温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

繋温泉 菅旅館

2014年12月18日 | 岩手県

話は前回記事からの続きとなりますが、盛岡市内で所用があった某日のこと、「丸家旅館」で日帰り入浴をした後、この日のお宿である「菅旅館」へ向かいました。


 
お宿の目の前は、当地の鎮守である繋温泉神社。鎌倉時代に出羽の羽黒山で修行した安楽院という山伏が、薬師如来像を安置して建立したんだとか。でもせっかく何百年の歴史がある神社なのに、本殿は殺風景なコンクリ法面にちょこんと載っているばかりで、風情はいまいちです。参道の入口には源義家が馬を繋ぎとめたとされる「繋石」があり、これが当温泉の名前の由来になっているようです。源義家は別名八幡太郎、後三年の役で歴史の教科書に載っているような人物ですから、鎌倉幕府成立よりも前の話ですね。この義家が温泉を発見して、愛馬の傷を温泉で洗ったら快癒し、自分も入浴して効能に驚いたという言い伝えが残っており、愛馬を石に繋ぎとめたところだから繋温泉という名前になったんだそうです。でも「ちょっと強引でねえべか」と私としては腑に落ちなかったので、その後改めて調べてみたら、元々ここは綱木という地名だったらしく、それが義家の伝説と結びついて、繋という名前に転じたようです。



繋石の反対側には、蹲居に熱いお湯が落とされていました。場所から考えるに、これって手水の代わりかな?



さてお宿へお邪魔しましょう。斜面に沿って建てられている関係で、道路に面した1階には玄関というか下足場しか無く、帳場や客室などは階段を上がった2階にあります。このため用事があれば、その都度下足場のブザーを押して、2階にいるスタッフの方を呼び出すことになります。そこで私も部サーを押して声をかけたところ、グラマラスで頼もしい女将さんが、とても愛想良く出迎えてくださいました。初めて訪う宿には多少なりとも不安が伴うものですが、太陽を思わせるこの女将さんからは、第一印象だけで「この宿にして正解」と安心させてくれる温かさと明るさが伝わってきました。
なお下足場には現場作業員さんの靴がたくさん並んでいましたから、工事業者の方からも愛されているようです。


 
今回は某大手宿泊予約サイトを通じて、朝食付きで4400円という破格のプランをお願いしたのですが、通されたお部屋は他よりちょっと狭めの6畳和室であるものの、お部屋は綺麗に清掃されていますし、テレビやエアコンなども完備され、Wifiだって飛んでいます。もちろん後述する掛け流しの温泉も入り放題ですから、盛岡市内にある同価格帯のビジネスホテルよりはるかにコストパフォーマンスに優れており、実に快適に一晩を過ごすことができました。尤も安いプランですから、布団を自分で敷いたり、室内に冷蔵庫が無かったりしますが、料金が料金ですから、その程度は妥協しましょう。


 
話の順番は前後しますが、上画像は朝食の様子。食堂でいただきます。シャケ・玉子・サラダといった定番の他、お盆の上にはたくさんの小鉢類が隙間なく並べられており、本当にあの料金設定で大丈夫なんだろうかとこちらが恐縮しちゃうほどのボリュームです。いずれも家庭的なテイストで大変美味しく、全てを平らげてこの日の行動に十二分な英気を養わせていただきました。また季節の山の幸として、ネマガリタケも出してくださいました。


 
さてさて本題のお風呂へと向かいましょう。館内表示に従って廊下を奥の方へと進みます。途中カギ状に曲がった箇所にある休憩スペースには、お茶のサービスが用意されていました。家庭的な小さな心遣いが嬉しいですね。浴室手前左手には共用の洗面室があり、ドライヤーや洗濯機などが用意されている他、画面に見切れていますがエアロバイクも置かれていました。家庭的なお宿って、なぜかこの手の昭和的な健康器具があるものですね。



お風呂は男女別の内湯が一室ずつです。脱衣室には籠と扇風機があるばかりで、至ってシンプルです。


 
大きなガラス窓越しに緑の美しいお庭が眺められる明るい浴室。室内空間自体は大して広くないのですが、この大きな窓のおかげで、照明要らずの採光が得られますし、何より開放的な印象を受けます。また床には十和田石が敷かれていますから、歩いた時に足裏へ伝わる感触も快適です。
洗い場にはシャワー付きカランが3基並んでおり、うち1基は浴槽へ加水するためホースが接続されています。カランから吐出されるお湯は真湯です。


 

浴槽は目測で1.5m×3.5m、おおよそ4~5人サイズでしょうか。槽内も床と同じく十和田石張りですが、窓側の縁には飾りの石が並べられており、ちょっとしたアクセントとなっています。湯口のまわりは薄っすらと白く温泉成分の付着しており、そこからチョロチョロと熱いお湯が注がれていました。館内表示によれば湯使いは完全掛け流しであり、上述のように加水用のホースはありますが、普段は加水されておらず、実際に加水するかどうかはお客さんの判断に任せられているようです。

アツアツな源泉を加水せずに温度調整するため、投入量は絞り気味ですが、訪問時は特にお湯の鈍りなど感じられず、私が入浴したところ、湯船のお湯はしっかりと洗い場へオーバーフローしました(その代わり湯嵩の回復はスローペースでしたが…)。私の体感でこの時の湯加減は44~45℃ほど。入りしなには脛にピリっとした刺激が走りましたから、備え付けのかき混ぜ棒でしっかり撹拌してから改めて入ったところ、熱さが均一になり、加水せずともかなり入りやすくなりました。
お湯は無色透明で、茹で卵の卵黄のような匂いと味が感じられます。pH9.1というアルカリ性に傾いている上、炭酸イオンが15.3mgとそれなりに含まれていますから、湯中で肌を滑るスルスルスベスベ浴感がとても気持ちよく、湯中で何度も自分の肌を撫でてしまいました。芳醇なタマゴ的湯の香と極上のスルスベ浴感が、湯浴み客の疲れを癒やし、お宿のぬくもりのおかげで、心の底から寛ぐことができました。


つなぎ温泉混合泉(至光の湯・新瑞光の湯)
単純硫黄泉 65.3℃ pH9.1 溶存物質0.5926g/kg 成分総計0.5926g/kg
Na+163.3mg(90.91mval%), Ca++:11.9mg(7.55mval%),
Cl-:105.7mg(36.43mval%), HS-:1.1mg, S2O3--:2.4mg, SO4--:200.8mg(51.10mval%), CO3--:15.3mg,
H2SiO3:68.7mg,
加水加温循環消毒なし

盛岡駅東口10番のりばより岩手県交通のつなぎ温泉行または鶯宿温泉行バスでつなぎ温泉下車、徒歩5~6分(約500m)
岩手県盛岡市繋塗沢34  地図
019-689-2229
ホームページ

日帰り入浴9:00~22:00(最終受付21:00)(10:30~14:00は清掃のため利用不可)
400円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
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