温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

南田温泉 ホテルアップルランド 前編

2014年12月07日 | 青森県
単独行動を常とする私は、自分の背丈に合った宿を好むため、己の存在が埋没してしまいそうな大規模な宿泊施設を敬遠する傾向にあるのですが、食わず嫌いを繰り返しているばかりでは世界がいつまで経っても開けそうにないので、津軽地方に所用があった某日、この地方の温泉旅館では屈指の規模を誇る南田温泉「ホテルアップルランド」で一泊してみることにしました。


●外観・客室
 
リンゴ業者の大きな倉庫に挟まれながら、リンゴを象ったゲートを潜って敷地内へと入ります。ゲートの支柱部分は花弁になっていますが、桜の名所として有名な弘前のサクラなのか、はたまたリンゴの花なのかは不明です。どちらもバラ科で似たような花ですから、どっちに解釈しても良いのかもしれませんが、ホテルの名前や花弁の色から考えればリンゴと解釈するのが自然でしょうね。
立派な本館の上に聳えている巨大な仏像は「リンゴ大観音像」と仰るんだとか。


 
ガラス張りの正面玄関は宿泊者用で、日帰り入浴利用の場合は上画像の専用エントランスから入るようです。この日帰り入浴専用エントランス傍には足湯が設けられており、リンゴがプカプカ浮かんでいました。とにかくこちらのホテルはリンゴ尽くし。


 
ここで正直に告白しますと、いくら大きなホテルとはいえ、所詮は田舎の宿だから、ハード・ソフトの両面ともたかが知れていると侮っておりました。ところがドッコイ、館内は綺麗で構えもしっかりしており、スタッフの対応も実に丁寧で親切。ちゃんとしたシティーホテル並みのレベルであることに、良い意味で予想を裏切られました。大変失礼いたしました。

今回通されたのは4階の和室で、私のような一人客でも12畳のお部屋を用意してくださいました。貧乏性が骨の髄まで染み込んでいる私は、部屋の広さを持て余し、意味もなく運動してみたり、対角線上を何度も歩いて往復してみたりと、終始落ち着かずにソワソワしっぱなしでした。そんな情けない話はともかく、綺麗に清掃されたお部屋には旅館としての備品がひと通り揃っており、トイレも付帯されていますので、お風呂や朝食以外は部屋から出る必要ありません。
室内に備え付けの冷蔵庫には、ウェルカムスイーツならぬウェルカムアップルが一つ用意されていました。泊まった時期はリンゴの収穫期から何ヶ月も経っていたので、味には全然期待していなかったのですが、実際にナイフを入れて口にしてみますと、季節外れのリンゴにありがちなボケた食感は無く、シャキッとして実に美味しい状態が保たれていました。さすがアップルを名前に冠するホテルだけあり、おそらく特別な方法で冷蔵保管しているのでしょうね。


 
客室からの眺めは上画像のような感じ。周囲にはこのホテル以外に高い建物がありませんから、視界を遮られることはなく、平賀の市街やその向こうに連なる稜線まで、気持ちよく見晴らせました。


●朝食
 
 
今回は朝食付きのプランを利用しました。結婚式や各種イベントが催されるような大きなホールへ移動し、バッフェ式でいただきます。和風な装飾が施された会場には、朝食とは思えないほど多種多様な料理が並んでおり、和風洋風両方に対応していました。また多くの料理に県内産の食材を使っている点も嬉しいところです。


●大浴場「苹果の湯」

さて本題のお風呂へと話題を移しましょう。
館内には、大浴場「苹果の湯」、竹炭の風呂「満点の風呂」、そして貸切風呂(2室)の3種類があり、宿泊者は「苹果の湯」と「満点の風呂」を自由に入浴できます。ただし貸切風呂は宿泊者でも別途料金(60分で1200円)を要するため、今回は利用を見送りました。まずは大浴場「苹果の湯」から入ってみましょう。おみやげコーナーの前から伸びる通路を歩いて、浴場がある西館へ向かいます。


 
浴場前には広いホールがありますから、日帰り入浴利用でも湯上がりにゆっくり休憩できますね。
なお浴場名の「苹果」とは中国語でリンゴを意味し、ピングオ(ping2 guo3)と発音します。


 
木目調の脱衣室は、手入れがしっかり行き届いており、洗面台に揃えられたアメニティ類も充実しています。


 
広々として開放的な浴室。壁にはクリームの、柱にはグレーのタイルが貼られています。室内には多様な浴槽があるのですが、最も目立っているのが中央に据えられている真ん丸い主浴槽で、まるでプールみたいな規模です。この主浴槽の端には橋が架かっており(あれ? 洒落になってらぁ…)、洗い場はこの橋を境に前後に二分されていて、前後合わせて計13基のシャワーが取り付けられています。


 
主浴槽を反対側から捉えてみました。脱衣室への出入口の他、その左側にサウナなどが見て取れます。この主浴槽で目を惹くのが、オーバーフローを排出させる流路でして、まるで用水路のように幅の広い水路へ、浴槽から大量のお湯が捨てられていました。館内表示によれば、源泉温度が高いので加水されているものの、加温や循環は行われていないそうでして、この用水路状の排湯を見れば、放流式の湯使いであることは一目瞭然です。規模の大きなホテルでありながら、このようにれっきとした放流式の湯使いを実践している点は、一介の温泉好きとして大いに評価したいところです。


 
橋の反対側には小さな槽があり、打たせ湯のように上の方からお湯が落とされています。お湯の流れとしてはこの小槽が上流で、主浴槽が下流のような関係となっており、すなわち大きな主浴槽はここからお湯を受けているわけです。当然ながら上流側に当たるこの小さな槽は、主浴槽に比べて熱めの湯加減なのですが、お湯の鮮度感もこの小さな槽の方が優れていますので、私としては小さな槽の方が気に入りました。

お湯はほぼ無色透明で、甘塩味と出汁味を有し、磯の香りのような匂いと鉱物油っぽい匂いをほのかに漂わせています。またお湯の投入口では弱いながらもタマゴ風味(微かな硫化水素感)が得られました。なおお湯の衛生管理のために塩素系薬剤を投入しているそうですが、カルキ臭はほとんど気になりませんでした。食塩泉らしいツルツル&スベスベ浴感がとても心地良く、入浴中に自分の肌を何度も擦って、スベスベ感を楽しんでしまいました。


 
大小2つの円形浴槽の他、手前にも小さな円形槽があり、私の訪問日には「笹の葉風流風呂」と称して、入浴剤を溶かしたお風呂となっていました。このお風呂では常時入浴剤が投入されているわけではないらしく、深夜から朝にかけては単なる温泉槽となり、入浴剤のネームプレートも外されていました。


 
浴室奥には半円形の打たせ湯槽があり、飛沫が飛び散るのを防ぐためか、手前側に弓型の塀が立てられています。お湯が落とされる配管は3本設置されていますが、この日は1本しか出ておらず、しかもその勢いも弱かったので、打たせている気分にはなれませんでした。


 
露天風呂は竹垣を模したエクステリアに囲まれているため、景色を楽しむことはできず、塀越しに入り込んでくる風を感じる程度ですが、こちらの食塩泉は火照りが強くて熱が体に篭りますから、クールダウンするにはもってこいです。浴槽はL字形で、槽内はタイル張り、縁には黒御影石が用いられています。他の浴槽同様にお湯が掛け流されており、御影石の縁からは常時お湯が溢れ出ていました。リンゴ尽くしのホテルだけあって、湯船にはたくさんのリンゴがたくさん浮かべられており、湯船に浸かるとリンゴの香りが匂ってきました。この日プカプカしていたリンゴの品種は最もポピュラーな「ふじ」だったのですが、時期によって品種が変わるそうですから、例えば9月は「つがる」で10月は「紅玉」なんてことも考えられるのでしょう。

なおこの大浴場「苹果の湯」は、私のように宿泊すればチェックインからチェックアウトまで随時入浴できるのですが、日帰り入浴の場合は10:00~15:00(最終受付14:00)となっており、早いタイミングで入館しなければ利用できません。14:00以降の入館は、次回記事で取り上げる「満点の風呂」の利用となります。でも、個人的な感想を申し上げますと、お湯の個性は「満点の風呂」の方が面白いかもしれません。詳しくは次回記事にて。

後編に続く…
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