前々回および前回記事で取り上げた「中の湯温泉旅館」には、離れたところに湯小屋「卜伝の湯」を有しており、30分貸切で利用することができるので、宿泊した際に利用してみることにしました。宿泊客はフロントに利用したい旨を伝え、空いている時間の中から自分が希望する時間枠を指定すればOK。入浴時間のちょっと前に玄関前から専用車が出発し、現地まで送迎してくれます。
国道158号で安房峠や安房トンネルを通過したことのある方なら、必ず通る釜トンネル前の丁字路。上画像はその丁字路を高山(安房峠)側から撮ったもので、右折すると松本方面、左折すると上高地方面です(上高地方面は一般車両進入禁止)。この丁字路の角には中の湯売店があり、宿の車はこの売店前まで送迎してくれます。なお日帰り入浴も可能で、空いている時間枠があれば入浴できますが、宿泊者優先であり、しかも周辺には駐車場がほとんど無いため(路駐できるスペースもありません)、実は日帰り入浴しにくい温泉なんですよね。私も何度も目の前を通り過ぎていながら、この日まで入浴の機会を見出せないままでいました。実を申せば、今回「中の湯温泉旅館」に泊まった理由のひとつが、気兼ね無く悠々と「卜伝の湯」に入ることでした。
これが「卜伝の湯」の湯小屋です。安房トンネルを通る車は必ずこの前を通過しますから、温泉に興味がなくてもこの湯小屋を目にした方は多いでしょう。いや、あまりに小さすぎて見逃しちゃうかも。ちなみに卜伝とは剣の達人塚原卜伝のことらしく、湯小屋の名前はかつて塚原卜伝がここで湯浴みしたことに由来しているんだそうです。
貸切のお風呂なので、利用の際には売店のおじさんがドアを解錠し、入室したら中から鍵をかけます。なお利用中は屋外側のドア上に設置されている赤いパトランプが回転しながら点灯するんだとか。
脱衣室の中は右or下画像のような感じで、棚と籠があるだけのシンプルな室内です。窓の下では梓川が飛沫をあげながら流れており、対岸に売店の建物が建っています。画像では伝わりませんが、室内は薄暗くてかなりジメジメしていました。籠の上で掲示されているように、利用時間は30分以内。
脱衣室と浴室を隔てるドアを開け、滑らないように足元を注意しながら苔むしたコンクリのステップを降りてゆくと・・・
洞窟のようなお風呂に到着です。ただ奥に深い洞穴にお湯が溜まっているだけの、至って原始的なお風呂であり、カランなどはありませんが、洞穴の中の温泉ゆえ、内部はかなりの高湿度でお籠り感も高く、秘湯感たっぷりです。塚原卜伝もこの洞穴で湯浴みをしたのかな。
岩盤をくりぬいたような湯船は3人サイズで、手前側の槽内は岩盤そのものですが、奥の方はやや深く、砂利敷きになっていました。岩肌に塩ビ管が這わされていて、そこから熱いお湯が注がれています。その一方、湯船の右側にも一本のパイプが奥から伸びており、洗い場側で鉱泉らしきものを放出し続けていたのですが、触ってみますとかなりぬるかったので、おそらく湯船へ流れてしまうと湯加減が下がってしまうために、こうしてパイプで洗い場へ逃がしているのではないかと推測されます。
湯船のお湯は薄っすら白く霞んだような濁り方をしており、湯中では白い湯の花が舞い、火山ガスに似たような少々刺激を伴う硫化水素的な味と匂い(タマゴ臭とゴム臭を足して2で割ったような風味)が感じられました。
洞穴湯船の奥には行く手を遮る板が渡されており、「この先に深穴あり 行かないで下さい」と書かれていましたので、私も念のために先へ進むのはやめました。どうやらその深い部分の底でお湯が湧出しているらしいのですが、暗い中で目を凝らしてよく見ると、奥で洞穴が窄まり、狭くなった箇所はたっぷりの金気によってオレンジ色に染まっていました。
その部分を明るくして撮り直してみたのですが、湯気が反射し、却って見にくくなっちゃいました。ごめんなさい。でもなんと無く雰囲気は伝わるかと思います。オレンジ色の箇所からはぬるい鉱泉が湧いているのですが、温度が低いためか、上述のように湯船へ注がれることは無く、全量がパイプで洗い場へ捨てられていました。
後日、この「卜伝の湯」に関してネットで調べてみますと、湯船のお湯が金気色に濁っていたり、あるいは私が入浴した時のように微白濁だったりと、その時々によってお湯の状態が異なっていることに気づきました。洞窟内で湧く温泉やぬるい鉱泉のほか、離れたところから別源泉を引いて、それぞれを供給したり止めたりすることによって、その時々の状況に応じて湯加減を調整しているのかもしれませんね。
余談ですが、冒頭に申し上げた釜トンネル前の丁字路を松本方向へ進むと、国道158号線に沿って、梓川の対岸にかつての中の湯の露天風呂跡があり、いまでも白い筋を描きながら温泉が自噴しています。この光景を見るにつけ、野湯してみたいなと思うのですが、私有地ですから無理ですね。
洞窟という密閉された暗い高湿度の空間ですので、開放感や爽快感とは逆ベクトルであり、人によっては恐怖感や不気味さを覚えてしまうかもしれません。このお風呂は、塚原卜伝の時代から残されてきた歴史を追体験したり、あるいは洞窟という環境で探検気分を味わったりと、独特の雰囲気を楽しむことに専念すべき施設であって、好みが分かれるかと思いますが、私は歴史の面でも探検気分でもしっかり楽しませていただきました。
中の湯(卜伝の湯)
単純温泉 40.5℃ pH7.6 40L/min(自然湧出) 溶存物質0.771g/kg 成分総計0.786g/kg
Na+:108.8mg(57.68mval%), Ca++:57.4mg(34.88mval%),
Cl-:82.4mg(28.68mval%), HS-:0.2mg, SO4--:50.2mg(12.98mval%), HCO3-:280.7mg(56.86mval%),
H2SiO3:169.9mg, CO2:14.7mg,
(2014年8月26日)
長野県松本市安曇 地図
0263-95-2341(中の湯売店)
0263-95-2407(中の湯温泉旅館)
日帰り入浴12:00~17:00(ただし空いている時のみ)
700円
備品類なし
私の好み:★★
国道158号で安房峠や安房トンネルを通過したことのある方なら、必ず通る釜トンネル前の丁字路。上画像はその丁字路を高山(安房峠)側から撮ったもので、右折すると松本方面、左折すると上高地方面です(上高地方面は一般車両進入禁止)。この丁字路の角には中の湯売店があり、宿の車はこの売店前まで送迎してくれます。なお日帰り入浴も可能で、空いている時間枠があれば入浴できますが、宿泊者優先であり、しかも周辺には駐車場がほとんど無いため(路駐できるスペースもありません)、実は日帰り入浴しにくい温泉なんですよね。私も何度も目の前を通り過ぎていながら、この日まで入浴の機会を見出せないままでいました。実を申せば、今回「中の湯温泉旅館」に泊まった理由のひとつが、気兼ね無く悠々と「卜伝の湯」に入ることでした。
これが「卜伝の湯」の湯小屋です。安房トンネルを通る車は必ずこの前を通過しますから、温泉に興味がなくてもこの湯小屋を目にした方は多いでしょう。いや、あまりに小さすぎて見逃しちゃうかも。ちなみに卜伝とは剣の達人塚原卜伝のことらしく、湯小屋の名前はかつて塚原卜伝がここで湯浴みしたことに由来しているんだそうです。
貸切のお風呂なので、利用の際には売店のおじさんがドアを解錠し、入室したら中から鍵をかけます。なお利用中は屋外側のドア上に設置されている赤いパトランプが回転しながら点灯するんだとか。
脱衣室の中は右or下画像のような感じで、棚と籠があるだけのシンプルな室内です。窓の下では梓川が飛沫をあげながら流れており、対岸に売店の建物が建っています。画像では伝わりませんが、室内は薄暗くてかなりジメジメしていました。籠の上で掲示されているように、利用時間は30分以内。
脱衣室と浴室を隔てるドアを開け、滑らないように足元を注意しながら苔むしたコンクリのステップを降りてゆくと・・・
洞窟のようなお風呂に到着です。ただ奥に深い洞穴にお湯が溜まっているだけの、至って原始的なお風呂であり、カランなどはありませんが、洞穴の中の温泉ゆえ、内部はかなりの高湿度でお籠り感も高く、秘湯感たっぷりです。塚原卜伝もこの洞穴で湯浴みをしたのかな。
岩盤をくりぬいたような湯船は3人サイズで、手前側の槽内は岩盤そのものですが、奥の方はやや深く、砂利敷きになっていました。岩肌に塩ビ管が這わされていて、そこから熱いお湯が注がれています。その一方、湯船の右側にも一本のパイプが奥から伸びており、洗い場側で鉱泉らしきものを放出し続けていたのですが、触ってみますとかなりぬるかったので、おそらく湯船へ流れてしまうと湯加減が下がってしまうために、こうしてパイプで洗い場へ逃がしているのではないかと推測されます。
湯船のお湯は薄っすら白く霞んだような濁り方をしており、湯中では白い湯の花が舞い、火山ガスに似たような少々刺激を伴う硫化水素的な味と匂い(タマゴ臭とゴム臭を足して2で割ったような風味)が感じられました。
洞穴湯船の奥には行く手を遮る板が渡されており、「この先に深穴あり 行かないで下さい」と書かれていましたので、私も念のために先へ進むのはやめました。どうやらその深い部分の底でお湯が湧出しているらしいのですが、暗い中で目を凝らしてよく見ると、奥で洞穴が窄まり、狭くなった箇所はたっぷりの金気によってオレンジ色に染まっていました。
その部分を明るくして撮り直してみたのですが、湯気が反射し、却って見にくくなっちゃいました。ごめんなさい。でもなんと無く雰囲気は伝わるかと思います。オレンジ色の箇所からはぬるい鉱泉が湧いているのですが、温度が低いためか、上述のように湯船へ注がれることは無く、全量がパイプで洗い場へ捨てられていました。
後日、この「卜伝の湯」に関してネットで調べてみますと、湯船のお湯が金気色に濁っていたり、あるいは私が入浴した時のように微白濁だったりと、その時々によってお湯の状態が異なっていることに気づきました。洞窟内で湧く温泉やぬるい鉱泉のほか、離れたところから別源泉を引いて、それぞれを供給したり止めたりすることによって、その時々の状況に応じて湯加減を調整しているのかもしれませんね。
余談ですが、冒頭に申し上げた釜トンネル前の丁字路を松本方向へ進むと、国道158号線に沿って、梓川の対岸にかつての中の湯の露天風呂跡があり、いまでも白い筋を描きながら温泉が自噴しています。この光景を見るにつけ、野湯してみたいなと思うのですが、私有地ですから無理ですね。
洞窟という密閉された暗い高湿度の空間ですので、開放感や爽快感とは逆ベクトルであり、人によっては恐怖感や不気味さを覚えてしまうかもしれません。このお風呂は、塚原卜伝の時代から残されてきた歴史を追体験したり、あるいは洞窟という環境で探検気分を味わったりと、独特の雰囲気を楽しむことに専念すべき施設であって、好みが分かれるかと思いますが、私は歴史の面でも探検気分でもしっかり楽しませていただきました。
中の湯(卜伝の湯)
単純温泉 40.5℃ pH7.6 40L/min(自然湧出) 溶存物質0.771g/kg 成分総計0.786g/kg
Na+:108.8mg(57.68mval%), Ca++:57.4mg(34.88mval%),
Cl-:82.4mg(28.68mval%), HS-:0.2mg, SO4--:50.2mg(12.98mval%), HCO3-:280.7mg(56.86mval%),
H2SiO3:169.9mg, CO2:14.7mg,
(2014年8月26日)
長野県松本市安曇 地図
0263-95-2341(中の湯売店)
0263-95-2407(中の湯温泉旅館)
日帰り入浴12:00~17:00(ただし空いている時のみ)
700円
備品類なし
私の好み:★★