温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

白骨温泉 笹屋

2016年07月15日 | 長野県
 
温泉施設はえてして内湯よりも露天風呂に人気が集まりますが、世の中には燦然と輝く存在感の内湯があり、白骨温泉の「小梨の湯 笹屋」はその典型ではないかと思っております。昨年末に拙ブログで、私が2015年に入った温泉ベスト10にランクインさせていただきましたが、それほど印象的な内湯でした。
私が玄関を訪うと、アイドルかと見紛うばかりの若い美女がまず現れ、その後、上品な対応の女将さんが日帰り入浴の対応をしてくださいました。その際に内湯と露天のどちらかを選択するよう求められます。女将さんの口ぶりから察するに内湯を薦めていたように思われたので、その示唆を読み取って内湯でお願いしました。


 
玄関や帳場から右手に折れて廊下を進むと、上画像のような休み処や勝手口が集まる一角があり、後述する露天風呂へ出る勝手口のそばには竃を併設している立派な薪ストーブが設置されていました。


●内湯
 
休み処の脇から緩やかな階段廊下を上がって内湯へ。途中に掛かっていた扁額には「座忘庵」と記されていたのですが、つまり座っていることを忘ちゃうほど寛げるお風呂ということなのでしょう。


 
男湯は突き当たりの左側。脱衣室は和風で落ち着いており、手入れが行き届いていて清潔感に満ちていました。


 
脱衣室から内湯への扉を開けた瞬間、目の前に広がる光景の美しさに感動し、その場でしばらく立ち尽くしてしまいました。この日は気持ち良く晴れていたため、2方向の窓が全て取り払われており、ほとんど露天風呂状態となっていたのですが、そのおかげで周囲の木立から爽やかな風が入り込んでくるばかりでなく、白樺の緑と白濁の湯が木造で重厚感のある湯屋と上手い具合に調和しており、息をのむ美しさを生み出していたのでした。


 
浴槽は元々の材質がわからないほど分厚い石灰華で覆われており、縁には鱗状の模様が幾重にも層をなし段々を形成しています。湯船のお湯は綺麗に白濁しているのですが、白樺の緑が湯面に映りこんでいるため、何とも言えない神秘的な色彩を放っていました。
なるほど「座忘庵」という名前に納得。湯船に浸かっていると、全てを忘れてこの風景と自分が同化したかのような錯覚に陥ります。そして頭の中にこびりついた煩悩や懊悩など全てが雲散霧消していきました。


●露天風呂

湯上がりに露天風呂をちょっと見学させていただくことに。
この露天風呂は貸切で利用するのですが、空いていれば日帰り入浴客も利用可能です。なお利用時間は1回30分。
空いている時には、勝手口にその旨を示す看板が出ています。


 
下駄に履き替えて一旦屋外に出て、向こう側の専用口から階段廊下を上がります。


 
露天風呂も内湯に負けず劣らずの美しさ。白樺の緑と白濁の湯による鮮やかなコントラストが印象的。かつトルコ石のような色と形状の湯船も幻想的。絵画の世界そのものです。


 
脱衣スペースや洗い場は簡素。カランは1基だけ設けられていますが、シャワーはありませんので、しっかり体を洗いたい場合は内湯へ。
壁に時計がかかっていますので、退出するまでの時間は自分で確認します。


  
 
浴槽のまわりはアイボリー色に染まり、千枚田状の石灰華で分厚く覆われています。
お湯はターコイズブルーとターコイズグリーンの間のような神秘的な色を帯びており、透明度は50〜60cmほど。湯船はあえて歪な形状とすることによって、周囲の景色に溶け込ませているようですが、お湯の色や湯船の形状は勾玉を連想させるので、神々しさすら覚えます。

内湯・露天とも自家源泉を掛け流し。湯面からは鼻腔をツンと刺激する硫化水素臭が漂い、口に含むと弱タマゴ味、苦味渋味、弱炭酸味、若干遅れて甘露を伴う石膏味が感じられました。湯中では弱いツルスベが得られるのですが、腕を摩るとギュッとグリップが効き、ひとくちでは表現できない複雑な浴感で全身が包まれます。とはいえ、ひと度お湯に入ると優しい感覚に抱かれ、美しい景色も相まり、時間を忘れていつまでも浸かっていたくなります。

今回は立ち寄り入浴でしたが、いずれは宿泊して時間に気兼ねなくゆっくり湯浴みしたものです。


小梨の湯
含硫黄-カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉(硫化水素型) 52.5℃ pH6.7 湧出量未記載(掘削自噴) 溶存物質1575mg/kg 成分総計1796mg/kg
Na+:84.5mg(18.27mval%), Mg++:63.6mg(25.97mval%), Ca++:210.0mg(52.03mval%),
Cl-:89.6mg(12.88mval%), HS-:6.1mg, HCO3-:1025mg(85.54mval%),
H2SiO2:55.8mg, CO2:207.1mg, H2S:13.7mg,
(平成17年4月27日)

長野県松本市安曇4182-1  地図
0263-93-2132
ホームページ

日帰り入浴11:00〜14:00
600円(内湯・露天のいずれかを選択。露天は貸切)
シャンプー類・ドライヤーあり(いずれも内湯。露天には無し)

私の好み:★★★
コメント (4)
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