1.64g/kg 成分総計1.74g/kg
Na+:390.0mg(74.6mval%), NH4+:16.0mg, Mg++:29.0mg(10.5mval%), Ca++:42.0mg(9.2mval%), Fe++&Fe+++:1.2mg,
Cl-:450.0mg(55.6mval%), I-:0.4mg, HCO3-:615.0mg(44.1mval%), CO3--:0.5mg,
H2SiO:70.0mg, HBO2:12.0mg, CO2:103.0mg,

JR六甲道駅より徒歩5分(350m)
兵庫県神戸市灘区備後町3-1-4
078-854-6545
ホームページ

6:00~翌1:00 3・6・9・12月の第2木曜定休
420円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤー(有料20円/3分)あり

私の好み:★★
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灘温泉 水道筋店

2014年08月23日 | 兵庫県
 
神戸市灘区に2店舗を構える銭湯「灘温泉」は、その名の通りに銭湯にもかかわらず自家源泉の温泉を用いており、両店とも良泉であるとして温泉ファンから絶賛されておりますので、温泉好きな私としては両方のお湯を体感してみることにしました。まず向かったのは灘警察近くの庶民的な商店街に面している「水道筋店」です。


 
玄関の左には「さすり観音」なるものが佇んでおり、説明プレートによれば「お身体のつらいところと同じ所を源泉でぬらした布で想いを込めてさすってください」とあり、観音様の背後の左右には温泉のお湯を汲める小さな槽がありました。私としては脳味噌の出来の悪さとメンタルの弱さが悩みなのですが、観音様にこうした堕落に基づく人間的欠陥を救っていただくのは烏滸がましいような気もしますので、特にさすることも無く入館することにしました。

なお館内は撮影禁止ですので、今回は文章のみでレポートさせていただきます。いつものように下手っぴな文章で大変恐縮ですが、宜しくお付き合いの程を。

平成にリニューアルオープンした決して古くない建物であるにもかかわらず、館内の佇まいは典型的な昭和の銭湯であり、番台で直接料金を支払います。ロッカーに囲まれた脱衣室では、いかにも銭湯らしく大きな鏡が室内全体を映していましたが、それでは防犯として役不足なのか、比較的わかりやすい位置に監視カメラが設置されていました。脱衣室における防犯はどの施設側でも頭の痛い問題かと思いますが、関西の銭湯では積極的に室内にカメラを導入する施設が多いようですね。私のホームグラウンドである東日本の入浴施設では、監視カメラを設置するところってあまり見かけないような気がしますので(番台や玄関ならともかく)、着替えて裸になった自分がカメラに監視されていることに、ちょっとしたカルチャーショックを受けました。なお、ロッカーと並んで床置型エアコンが据え付けられており、天井ではシーリングファンが回っていますので、湯上がりには強力なクールダウンが期待できます。


●浴室内および内湯浴槽各種
浴室入ってすぐ左手に「源泉かぶり湯」という小さな槽があって、塩ビ管から非加温の生源泉がドバドバと小さな槽へ落とされています。いわゆる「かけ湯」なのでして、槽の周りは赤黒く染まっており、視覚的にただならぬ雰囲気が伝わってくるのですが、ぬるいこのお湯を手桶に汲んで肩にかけてみたところ、わずか2リットルにも満たない量にもかかわらず、それだけで肌にシュワシュワとした刺激が走りました。なんじゃこりゃ! 後述する「源泉浴槽」ではこのシュワシュワ湯に全身浴できるんですから、このかけ湯をした時点で否が応でも期待に胸が膨らみますが、とりあえずは体を綺麗に洗い流すべく、洗い場へ。

洗い場にはシャワー付きの水栓が計22基ならんでおり、お湯は真湯ですが、沸かし湯・冷水ともに六甲の伏流水を使用しているとのこと。銭湯なのにボディーソープとリンスインシャンプーが備え付けられており、タオルは番台で売っていますので、手ぶらで訪れて入浴したって全く問題ありません。床には緑色凝灰岩(いわゆる十和田石系の石材)が敷きつめられており、足元から伝わる感覚は気持ち良いのですが、それだけでは滑りやすいのか、飛び石状に切り出し石を埋め込んでいました。

浴室内には4つの浴槽が設けられており、手前側から「温泉浴槽」「源泉浴槽」「ジェットバス・電気風呂」「打たせ湯」といった順に並んでいます。温泉浴槽と源泉浴槽には源泉が使用され、他は真湯です。
「温泉浴槽」は四角形の石造りで、約7人サイズ、源泉を41℃くらいに加温して提供しており、背面の壁際から排湯しています。館内表示によれば循環濾過消毒しつつ新鮮源泉も投入しているとのこと。「ジェットバス・電気風呂」はごく一般的なものですが、隅っこに設けられている「打たせ湯」は、勢いが強いことで有名な台湾の沖撃湯(台湾版の打たせ湯)も真っ青なほど強力であり、まるでデモ隊を排除する治安部隊の放水銃を彷彿とさせます。気合を入れて臨まないと、体がバラバラに散ってしまいそうです。


●劇的アワアワな「源泉浴槽」
「源泉浴槽」は「温泉浴槽」より一回り小さい6人サイズで、黒いタイル張りの浴槽には手付かずの非加温源泉が投入されているのですが、お湯を底面(2箇所)から供給されている点は大いに評価すべきかと思います。一般的に温泉施設では、「湯量豊富ですよ」というビジュアル的なイメージを強調すべく、浴槽の上からお湯を落とす供給方法を当たり前のように採用しますが、このお風呂のように底面から供給すれば、視覚的なインパクトには欠けるものの、空気に触れること無く浴槽へ注ぐことができるため、お湯の鮮度や質の低下が少なく、特に炭酸ガスを多く含むお湯においてはその効果が顕著です。施設側の、お湯に対する造詣の深さが窺えます。なお施設のホームページに、底面の目皿より泡とともにお湯が供給されている様子を撮った動画が紹介されていましたので、ここでも紹介させていただきます。


この供給方法のおかげか、先ほど「源泉かぶり湯」で体感したシュワシュワ感がお湯に入った瞬間から感じられ、忽ち全身泡だらけになります。しかも拭っても拭っても気泡がどんどん付着し、おびただしい気泡によって肌が白く見えてしまうほど、凄まじい泡付きです。お湯は僅かに黄色を帯びていますがほぼ無色透明で、新鮮な金気味・重曹ほろ苦味・薄塩味・ほんのりとした甘み・炭酸味(意外と弱い)が得られ、金気臭とガス的な匂いが嗅ぎ取れました。大量に付着する炭酸気泡のためにサラサラスベスベ感がはっきりしており、お湯本来の浴感と思しきキシキシ浴感がすっかり劣勢に追い込まれているのが実に面白いところです。
同じく施設のホームページにて、肌にどれだけの気泡が付着するのか、その様子がYouTubeにアップされていましたので、ここでもその動画を共有させていただきます。動画で映しだされている様子は誇張で無く、実際にこのような激しい泡付きを私自身も体験しております。


35℃くらいのぬるいお湯であり、炭酸湯ならではの気持ち良さも相俟って、ここに入るお客さんは皆さん悉く長湯するのですが、それゆえ回転が悪く、しかもキャパも大きくないため、他の浴槽で待機しながら空くのを窺っている人も見受けられました。なおお隣の「温泉浴槽」と同様に背面の壁際から排湯しており、加温加水循環消毒が一切無い完全放流式の湯使いです。


●露天風呂
屋外のベランダのような空間には「露天風呂」とサウナ(別料金)・水風呂が据えられています。「露天風呂」とはいえ都市の真ん中ですので、外部視界はすっかり遮蔽されており、外気が何となくそよいで来るかな、といった程度です。露天風呂は縁に石が並べられた石風呂でして、これらの石は温泉成分によって赤黒く染まっており、お湯がオーバーフローする床も同様に着色されていました。お湯は40℃くらいに加温されており、加温に伴って気が飛んでしまうので、さすがに「源泉風呂」より気泡の付着は少ないものの、それでもちゃんと付着があり、そんじょそこらの他の温泉より余程しっかりした泡付きが見られました。お湯本来の個性を活かすためか、加温は抑えられており、ぬるめの湯加減なのじっくり長湯できるのですが、それゆえにお客さんの回転が悪く、混雑時には肩を寄せ合ったり、あるいは他の浴槽で空くのを待ったりするような状況が発生していました。

炭酸パワーのおかげで、湯上がりは体の芯からポカポカ温まり、しかもぬるめのお湯なので、イヤな火照りは少なく、脱衣室でグルグル回るシーリングファンの風に当たって粗熱を放ったら、途端に爽快感が全身を走りました。銭湯にしておくのが勿体無いほど本当に素晴らしいお湯でした。


灘温泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 34.0℃ pH7.0 溶存物質1.488g/kg 成分総計1.610g/kg
Na+:456.9mg(88.23mval%), NH4+:3.1mg, Mg++:9.6mg, Ca++:27.1mg(6.00mval%), Fe++&Fe+++:0.5mg,
Cl-:386.1mg(58.90mval%), HCO3-:462.3mg(41.00mval%), CO3--:0.2mg,
H2SiO3:119.7mg, HBO2:10.6mg, CO2:122.8mg,

阪急六甲駅または王子公園駅より徒歩12分(1.1km)、JR六甲道駅より徒歩15分(1.3km)
兵庫県神戸市灘区水道筋1丁目26  地図
078-861-4535
ホームページ

5:00~24:00(最終受付23:30) 3・6・9・12月の第1木曜定休
420円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤー(有料20円/3分)あり
(ボディーソープとリンスインシャンプーは、洗い場1~2ブースにつき1セット用意されています)

私の好み:★★★
コメント (2)
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