温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

蔵王温泉 川原湯共同浴場 2014年9月

2014年12月20日 | 山形県
 
私が温泉巡りを趣味にするきっかけとなった浴場のひとつである、蔵王温泉の川原湯共同浴場。
まだタイル張りのお風呂しか知らなかったかつての私は、浴槽の底がスノコ状になっていて、その直下から温泉が湧出しているという状況に驚き、温泉地の共同浴場ってこんなにスゴイものなのかと興奮したものです。あれから幾年が経ったことでしょう、その間にも川原湯には何度か通い、共同浴場ならではの素朴な風情と、足元湧出ならではのお湯の素晴らしさに、その都度酔いしれてきました。

その川原湯共同浴場は、温泉ファンの方でしたらみなさんご存知の通り、ちょうど2年前の2012年11月に全面改築されましたが、なぜかその後は蔵王に赴く機会が無く、先日(と言っても3ヶ月も前ですが)になってようやくその機会を得ることができたので、ネット上では更新後の姿を目にしているものの、実際にはどのように変貌したのか、自分の五感で確かめることにしました。

てっきり拙ブログでは複数回登場しているかとおもいきや、今回の記事を書き綴るに当たって過去の記事を調べたところ、なんと迂闊にも未掲載であることが判明。以前の記事を引っ張り出して、新旧の比較をすることができないので、ここでは2009年3月に私が撮った画像を載せて、比較することにします。
まず外観ですが、旧浴場はハの字の屋根を戴いていたのに対し、新浴場は正面側の屋根が一直線になっており、男女別の入口を守る破風の形状にかつての面影を残しています。左側が男湯で右側が女湯である点は従前通り。



蔵王の他の共同浴場と同様に更新後も無人であり、男女両浴室の入口の間に括りつけられた料金入れにセルフで湯銭を納めます。


 
リニューアル後の湯屋は、奥の方へ向かって屋根が放物線状の曲線を描いており、こうした構造を採用することによって、屋根の雪をできるだけ入口側へ落ちないようにしているのでしょう。なお屋根の雪がストンと落ちる湯屋裏手は、以前同様に余り湯の湯溜まりとなっていますから、これなら雪が勝手に融けてくれますね。実に合理的です。


  
従前同様に総木造の湯屋に入ると、リニューアル後の脱衣室も、木板で荷棚の枠を作っただけの至ってシンプルな造りであり、昔ながらの質素な佇まいにホッとしました。一見すると棚の数が少ないように思えるのですが、そもそも浴場のキャパは小さくて利用できる入浴者数は限られていますし、棚のひとつひとつは大きく確保されていますから、寧ろこのくらいで丁度良いんですね。
以前と変わったところといえば、上画像の押しボタンが新設されたこと。この浴場は夜10時で電子錠によって自動的に施錠され、その30分後には消灯されてしまうのですが、もし施錠後も館内にお客さんが残っていた場合は、消灯までの30分間にこのボタンを押せば、ドアが解錠されて退館できるわけです。なお夜10半の消灯と同時に電子錠の電源も落ちちゃうそうですよ。閉館時間間際の利用では、閉じ込められないように注意しないといけませんね。


 
リニューアル後の浴室も従前の浴場のスタイルを踏襲したオール木造となっており、まだ建てられて2年しか経っていませんから、白木の美しさがしっかり映えていました。新旧両浴室を比較しますと、窓の配置など細かな部分で差異が見受けられますが、ひと目でわかる変更点としては、女湯と仕切り壁が挙げられるでしょう。以前は曇りガラス(というか白いアクリル板)が嵌められていましたが、現在はそのような小細工は廃され、他の部分と同様の板壁に統一されています。



浴室と脱衣室との仕切りには、ガラス窓の天地寸法がしっかり確保された引き戸が採用されています。以前も透視性の良い引き戸で両室が仕切られていたように記憶しているのですが、当然ながら更新後は引き戸の滑りが改善されました。脱衣室にはロッカーが無いのですが、この引き戸の透視性によって、防犯効果が期待できそうです。


 
床そばの低い側壁には、細長いルーバーが設けられています。もちろんこれは硫化水素中毒を防ぐための通風口(換気口)ですね。床にはもう一箇所、外気が入るこんでくる明るい穴があるのですが、これはお湯を湯屋外の湯溜まりへ捨てる排水口であり、後述する浴槽から溢れ出たお湯は、床の一部を白く染めた後、その穴から惜しげも無く流下していました。


 
川原湯の象徴であるスノコ状の浴槽は、新しい浴場でもキッチリと残してくれていました。これが無くちゃ川原湯じゃありませんよね。一応2009年3月時点のリニューアル前の画像も一緒に並べておきますが、以前の画像ではお湯が白濁しており、槽内の様子がわからなくてゴメンナサイ。
浴槽の大きさはおおよそ4人サイズ。川原湯のお湯はコンディションによって透明だったり強く白濁したりと、猫の目のようにその姿を変貌させるのですが、先日訪問時にはスノコの下まではっきりと目視できるほどの透明度があり、底には大量の湯の華が沈殿していました。


 
上述のように女湯との仕切り塀は単なる板塀になってしまいましたが、槽内では以前と同様に格子で区切られており、こちら側から向こうの様子が見て取れます。これまでの本文中では、浴槽の造りに関して、底面の様子から「スノコ状」と述べてまいりましたが、実際にはお湯が自然湧出する池のような場所の上に格子でできた浴槽を載せているような感じなので、スノコというより格子風呂と称した方が相応しいかもしれません。

いかにも蔵王のお湯らしく、明礬臭と硫化水素臭が漂うお湯を口にすると、強い酸味によってたちまち口腔が収斂します。温度調整のために塩ビ管から常時加水されているものの、湯加減は若干熱い44℃ほど。その熱さとお湯の力強さのために長湯はできず、短時間で湯船に出たり入ったりを繰り返しました。この時は混雑していなかったためか、鮮度感も素晴らしく、まだ新しさの残る白木の格子風呂で、パワフル且つ濃厚な川原湯のお湯を味わうことができました。やっぱり川原湯は最高ですね。


川原湯共同浴場源泉
酸性・含鉄・硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 48.1℃ pH1.45 蒸発残留物3720mg/kg 
H+:36.1mg, Na+:75.6mg, Mg++:77.6mg, Ca++:114.4mg, Al+++:298.4mg, Fe++:89.5mg,
F-:23.9mg, Cl-:783.3mg, Br-:4.1mg, I-:0.5mg, HSO4-:2661mg, SO4--:1975mg,
H2SiO3:146.7mg, CO2:387.0mg, H2S:18.4mg,
加水あり(源泉温度が高いため)
(昭和63年10月21日)

山形駅より山交バスの蔵王温泉行で終点(蔵王温泉バスターミナル)下車、徒歩4~5分(約350m)
山形県山形市蔵王温泉43-3  地図

6:00~22:00
200円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (6)
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