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前回に引き続いて今回も灘温泉を取り上げます。2店舗ある灘温泉のうち、前回は灘警察署近くにある「水道筋店」でしたが、今回はJR六甲道駅から至近にある「六甲道店」です。周囲は震災後の再開発によって建てられたと思しき新しいマンション群が整然と建ち並んでいますが、そんな一角でこの銭湯だけ時間の流れに取り残されたかの如く、昭和初期の建造物によく見られたアールデコ調のファサードが異彩を放っているのですが、てっきり古い建物なのかと思いきや、15年程前の改築時に、このようなレトロ調の外観へ装いを変えたんだそうです。温泉自体は阪神エリアの温泉のご多分に漏れず震災後に掘削されたものですが、銭湯自体は昭和7年の開業なんだそうでして、リニューアルに際してその当時の面影を蘇らせたのでしょう。とってもフォトジェニックな外観ですので、私のようにブログ用に記録する目的が無くても、思わずカメラを構えてしまう人は多いはずです。
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「水道道店」と同じく館内は撮影禁止ですので、前回記事同様に下手くそな文章のみでのレポートとなりますが、どうかご了承を。なお玄関前には女湯浴室の一部を映した看板が出ていますので、これを以て浴室内の画像に代えさせていただきます。男湯は女湯と完全シンメトリであり、設けられている浴槽や設備の種類・数などは同一です。
昭和初期から営業している銭湯としてのスタイルを貫こうとしているのか、下足箱の鍵は昔ながらの松竹錠です。湯銭は番台で直接支払います。従業員の皆さんは「水道筋店」と同じくオレンジ色のスタッフTシャツを着ていました。脱衣室は典型的な銭湯のそれなのですが、「水道筋店」を含めた他の銭湯よりも一回り小さいように感じられます。室内には比較的大きな容量のロッカーが設置されている他、扇風機やエアコンも完備されており、湯上がりの火照りを取る体勢に抜かりありません。なおこちらにも監視カメラが設置されてました。
浴室の中央には円形の「温泉浴槽」が据えられ、その手前に真湯使用の「ジェットバス・電気風呂」、奥に「源泉浴槽」と「源泉かぶり湯」が配置されています。レイアウトこそ違うものの、内湯浴槽の種類は「水道筋店」とほぼ同じなんですね。洗い場にはシャワー付きカランが計14基並んでおり、有り難いことにボディーソープやリンスインシャンプーが備え付けられています。
中央の丸い「温泉浴槽」は、キャパとしては8~9人といったところで、湧出温度の低い源泉を入浴に適した温度へ加温した上で循環濾過消毒しており、湯船に張られているお湯は薄い黄土色に弱く濁っており、湯中では黄土色の細かい浮遊物も見られました。また循環と並行して、天井を伝ってくるホースから非加温の新鮮源泉も投入されていました(加水は無いようです)。
ここのお風呂で白眉なのは「源泉浴槽」と「源泉かぶり湯」であり、非加温の生源泉が完全掛け流しの状態で楽しむことができますので、私のようなマニアには堪りません。お湯はまず「源泉かぶり湯」へ注がれ、そして「源泉浴槽」へと落とされます。お湯が投入される「源泉かぶり湯」槽では激しく泡だって白濁していました。「源泉浴槽」は2人サイズで、槽内のタイルは元々白色系だったようですが、現在では温泉成分が表面をコーティングして漆塗りのように黒光りしており、部分的に元々のタイル表面がブチ模様となって現れていました。
加温された「温泉浴槽」のお湯は黄色系の濁りを呈していましたが、手付かずの状態にある源泉はほぼ無色透明であり、口にすると薄塩味・金気味・重曹的清涼苦味・弱炭酸味が感じられ、金気臭とガス臭がほのかに香ってきました。浴槽での温度は31℃前後でして、入りしなこそ少々冷たいのですが、水風呂ほどの冷たさではないため体がすぐに慣れ、やがて爽快感に包まれて源泉の虜になり、あまりの気持ち良さのため湯船から出られなくなってしまいます。事実、私は他にお客さんが入ってこないことを幸いに、数十分間も浸かり続けてしまいました(もし私が出るのを待っていった方がいらっしゃったらゴメンナサイ。この場を借りてお詫び申し上げます)。温度的に爽快であるばかりでなく、入浴中には肌にビッシリと気泡が付着するので、この泡付きも気持ち良さを更に高めてくれます。分析表によれば遊離炭酸ガスは103.0mg程度しかないのですが、実際の泡付きはその数値以上のような気がします。
「源泉風呂」から更に奥へ進むと「露天風呂」と「打たせ湯」、そして別料金のサウナがあり、「露天風呂」は所謂岩風呂でして、41℃前後に加温された温泉が使われており、湯使いとしては内湯の「温泉風呂」と同じかと思われます(即ち加温循環消毒を行いつつ新鮮源泉も同時投入)。尤も、露天といっても周辺は住宅密集地ですから、景色に関しては望むべくもありません。
この「露天風呂」の手前側には「打たせ湯」が音を轟かせながら垂直に落ちており、「水道筋店」の打たせ湯は真湯使用であるのに対し、こちらの打たせ湯は温泉が使われていて、吐出口まわりには温泉成分によるベージュのサンゴみたいなトゲトゲが付着していました。
同じ灘温泉でも「水道筋店」と比べると、こちらのお湯は泡付きが大人しく、湧出量も少ないために「源泉浴槽」のキャパが小さい点は残念ですが、お湯の良さは本物であり、冷温浴を繰り返しながら、とても気持ち良い源泉浴を堪能することができました。
新温泉
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 32.0℃ pH7.0 35.5L/min(掘削揚湯) 溶存物質1.64g/kg 成分総計1.74g/kg
Na+:390.0mg(74.6mval%), NH4+:16.0mg, Mg++:29.0mg(10.5mval%), Ca++:42.0mg(9.2mval%), Fe++&Fe+++:1.2mg,
Cl-:450.0mg(55.6mval%), I-:0.4mg, HCO3-:615.0mg(44.1mval%), CO3--:0.5mg,
H2SiO:70.0mg, HBO2:12.0mg, CO2:103.0mg,
JR六甲道駅より徒歩5分(350m)
兵庫県神戸市灘区備後町3-1-4
078-854-6545
ホームページ
6:00~翌1:00 3・6・9・12月の第2木曜定休
420円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤー(有料20円/3分)あり
私の好み:★★