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温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

繋温泉 菅旅館

2014年12月18日 | 岩手県

話は前回記事からの続きとなりますが、盛岡市内で所用があった某日のこと、「丸家旅館」で日帰り入浴をした後、この日のお宿である「菅旅館」へ向かいました。


 
お宿の目の前は、当地の鎮守である繋温泉神社。鎌倉時代に出羽の羽黒山で修行した安楽院という山伏が、薬師如来像を安置して建立したんだとか。でもせっかく何百年の歴史がある神社なのに、本殿は殺風景なコンクリ法面にちょこんと載っているばかりで、風情はいまいちです。参道の入口には源義家が馬を繋ぎとめたとされる「繋石」があり、これが当温泉の名前の由来になっているようです。源義家は別名八幡太郎、後三年の役で歴史の教科書に載っているような人物ですから、鎌倉幕府成立よりも前の話ですね。この義家が温泉を発見して、愛馬の傷を温泉で洗ったら快癒し、自分も入浴して効能に驚いたという言い伝えが残っており、愛馬を石に繋ぎとめたところだから繋温泉という名前になったんだそうです。でも「ちょっと強引でねえべか」と私としては腑に落ちなかったので、その後改めて調べてみたら、元々ここは綱木という地名だったらしく、それが義家の伝説と結びついて、繋という名前に転じたようです。



繋石の反対側には、蹲居に熱いお湯が落とされていました。場所から考えるに、これって手水の代わりかな?



さてお宿へお邪魔しましょう。斜面に沿って建てられている関係で、道路に面した1階には玄関というか下足場しか無く、帳場や客室などは階段を上がった2階にあります。このため用事があれば、その都度下足場のブザーを押して、2階にいるスタッフの方を呼び出すことになります。そこで私も部サーを押して声をかけたところ、グラマラスで頼もしい女将さんが、とても愛想良く出迎えてくださいました。初めて訪う宿には多少なりとも不安が伴うものですが、太陽を思わせるこの女将さんからは、第一印象だけで「この宿にして正解」と安心させてくれる温かさと明るさが伝わってきました。
なお下足場には現場作業員さんの靴がたくさん並んでいましたから、工事業者の方からも愛されているようです。


 
今回は某大手宿泊予約サイトを通じて、朝食付きで4400円という破格のプランをお願いしたのですが、通されたお部屋は他よりちょっと狭めの6畳和室であるものの、お部屋は綺麗に清掃されていますし、テレビやエアコンなども完備され、Wifiだって飛んでいます。もちろん後述する掛け流しの温泉も入り放題ですから、盛岡市内にある同価格帯のビジネスホテルよりはるかにコストパフォーマンスに優れており、実に快適に一晩を過ごすことができました。尤も安いプランですから、布団を自分で敷いたり、室内に冷蔵庫が無かったりしますが、料金が料金ですから、その程度は妥協しましょう。


 
話の順番は前後しますが、上画像は朝食の様子。食堂でいただきます。シャケ・玉子・サラダといった定番の他、お盆の上にはたくさんの小鉢類が隙間なく並べられており、本当にあの料金設定で大丈夫なんだろうかとこちらが恐縮しちゃうほどのボリュームです。いずれも家庭的なテイストで大変美味しく、全てを平らげてこの日の行動に十二分な英気を養わせていただきました。また季節の山の幸として、ネマガリタケも出してくださいました。


 
さてさて本題のお風呂へと向かいましょう。館内表示に従って廊下を奥の方へと進みます。途中カギ状に曲がった箇所にある休憩スペースには、お茶のサービスが用意されていました。家庭的な小さな心遣いが嬉しいですね。浴室手前左手には共用の洗面室があり、ドライヤーや洗濯機などが用意されている他、画面に見切れていますがエアロバイクも置かれていました。家庭的なお宿って、なぜかこの手の昭和的な健康器具があるものですね。



お風呂は男女別の内湯が一室ずつです。脱衣室には籠と扇風機があるばかりで、至ってシンプルです。


 
大きなガラス窓越しに緑の美しいお庭が眺められる明るい浴室。室内空間自体は大して広くないのですが、この大きな窓のおかげで、照明要らずの採光が得られますし、何より開放的な印象を受けます。また床には十和田石が敷かれていますから、歩いた時に足裏へ伝わる感触も快適です。
洗い場にはシャワー付きカランが3基並んでおり、うち1基は浴槽へ加水するためホースが接続されています。カランから吐出されるお湯は真湯です。


 

浴槽は目測で1.5m×3.5m、おおよそ4~5人サイズでしょうか。槽内も床と同じく十和田石張りですが、窓側の縁には飾りの石が並べられており、ちょっとしたアクセントとなっています。湯口のまわりは薄っすらと白く温泉成分の付着しており、そこからチョロチョロと熱いお湯が注がれていました。館内表示によれば湯使いは完全掛け流しであり、上述のように加水用のホースはありますが、普段は加水されておらず、実際に加水するかどうかはお客さんの判断に任せられているようです。

アツアツな源泉を加水せずに温度調整するため、投入量は絞り気味ですが、訪問時は特にお湯の鈍りなど感じられず、私が入浴したところ、湯船のお湯はしっかりと洗い場へオーバーフローしました(その代わり湯嵩の回復はスローペースでしたが…)。私の体感でこの時の湯加減は44~45℃ほど。入りしなには脛にピリっとした刺激が走りましたから、備え付けのかき混ぜ棒でしっかり撹拌してから改めて入ったところ、熱さが均一になり、加水せずともかなり入りやすくなりました。
お湯は無色透明で、茹で卵の卵黄のような匂いと味が感じられます。pH9.1というアルカリ性に傾いている上、炭酸イオンが15.3mgとそれなりに含まれていますから、湯中で肌を滑るスルスルスベスベ浴感がとても気持ちよく、湯中で何度も自分の肌を撫でてしまいました。芳醇なタマゴ的湯の香と極上のスルスベ浴感が、湯浴み客の疲れを癒やし、お宿のぬくもりのおかげで、心の底から寛ぐことができました。


つなぎ温泉混合泉(至光の湯・新瑞光の湯)
単純硫黄泉 65.3℃ pH9.1 溶存物質0.5926g/kg 成分総計0.5926g/kg
Na+163.3mg(90.91mval%), Ca++:11.9mg(7.55mval%),
Cl-:105.7mg(36.43mval%), HS-:1.1mg, S2O3--:2.4mg, SO4--:200.8mg(51.10mval%), CO3--:15.3mg,
H2SiO3:68.7mg,
加水加温循環消毒なし

盛岡駅東口10番のりばより岩手県交通のつなぎ温泉行または鶯宿温泉行バスでつなぎ温泉下車、徒歩5~6分(約500m)
岩手県盛岡市繋塗沢34  地図
019-689-2229
ホームページ

日帰り入浴9:00~22:00(最終受付21:00)(10:30~14:00は清掃のため利用不可)
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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繋温泉 丸家旅館

2014年12月17日 | 岩手県

盛岡へ所用があった半年前の某日、市内のビジネスホテルに泊まるのは味気なく思えたので、ちょっと足を伸ばして繋(つなぎ)温泉で一泊することにしました。実際に泊まったお宿は次回記事で紹介しますが、この日はお宿へチェックインするまで時間に余裕がありましたので、温泉街の他の宿で日帰り入浴することにしました。今回その入浴先に選ばせていただきましたのは、温泉街の奥の方にある「丸家旅館」です。


  
旅館と名乗っているもののその実は民宿であり、一般家庭へ上がり込んでしまったかのようなアットホームな雰囲気に、玄関へ入館した私は「ここって本当に宿なのかい?」とその場で戸惑ってしまいました。私が訪いますと、折り悪く玄関の奥の部屋では、お宿の老夫婦が更にお年を召したお婆さんに対してお食事の世話、つまり老々介護の真っ最中でしたが、お邪魔を承知で声をかけて入浴をお願いしますと、快く対応してくださいました。
お風呂は玄関の階下にあり、階段を下っていった突き当たりに男女両浴室を示す小旗が下がっていましたが、この男女区別は固定されているわけではなく、お客さんの状況によって入れ替えるみたいです。私の訪問時は、大きな浴室が男湯になっていました。



浴室へ入ろうとすると、後ろからお宿のオバちゃんが「ちょっと待って」を呼び止めたので、どうしたものかと振り返ったところ、「忘れないないうちに」とヤクルトを一つ手渡してくれました。このヤクルトは、こちらのお宿ではおなじみのサービスのようですね。湯上がりにいただくことにします。


 
お年を召した夫婦が運営するアットホームな民宿は、えてして経営者のお歳と比例するように建物も草臥れていることが多いのですが、こちらのお宿は近年改修されたのか、そうした例に反して全体的に新しく、内装のあちこちがピカピカ輝いています。脱衣室に設けられた洗面台には、なんとセンサー式のオートストップ水栓が採用されていました。その一方で室内備え付けの棚や籠は、おそらく「お値段以上」でお馴染みの某大手インテリアチェーンのものであり、高価な設備と廉価な什器が同居しているそのアンバランスさも、家族経営のお宿の面白いところでもあります。



浴室は実用的な造りであり、大小2室あるうちの大きな浴室と言っても、宿泊施設の浴場としては比較的コンパクトな部類に含まれるかと思います。壁はタイル貼りですが、床には十和田石が敷かれており、足元環境は快適でした。


 
浴室左側に配置された洗い場にはシャワー付きのカランが3基並んでいます。カランのお湯を出したところ、後述する浴槽用の温泉配管から響いてくる音が変わり、湯船へ吐出されるお湯の圧力も若干弱くなりましたので、洗い場のカランから出てくるお湯は温泉かと思われます。


 
台形の浴槽は、縁に赤い御影石が用いられており、槽内は床と同じく十和田石張り。寸法は目測で1.5m×3.5m、おおよそ3~4人サイズです。湯船に張られた無色透明なお湯は、縁から少しずつ静々と溢れ出ていました。槽内には吸引用の穴など見られなかったので、掛け流しの湯使いを実践しているものと思われます。しかし、源泉が熱く、投入量を絞ることによって温度調整を図っているためか、溢れ出る量はかなり少なく、私が湯船に入って一気に溢れ出されると、その後はなかなか湯嵩が回復しませんでした。


 
壁から突き出た温泉配管はチーズで二手に分岐し、一方は赤いお臍を付けた蛇口へ、もう一方はステンレスのフレキ管に接続された上、金属の直管で浴槽の底まで引かれてから湯船へお湯を供給しています。配管からはシャーシャーと一丁前な音が響いているのですが、上述のようにお湯の温度が高いため、実際に吐出されているお湯の量はかなり少なめです。訪問時の湯船は若干鈍り気味だったので、私は赤いお臍の蛇口を開けて、一時的にお湯をたくさん注ぎ込ませてもらいました(もちろんある程度で栓を締めました)。

繋温泉のお湯はふんわりタマゴ臭が漂っているものですが、こちらの湯船の場合は投入量の問題なのか、匂いはかなり弱く、蛇口からお湯をドバドバ出した上で湯面に鼻を近づけることにより、ようやくそれらしい匂いが確認できた程度です。しかしながらカランのお湯をテイスティングすると、繋温泉らしいタマゴ的な味や匂いは明瞭に感じられました。また、匂いこそ弱いものの、湯船におけるスルスベ感はしっかり肌に伝わり、浴感ではつなぎ温泉らしい個性が発揮されていました。


温泉分析表確認できず

盛岡駅東口10番のりばより岩手県交通のつなぎ温泉行または鶯宿温泉行バスでつなぎ温泉下車、徒歩5~6分(約500m)
岩手県盛岡市繋字舘市2-4
019-689-2016
ホームページ

日帰り入浴10:00~20:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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奥藤七温泉の野湯 2014年7月再訪

2014年12月16日 | 岩手県
 
師走だというのに、半年前の初夏の話題で申し訳ございません。
前回記事で取り上げた「ふけの湯」から岩手県盛岡市方面へ抜けるべく、八幡平アスピーテライン(秋田・岩手県道23号線)を東進して途中から樹海ライン(岩手県道318号線)に入り、旧松尾村方面へと山を下っていたのですが、この樹海ラインの沿道には超有名な野湯がありますので、思いつきですが、ちょっと立ち寄って現状を窺ってみることにしました。まずは、この有名野湯や藤七温泉の旅館を見下ろす、見晴らしの良いところで立ち止まり、辺りの様子を眺望します。7月だというのに山にはまだ雪が残っていました。その下で湯気を朦々と上げている野湯周辺には、人影が見当たりません。よしよし、今回もお風呂を独り占めできそうだ…・



さらに樹海ラインを下って、皆様おなじみの有名野湯「奥藤七温泉」最寄りの路肩に車を止めます。
私がここへ立ち寄るのは4度目かな。道路から野湯までの斜面にはところどころに泥濘があるので、念の為、ゴム長靴に履き替えました。ところが運が悪いことに、私が斜面を下り始めると、先程上がったばかりの雨が再び降り出し、しかも結構雨脚が強かったので、慌てて車に戻って雨合羽を羽織りました。こりゃ先行き怪しいぞ…。


 
手軽に入浴できるポイントは、沢を挟んで2つあります。手前側、つまり道路側の斜面下にある湯だまりでは、45.4℃と辛うじて入浴できる温度だったのですが、湯面には虫の死骸がたくさん浮かんでいますし、お湯の白濁が強くて底の様子もわからなかったので(何が沈んでいるかわからない…)、ここはパスすることに。



沢の対岸へ渡って、大きな湯だまりへ。ネットにアップされている皆さんの入浴記を拝見しますと、大抵はこの大きな方で湯浴みなさっているようですね。かく言う私も、以前拙ブログでも当野湯を取り上げた際には、この湯だまりで入浴しております(その時の記事はこちら)。以前記事にした際の湯溜まりは36.3℃だったのですが、今回は湯気の立ち上り方が激しく、また硫化水素臭も強く、湯気が立ち込める湯溜まり付近はサウナのような熱気に包まれていました。湯気が濃いのは外気温の影響もあるのでしょうけど、状況から推測するに、明らかに湯温が高そうです。


 
フツフツと音を立てて温泉が湧出している箇所に温度計を突っ込んでみたところ、59.4℃という高温が計測されました。湯気が熱くて、温度計を持つ手が火傷しそう…。これじゃ入浴は困難かな。


 
湯溜まりを一周して、湧出が盛んなところから離れたところで再度温度を計ってみたのですが、最も低くて49.6℃でした。この日は地熱のご機嫌が良くて、熱放出が出血大サービス状態だったのでしょうけど、過ぎたるは及ばざるが如し、熱過ぎたら意味がありませんね。もっとも銭湯など一般的なお風呂の49℃でしたら数秒だけ入れる自信があるのですが、一般的なお風呂と、こうした地熱地帯に湧く野湯の49℃とは、同じ数値でもワケが違います。こちらの場合は、あくまで計測点がその温度であるにすぎず、あちこちから熱湯が湧いているこの湯溜まりでは、底はもっと熱い可能性だってあるわけですね。迂闊に入ったら大火傷必至。


 
湯溜まりには塩ビ管で沢から水が引かれているのですが、熱の押し売り状態であったこの時は、多少の水が差されたところで、熱いお湯はビクともしません。でも、加水ポイントの直下は浅くなっていたので、そこを木の棒でグルグル掻き混ぜたところ、辛うじて47℃まで下げることができました。この時の私にできることが、これが精一杯。
その場で脱衣して湯浴みを試みましたが、浅いので臍下までしか浸かれず、腰湯で我慢することに。これとて10秒もしないうちに再び50℃以上に戻ってしまいますから、落ち着いて入れたもんじゃありません。雨が降り続く中、数秒だけお湯に浸かり、熱さに耐え切れずに一旦出てからお湯をかき混ぜ、再びお湯に浸かり…、なんてことを数回繰り返しているうち、山の上から地熱地帯の窪地に向かって一陣の風が吹き下りてくるではありませんか。周囲の火山ガスをかき集めるように吹き下りてきた風を正面からモロに受けた私は、急に頭痛と気持ち悪さに襲われたので、慌ててその場から退散しました。

私個人としては、東北に数ある野湯の中でも、ここはアクセスがかなり楽で、比較的容易に湯浴みが楽しめる場所であると認識していたのですが、地熱のコンディションはその時々によって異なるわけであり、運次第では私のようにショッパイ想いをするはめになるのでしょうね。日頃の行いが祟ったのかも。野湯あそびも一筋縄ではいかないことを痛感させられました。


野湯につき温泉分析表なし

岩手県八幡平市松尾 (地図による場所の特定は控えさせていただきます)
冬期は県道318号線(樹海ライン)が通行止になるためアクセス不可

野湯につきアクセスできればいつでも入浴可能
無料

私の好み:今回は評価せず





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ふけの湯温泉 後編 野天風呂

2014年12月15日 | 秋田県
前回記事「ふけの湯温泉 前編 内湯・露天風呂」の続編です。

●野天風呂・男湯
 
内湯で体の垢を落とし、ヒバ材のぬくもりに心癒された後は、地球の息吹が伝わってくる、荒々しい噴気帯の野天風呂へと向かいました。駐車場から歩道を進んで、あちこちから蒸気が上がる噴気帯へ。


 
緩やかな坂道を下り、女湯の野天風呂の前をかすめ、沢の手前を右折して男湯へ。
漫画家つげ義春の作品には、当地のオンドル小屋で湯治する人々が描かれています。現在の女湯や男湯がある辺りには、かつて湯治棟があったそうですが、40年ほど前に災害に呑み込まれてしまったそうでして、今では跡形もありません。


 
野天風呂のまわりは、荒涼とした噴気帯。シューシューと蒸気を噴き上げる音や、ボコボコとお湯を湧出する音が、そこここから響いてきます。地熱の迫力を体感しながら湯浴みできる、何とも魅力的なロケーション。内湯がスタティックであるなら、野天風呂はダイナミック。大自然のパワーに圧倒されながら、心ゆくまでゆったり湯浴み。



角材とアクリル波板で組み立てられた簡素な脱衣小屋で着替え…


  
野天風呂へドボン。ファンタスティック! これで天候さえ良ければ文句無しだったのですが、あいにくこの時は雨が降っており、上画像で呑気そうに湯浴みしている私は、実は雨で頭がズブ濡れ状態なのでした。でも雨なんてどうでも良く思えるほど、この雄大なロケーションに心酔しました。

この浴槽も木造であり、その大きさは目測で3m×4.5m。底には沈殿がたくさん溜まっています。源泉から木の樋を流れてくるお湯は弱い貝汁濁りを呈しており、私が湯船へ浸かると、沈殿が舞い上がって灰白色に濁りました。弱い酸味とともに、軟式テニスボールのような風味を有しています。内湯とは異なる源泉であり、酸っぱさが弱く、イオウ感もかなり薄めでして、味・匂いともに総じてマイルドです。


●野天風呂・混浴

続いて、男女別の野天風呂の先にある混浴の野天風呂にも入ってみます。噴気帯の中を左へカーブする道を歩いてゆくと、右にオンドル、左に混浴風呂の脱衣小屋が建てられています。


 
噴気帯に建てられた簡易的なオンドル小屋。この内部に茣蓙を敷き、その上で横になって地熱で体を温めるわけですね。かつての八幡平の温泉といえば、こうしたオンドルや蒸し風呂で湯治をする利用方法が多かったわけですが、時代の変遷とともにお湯に入浴する一般的な利用法が主流となり、現在でも以前と同じ利用方法をメインにしているのは大深温泉ぐらいでしょうか。


 
さてこの混浴野天風呂は、道に対しては目隠しの塀が立てられているものの、お風呂側はあけっぴろげであり、本館や駐車場から野天風呂へ下ってゆくアプローチから丸見えなんですね。あまりにあけすけな環境ですから、尻込みしてしまう方もいらっしゃるかと思います。一応脱衣小屋は男女別ですけど…。


 
板張りのテラスのようなところに、2つの浴槽が段違いに並んでいます。いずれも3.5m×4m程の大きさで、湯口のお湯が落とされる上段浴槽はやや熱め(体感で44℃ほど)、そこから流れてくるお湯を受ける下段浴槽は、いつまでも長湯できそうなぬるめの湯加減となっていました。



2つの四角い浴槽の他、奥には4つの樽風呂も設けられています。どうやらこの樽風呂は近年になって新設されたようです。



樽風呂側から混浴野天を捉えてみました。白濁湯の向こうに広がる山の緑の中では、白い蒸気が何本も上がっています。大自然の息吹が伝わってくる、八幡平ならではの光景です。


 
4つある樽風呂は、ひとつひとつの大きさが異なっていますが、それぞれにお湯が注がれており、私の訪問時にはいずれもちょっと熱めの湯加減でした。後日ネットでこの樽風呂について調べたところ、日によって湯加減が異なるらしく、熱い日もあればぬるい日もあり、それゆえ評判も様々でした。自然の恵みというものは気まぐれであり、その時どきによってご機嫌が上下しますので、そのあたりの管理は何とも難しいものがあるのでしょう。
樽の側面には容量を示していると思しき漢字が羅列されていたのですが、どこかで実際に樽として使われていたものを、こうしてお風呂に転用したのでしょうか。せっかく開放的な環境の野天風呂にいながら、わざわざ狭い樽風呂に入るのはいかがなものかと考えたくもなりますが、でも一人サイズの樽風呂に入ると、なぜか独特の安心感や抱擁感があって、とっても落ち着くんですよね。胎内回帰のような心理的効果でも働いているのでしょうか。



野天風呂を終始独占できたことので、これ幸いとばかりに、手前側の浴槽に入って自分撮りしてみました。次回訪問時は立ち寄りなんかじゃなく、ゆっくり泊まって時間を忘れて湯浴みしたいなぁ…。


(館内)
岩の湯
単純酸性泉 66.5℃ pH2.5 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質439.3mg/kg 成分総計620.3mg/kg
H+:3.2mg(58.70mval%), Na+:4.3mg, Mg++:3.3mg, Ca++:8.4mg, Al+++:7.4mg(15.19mval%), Fe++:5.7mg,
Cl-:2.4mg(50.00mval%), HSO4-:30.2mg(14.29mval%), SO4--:306.9mg(35.71mval%),
H2SiO3:65.0mg, CO2:181.0mg,
(参考:HS-, S2O3--, H2Sともに0.1mg未満)

(野天)
熊の湯
単純温泉 79.8℃ pH5.8 湧出量記載なし(自然湧出) 溶存物質59.0mg/kg 成分総計96.5mg/kg
Na+:3.0mg(24.07mval%), Mg++:1.3mg(20.37mval%), Ca++:3.8mg(35.19mval%),
Cl-:2.9mg(18.60mval%), S2O3--:0.2mg, SO4--:11.4mg(55.81mval%), HCO3-:6.7mg(25.58mval%),
H2SiO3:27.1mg, CO2:37.5mg,

秋田県鹿角市八幡平  地図
0186-31-2131
ホームページ

冬季休業(詳しくはホームページを参照のこと)
日帰り入浴600円(内湯・館内露天・野天風呂のいずれも利用可能)
内湯にロッカー(100円有料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
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ふけの湯温泉 前編 内湯・露天風呂

2014年12月14日 | 秋田県
 
夏の某日、久しぶりに八幡平の名湯「ふけの湯」(蒸の湯)へ立ち寄り、日帰り入浴を楽しんでまいりました。天下に名を轟かせる名湯だけあり、休日になれば多くのお客さんで賑わいますが、私が訪れた日は平日で、しかも小がパラつくグズついた天気であったため、ほとんどの時間で独占して入浴することができました。名湯に空いている状態で入れるだなんて、めちゃくちゃ幸せです。
なお、こちらの温泉は既に多くの温泉ファンによって語られていますので、今回の記事では画像と簡単なキャプションだけにとどめます。


 
帳場で湯銭を支払い、秘湯を守る会の提灯を一瞥しながら、まずは内湯へと進みます。館内の「ふけの湯神社」には金精様が何本も祀られていました。こちらは古くから子宝の湯としても親しまれているんだとか。


 
東北の温泉旅館内に設けられている売店コーナーでは、えてしてオバちゃん向けの衣類が販売されているものですが、ご多分に漏れずこちらの購買コーナーでも中高年女性向けの衣服が売られていました。東北の温泉地において、湯治宿的な性格が強い旅館では、オバちゃん向けのアパレル需要が一定程度あるのでしょう。私が暮らす東京圏では想定できないマーケットが、世の中には存在しているんですね。


 
廊下を進んで突き当りにある浴室へと向かうのですが、お風呂へ入る前に腹拵えをすべく、途中の食堂で山菜そばを注文しました。夏とはいえ、八幡平の山間部は肌寒いので、体が温かいものを欲するのです。



廊下で懐かしいものを発見! 若かりし頃の欽ちゃんではありませんか。フジ・コダック・小西六(サクラカラー)など、昔の観光地にはどこでもフィルム会社の広告が見られましたね。余談ですが、平成生まれの若い子にフィルムのネガやポジの話をしたら、チンプンカンプンの様子でした。


 
長い廊下の突き当たりが内湯で、手前右側が露天風呂です。内湯へ入る前に、ちょっと露天風呂をのぞいてみましょう。


●露天風呂
 
ふけの湯温泉には、地熱活動が活発な噴気帯にある野天風呂が有名ですが、宿泊棟にも露天風呂が付帯しているんですね。この露天風呂は噴気帯方向に対して視界が広がっており、荒涼としたガレ地のあちこちから蒸気が上がっている様子が眺められます。
吹きさらしの野天風呂と違って、こちらは屋根が頭上を守ってくれますし、建物に内包された脱衣室もありますから、多少の悪天候でも気にせず湯浴みできるのが嬉しいところ。


 
石積みの仕切り塀から塩ビのパイプがちょこんと突き出ており、そこからお湯が供給されていました。ふけの湯では構造物を木造で徹底するこだわりがあるんだそうでして、四角い浴槽も立派な木造です。浴槽底には沈殿が溜まっており、入浴すると沈殿が舞い上がってお湯が白濁するはずです。
宿泊してこの露天にゆっくり浸かることができれば良かったのですが、今回は見学のみにし、後ろ髪を引かれる思いで内湯へと向かいました。


●内湯
 
さて内湯へ。脱衣室にはロッカーが設置されているので、私のような立ち寄り入浴の旅人でも安心です。造り自体は湯治宿らしく、昭和の面影を漂わせる渋い風情なのですが、室内にはオムツ台が設置されており、現代的なニーズにも対応していました。子育てをお母さんに丸投げする時代は、もう終わったのであります。


 
総ヒバ造りの浴室は風情たっぷり。思わず息を呑みます。重厚感のある浴槽は目測で3m×4.5mほど。白濁のお湯が張られていました。こちらは洗い場が特徴的であり、太い丸太を半分に割って中身を刳りぬいたものにお湯が溜められていて、かけ湯をする場合はそこから手桶でお湯を汲むことになります。床も木板張りなのですが、すべり止めのため賽の目状に溝が彫られています。


 
湯口からは滔々と温泉が注がれており、新たに注がれた分だけ、オーバーフロー管から惜しげも無く排湯されていました。そして湯船に人が入るとこの管だけでは間に合わず、縁からも溢れ出ていました。なお温度調整のため、お湯は加水されているそうです。
お湯はほぼ無色透明で、底には黄色を帯びた灰白色の粉状湯の華が沈殿しているのですが、人が湯船に入ってお湯が撹拌されると、忽ち湯の華が舞い上がって灰白色に強く濁ります。お湯を口に含んでみますと、口腔が収斂する酸味と金気味が感じられますが、意外と酸味は強くなく、口に含んでワンテンポ遅れてから頬の収斂が始まりました。湯中では酸性泉らしいヌメリとギシギシ引っかかる浴感が混在して肌に伝わりました。

後編につづく


コメント (2)
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