前回記事「南田温泉 ホテルアップルランド 前編」の続編です
●竹炭の湯「満天の風呂」
前回取り上げた大浴場「苹果の湯」の前、そして日帰り入浴専用玄関を通り過ぎ、足湯を左に見ながら渡り廊下を歩いて、次の目的地である「満天の風呂」へと向かいます。
メインである「苹果の湯」に対し、サブである「満天の風呂」は相対的に控えめな造りですが、とはいえ他の旅館でしたら十分に主役を張れるほどの立派な規模を有し、脱衣室だって大浴場より一回り小さいものの、綺麗で備品類も整っており、使い勝手も良好です。
ところが浴室に入ると、一気に脇役感が強くなり、脱衣室では背伸びして頑張っていたものの、ここに至って息が切れて勢いが落ちてしまったかのように、「苹果の湯」の半分も無さそうなほどのコンパクトな空間となってしまいます。尤もメインの「苹果の湯」が広すぎるだけであり、この「満天の風呂」より小さなお風呂は、世間にいくらでもありますから、不平を言うには及びません。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が11基並んでおり、中央に据えられたベンチの上には桶や腰掛けが積み置かれています。上画像ではシャワーの前にシャンプー類が備え付けられていますが、これは宿泊者のみが利用できる朝5:00~10:00までであり、それ以降から21:00まで、つまり日帰り入浴客も利用する時間帯にはシャンプー類は撤去されちゃいます。日帰り入浴利用の方はご自身で持参しましょう。
長方形の手前側長辺を弓型にしたような内湯浴槽は、槽内がタイル貼りで、縁には木材が用いられており、この縁の切り欠けよりお湯がしっかりオーバーフローしています。そしてオーバーフローが流れる床の表面は黒く染まっていました。
竹炭の湯と称するだけあって、室内には竹炭がたくさん置かれており、以て空気清浄を図っているものと推測されますが、内湯の温泉投入箇所にも竹炭が立てかけられ、これでお湯を「濾過?」しているようでした。実際にはどれだけの効果があるのかわかりませんが、ここで注目すべきは竹炭ではなく、その周りにこびりついた白い湯の華であります。お湯の流路を中心にして、綿のような湯の華が流れに身を委ねながらユラユラと揺れており、材木の表面をすっかり覆い隠すほど大量の湯の華がびっしりと付着しているのです。
画像ではわかりにくいのですが、湯船にも溶き卵のような白い湯の華が浮遊しており、試しに桶でお湯を掬ってみたところ、画像右(下)のように大きなものをキャッチすることができました。津軽平野の温泉は大抵が食塩泉かそれに類するものであり、新屋温泉のように硫化水素感の強いお湯もいくつか存在していますが、まさかこんなに大きな湯の華が浮遊している温泉もあるとは予測だにせず、この光景を目にしてかなり驚いてしまいました。ビジュアル面のみならず、室内にもふんわりとタマゴ臭が漂っていますから、温泉に硫化水素等が存在しているのは明白です。津軽の温泉って、ただ単に数が多いわけではなく、その質も多様で奥が深いんですね。
(上画像クリックで拡大)
ところがです。実に興味深いお湯だと感心しながら、湯上がりに分析表を穴が空くほど読んだのですが、硫化水素イオンもチオ硫酸イオンも遊離硫化水素もデータには表れておらず、摩訶不思議なことに総硫黄がゼロなんです。あれれ? あの湯の華やタマゴ臭ってどこから来ているの? ネット上で紹介されている以前のデータを拝見しますと、かつては2mg未満の総硫黄を有していたそうですが、現在掲示されているデータが分析された平成25年当時は、何らかの事情によってイオウの存在が消えてしまっているようです。源泉のコンディションによって多少の上下はありえますが、全く消えちゃうのは不自然ですね。
「満天の風呂」には露天風呂も付帯しており、周囲を塀で囲まれているため、景色は望めないものの、大きさも雰囲気も、大浴場「苹果の湯」より優っているように感じられました。お風呂の頭上には葦簀が張られており、湯浴み中はその隙間越しに空を見上げる形になります。「満天」とはその葦簀越しに見上げる夜空のことを意味しているのでしょう。
露天風呂では短い木の樋からお湯が熱めのお湯が落とされています。この樋の内側にはこびりつき防止のビニルシートが敷かれているため、内湯のような白い湯の華の付着は見られませんでした。でもお湯の良さは素晴らしく、大きさや雰囲気どころか、お湯が持つ味や匂い、そしてツルスベ浴感など、お湯が持つ個性面でも、「苹果の湯」よりこちらの方が濃くハッキリと感じられました。ホテル内のお風呂では同じ源泉のお湯を引いているものの、この「満天の風呂」が最も源泉に近いため、お湯の鮮度も濃さも損失が少ない状態で浴槽へ供給されているんだそうです。
お風呂の大きさを優先するなら「苹果の湯」、お湯の質を重視するなら「満天の風呂」を選択すると宜しいかと思われます。なお「満天の風呂」を日帰り入浴で利用する場合は、13:00~21:00(最終受付20:30)が受付時間となります。また宿泊客でも「満天の風呂」はチェックインから21:00まで、及び翌朝5:00~10:00までの時間制限があります。
大規模なホテルは管理の都合上、湯使いに難があるケースが多く見られますが、こちらのホテルは2つある浴場の両方で掛け流しを実践しており、しかもお湯の質が個性的であるという点で、利用価値の高い施設でした。お湯のみならず、ホテルとしてのクオリティもまずまずなので、津軽地方へおでかけの際には、弘前からちょっと足を伸ばしてこちらでゆっくり過ごすのも宜しいかと思います。
南田源泉
ナトリウム-塩化物温泉 51.5℃ pH8.2 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質2.698g/kg 成分総計2.705g/kg
Na+:904.1mg(94.05mval%),
Cl-:1313mg(90.67mval%), Br-:4.6mg, I-:0.3mg, HCO3-:206.9mg(8.30mval%),
H2SiO3:171.6mg, HBO2:14.7mg,
加温循環ろ過なし
加水あり(源泉温度が高いので)
塩素系薬剤を添加(温泉水の衛生管理のため)
弘南鉄道弘南線・平賀駅より徒歩15分
青森県平川市町居字南田166-3 地図
0172-44-3711
ホームページ
日帰り入浴
大浴場「苹果の湯」10:00~15:00(最終受付14:00)
竹炭の湯「満天の風呂」15:00~21:00(最終受付20:30)
350円
(今回拙ブログで取り上げなかった貸切風呂は1200円/60分。平日15:00~23:30、土日祝10:00~23:00。2室あり)
ロッカー・ドライヤーあり
私の好み:★★★
●竹炭の湯「満天の風呂」
前回取り上げた大浴場「苹果の湯」の前、そして日帰り入浴専用玄関を通り過ぎ、足湯を左に見ながら渡り廊下を歩いて、次の目的地である「満天の風呂」へと向かいます。
メインである「苹果の湯」に対し、サブである「満天の風呂」は相対的に控えめな造りですが、とはいえ他の旅館でしたら十分に主役を張れるほどの立派な規模を有し、脱衣室だって大浴場より一回り小さいものの、綺麗で備品類も整っており、使い勝手も良好です。
ところが浴室に入ると、一気に脇役感が強くなり、脱衣室では背伸びして頑張っていたものの、ここに至って息が切れて勢いが落ちてしまったかのように、「苹果の湯」の半分も無さそうなほどのコンパクトな空間となってしまいます。尤もメインの「苹果の湯」が広すぎるだけであり、この「満天の風呂」より小さなお風呂は、世間にいくらでもありますから、不平を言うには及びません。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が11基並んでおり、中央に据えられたベンチの上には桶や腰掛けが積み置かれています。上画像ではシャワーの前にシャンプー類が備え付けられていますが、これは宿泊者のみが利用できる朝5:00~10:00までであり、それ以降から21:00まで、つまり日帰り入浴客も利用する時間帯にはシャンプー類は撤去されちゃいます。日帰り入浴利用の方はご自身で持参しましょう。
長方形の手前側長辺を弓型にしたような内湯浴槽は、槽内がタイル貼りで、縁には木材が用いられており、この縁の切り欠けよりお湯がしっかりオーバーフローしています。そしてオーバーフローが流れる床の表面は黒く染まっていました。
竹炭の湯と称するだけあって、室内には竹炭がたくさん置かれており、以て空気清浄を図っているものと推測されますが、内湯の温泉投入箇所にも竹炭が立てかけられ、これでお湯を「濾過?」しているようでした。実際にはどれだけの効果があるのかわかりませんが、ここで注目すべきは竹炭ではなく、その周りにこびりついた白い湯の華であります。お湯の流路を中心にして、綿のような湯の華が流れに身を委ねながらユラユラと揺れており、材木の表面をすっかり覆い隠すほど大量の湯の華がびっしりと付着しているのです。
画像ではわかりにくいのですが、湯船にも溶き卵のような白い湯の華が浮遊しており、試しに桶でお湯を掬ってみたところ、画像右(下)のように大きなものをキャッチすることができました。津軽平野の温泉は大抵が食塩泉かそれに類するものであり、新屋温泉のように硫化水素感の強いお湯もいくつか存在していますが、まさかこんなに大きな湯の華が浮遊している温泉もあるとは予測だにせず、この光景を目にしてかなり驚いてしまいました。ビジュアル面のみならず、室内にもふんわりとタマゴ臭が漂っていますから、温泉に硫化水素等が存在しているのは明白です。津軽の温泉って、ただ単に数が多いわけではなく、その質も多様で奥が深いんですね。
(上画像クリックで拡大)
ところがです。実に興味深いお湯だと感心しながら、湯上がりに分析表を穴が空くほど読んだのですが、硫化水素イオンもチオ硫酸イオンも遊離硫化水素もデータには表れておらず、摩訶不思議なことに総硫黄がゼロなんです。あれれ? あの湯の華やタマゴ臭ってどこから来ているの? ネット上で紹介されている以前のデータを拝見しますと、かつては2mg未満の総硫黄を有していたそうですが、現在掲示されているデータが分析された平成25年当時は、何らかの事情によってイオウの存在が消えてしまっているようです。源泉のコンディションによって多少の上下はありえますが、全く消えちゃうのは不自然ですね。
「満天の風呂」には露天風呂も付帯しており、周囲を塀で囲まれているため、景色は望めないものの、大きさも雰囲気も、大浴場「苹果の湯」より優っているように感じられました。お風呂の頭上には葦簀が張られており、湯浴み中はその隙間越しに空を見上げる形になります。「満天」とはその葦簀越しに見上げる夜空のことを意味しているのでしょう。
露天風呂では短い木の樋からお湯が熱めのお湯が落とされています。この樋の内側にはこびりつき防止のビニルシートが敷かれているため、内湯のような白い湯の華の付着は見られませんでした。でもお湯の良さは素晴らしく、大きさや雰囲気どころか、お湯が持つ味や匂い、そしてツルスベ浴感など、お湯が持つ個性面でも、「苹果の湯」よりこちらの方が濃くハッキリと感じられました。ホテル内のお風呂では同じ源泉のお湯を引いているものの、この「満天の風呂」が最も源泉に近いため、お湯の鮮度も濃さも損失が少ない状態で浴槽へ供給されているんだそうです。
お風呂の大きさを優先するなら「苹果の湯」、お湯の質を重視するなら「満天の風呂」を選択すると宜しいかと思われます。なお「満天の風呂」を日帰り入浴で利用する場合は、13:00~21:00(最終受付20:30)が受付時間となります。また宿泊客でも「満天の風呂」はチェックインから21:00まで、及び翌朝5:00~10:00までの時間制限があります。
大規模なホテルは管理の都合上、湯使いに難があるケースが多く見られますが、こちらのホテルは2つある浴場の両方で掛け流しを実践しており、しかもお湯の質が個性的であるという点で、利用価値の高い施設でした。お湯のみならず、ホテルとしてのクオリティもまずまずなので、津軽地方へおでかけの際には、弘前からちょっと足を伸ばしてこちらでゆっくり過ごすのも宜しいかと思います。
南田源泉
ナトリウム-塩化物温泉 51.5℃ pH8.2 湧出量測定不能(掘削動力揚湯) 溶存物質2.698g/kg 成分総計2.705g/kg
Na+:904.1mg(94.05mval%),
Cl-:1313mg(90.67mval%), Br-:4.6mg, I-:0.3mg, HCO3-:206.9mg(8.30mval%),
H2SiO3:171.6mg, HBO2:14.7mg,
加温循環ろ過なし
加水あり(源泉温度が高いので)
塩素系薬剤を添加(温泉水の衛生管理のため)
弘南鉄道弘南線・平賀駅より徒歩15分
青森県平川市町居字南田166-3 地図
0172-44-3711
ホームページ
日帰り入浴
大浴場「苹果の湯」10:00~15:00(最終受付14:00)
竹炭の湯「満天の風呂」15:00~21:00(最終受付20:30)
350円
(今回拙ブログで取り上げなかった貸切風呂は1200円/60分。平日15:00~23:30、土日祝10:00~23:00。2室あり)
ロッカー・ドライヤーあり
私の好み:★★★