温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

鉄輪温泉 陽光荘 その2 二つの内湯

2016年07月01日 | 大分県
前回記事「その1 客室と地獄蒸し」の続編です。

鉄輪温泉「陽光荘」の館内には大小の浴室が1つずつあり、時間によって男女を入れ替えています。大体2~3時間で入れ替えていますので、入室前には浴場前の時間割など男女区分をきちんと確認する必要があります。まずは小浴室から入ってみることにします。


●小浴室
 
常盤色の暖簾をくぐって脱衣室へ。2畳あるかないかの室内には、昔ながらのタイル張りの流し台、そして括り付けの棚があるばかりで、至ってシンプルで実用的。でも狭いながら扇風機が備え付けられているのはありがたいところ。湯上がりにはしっかりクールダウンさせていただくことにして、ささっと着替えてお風呂に入っちゃいましょう。


 
コンパクトな脱衣室から想像できるように、浴室も小ぢんまりしており、2~3人サイズの台形の浴槽がひとつ据えられているばかりです。浴槽内は水色のタイル張りで、無色透明のお湯が湛えられています。お湯の投入口は槽内底部にあり、モルタルの縁からオーバーフローしていましたが、源泉温度が熱いため、投入量は絞られているようでした。コンパクトなお風呂はややもすれば殺風景になりがちですが、少しでも温泉らしい非日常の雰囲気を作り出そうとする計らいなのか、浴槽の周りには石垣のような模様の飾り石が貼り付けられ、また大きな浴室との境には椿の花を描いたステンドガラスがはめ込まれていました。



洗い場にシャワーは無く、お湯と水道のカランが設けられているだけです。脱衣室に掲示されていた注意書きには、この小さな浴室では洗髪をしないでほしい(洗髪は大きな浴室で…)と書かれていたのですが、これは狭くてシャンプーの泡が湯船に入り込んでしまうためなのか、はたまた湯船からお湯を汲むと湯船の嵩が減ってしまって、嵩の回復に時間を要してしまうからなのか、そのあたりの事情はよくわかりません。
洗い場にはなぜかバーベルが置かれていたのですが、これに関しては大きな浴室のところで改めて触れます。


●大浴室
 
入れ替え時間の関係で、私が2泊する間に最もお世話になったのが、大きな浴室でした。暖簾は小浴室と同じ色。脱衣室は倍近い広さがありますが、流し台・棚・扇風機など備えつけの備品は小浴室と同様で、実質的な実用性には大差ありません。


 
浴室ははるかに広く、室内には2つの浴槽と蒸し風呂が備わっています。小さなドアの向こうは鉄輪名物の蒸し風呂があり、扉を開けると湯気と熱気、そして室内に敷かれているセキショウ(石菖)の香りがものすごい勢いで出てきました。浴場の直下でフツフツとあがっている地獄の地熱が室内に充満しており、直に寝転がると火傷する可能性があるので、バスタオルを敷いて利用します。


 

洗い場が狭い小浴室と対照的に、こちらの洗い場はきちんとセパレートされており、シャンプーの泡が湯船に混入するようなことはありません。ただしシャワーは無いため、アツアツの源泉が出る蛇口と、冷たい水道が出る蛇口の両方をうまく調整しながら、洗面器に上がり湯を溜める必要があります。小浴室と同じく蛇口の下にバーベルが置かれているのですが、説明書きによれば、このバーベルで洗面器を固定することにより、お湯と水の調整がしやすくなるとのことでした。風呂に入って上腕筋を鍛えるのではなく、あくまで洗面器を置くためのものだったんですね。
この洗い場の右隣には小さな岩風呂があり、ぬるめのお湯が張られていました。蒸し風呂から出た後の水風呂代わりとして設けられているのかな。


 
主浴槽は半径1.8mの扇型で、おおよそ3~4人サイズ、浴槽内のタイルなどは小浴室の湯船と同じものが採用されています。張られているお湯も小浴室と同じ源泉のものかと思われ、やはりこちらでもお湯は浴槽内にて投入されてました。窓下や湯壺など湯船のまわりは造花が飾られており、ステンドガラスも相まって、明るい室内は華やかな雰囲気です。

お湯は無色透明で、薄い塩味と弱い出汁味、そして僅かな金気味が確認できます。そして噴気孔みたいなツーンとくる火山臭もほのかにかぎとれます。鉄輪温泉はどの源泉でも薄塩味と弱金気味という共通点を持っていますが、こちらのお湯は他源泉よりも金気がかなり控えめであるように感じられました。湯中では食塩泉らしいツルスベ浴感が得られ、湯上がりには全身しっとりしました。食塩のみならずメタケイ酸の多さも滑らかでしっとりとする浴感に貢献しているかもしれません。食塩の影響なのか温まり方が強く、湯上がりは汗がひきにくいため、脱衣室の扇風機が大変役に立ちました。

なお館内には2本の源泉の分析書が掲示されています。ひとつは宿名と同じ「陽光荘」源泉で、もうひとつは「中野屋」源泉です。後者は他の施設にも配湯しているほどの湯量があるのですが、宿名を冠した前者の分析書によれば、湧出量は毎分わずか2.6リットルしかないとのこと。鉄輪地獄は高温すぎて温泉ではなく湯気になっちゃうんでしょうね。館内には特に説明がないため、あくまで私の推測にすぎませんが、自分のところではお風呂に使える湯量が限られているため、中野屋源泉を引いてカバーしているのではないかと思われます。

本館のお風呂はこの2室ですが、宿泊者はここからちょっと離れた別館のお風呂も利用することができるので、せっかくですから別館にも立ち寄ってみることにしました。別館のお風呂は次回記事でご紹介します。


(以下内湯で使用されている源泉のデータです)

陽光荘源泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 89.3℃ pH8.6 2.6L/min(掘削150m自噴) 溶存物質1.389g/kg 成分総計1.389g/kg
Na+:408.0mg(90.47mval%),
Cl-:424.0mg(62.36mval%), Br-:1.1mg, HS-:0.1mg, SO4--:256.0mg(27.79mval%), HCO3-:54.9mg, CO3--:24.0mg,
H2SiO3:148.0mg, HBO2:15.2mg,
(平成21年12月1日)

中野屋源泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 源泉温度およびpH表記なし 溶存物質4.098g/kg 成分総計4.155g/kg
Na+:1160.0mg(85.51mval%), Ca++:94.51mg(7.99mval%),
Cl-:1446.0mg(69.81mval%), SO4--:745.6mg(26.58mval%), HCO3-:110.7mg(3.10mval%),
H2SiO3:336.0mg, CO2:57.2mg, 
(昭和52年12月26日)
加水あり(源泉の温度が高いため)
加温循環消毒なし

次回記事につづく。
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