師走だというのに、半年前の初夏の話題で申し訳ございません。
前回記事で取り上げた「ふけの湯」から岩手県盛岡市方面へ抜けるべく、八幡平アスピーテライン(秋田・岩手県道23号線)を東進して途中から樹海ライン(岩手県道318号線)に入り、旧松尾村方面へと山を下っていたのですが、この樹海ラインの沿道には超有名な野湯がありますので、思いつきですが、ちょっと立ち寄って現状を窺ってみることにしました。まずは、この有名野湯や藤七温泉の旅館を見下ろす、見晴らしの良いところで立ち止まり、辺りの様子を眺望します。7月だというのに山にはまだ雪が残っていました。その下で湯気を朦々と上げている野湯周辺には、人影が見当たりません。よしよし、今回もお風呂を独り占めできそうだ…・
さらに樹海ラインを下って、皆様おなじみの有名野湯「奥藤七温泉」最寄りの路肩に車を止めます。
私がここへ立ち寄るのは4度目かな。道路から野湯までの斜面にはところどころに泥濘があるので、念の為、ゴム長靴に履き替えました。ところが運が悪いことに、私が斜面を下り始めると、先程上がったばかりの雨が再び降り出し、しかも結構雨脚が強かったので、慌てて車に戻って雨合羽を羽織りました。こりゃ先行き怪しいぞ…。
手軽に入浴できるポイントは、沢を挟んで2つあります。手前側、つまり道路側の斜面下にある湯だまりでは、45.4℃と辛うじて入浴できる温度だったのですが、湯面には虫の死骸がたくさん浮かんでいますし、お湯の白濁が強くて底の様子もわからなかったので(何が沈んでいるかわからない…)、ここはパスすることに。
沢の対岸へ渡って、大きな湯だまりへ。ネットにアップされている皆さんの入浴記を拝見しますと、大抵はこの大きな方で湯浴みなさっているようですね。かく言う私も、以前拙ブログでも当野湯を取り上げた際には、この湯だまりで入浴しております(その時の記事はこちら)。以前記事にした際の湯溜まりは36.3℃だったのですが、今回は湯気の立ち上り方が激しく、また硫化水素臭も強く、湯気が立ち込める湯溜まり付近はサウナのような熱気に包まれていました。湯気が濃いのは外気温の影響もあるのでしょうけど、状況から推測するに、明らかに湯温が高そうです。
フツフツと音を立てて温泉が湧出している箇所に温度計を突っ込んでみたところ、59.4℃という高温が計測されました。湯気が熱くて、温度計を持つ手が火傷しそう…。これじゃ入浴は困難かな。
湯溜まりを一周して、湧出が盛んなところから離れたところで再度温度を計ってみたのですが、最も低くて49.6℃でした。この日は地熱のご機嫌が良くて、熱放出が出血大サービス状態だったのでしょうけど、過ぎたるは及ばざるが如し、熱過ぎたら意味がありませんね。もっとも銭湯など一般的なお風呂の49℃でしたら数秒だけ入れる自信があるのですが、一般的なお風呂と、こうした地熱地帯に湧く野湯の49℃とは、同じ数値でもワケが違います。こちらの場合は、あくまで計測点がその温度であるにすぎず、あちこちから熱湯が湧いているこの湯溜まりでは、底はもっと熱い可能性だってあるわけですね。迂闊に入ったら大火傷必至。
湯溜まりには塩ビ管で沢から水が引かれているのですが、熱の押し売り状態であったこの時は、多少の水が差されたところで、熱いお湯はビクともしません。でも、加水ポイントの直下は浅くなっていたので、そこを木の棒でグルグル掻き混ぜたところ、辛うじて47℃まで下げることができました。この時の私にできることが、これが精一杯。
その場で脱衣して湯浴みを試みましたが、浅いので臍下までしか浸かれず、腰湯で我慢することに。これとて10秒もしないうちに再び50℃以上に戻ってしまいますから、落ち着いて入れたもんじゃありません。雨が降り続く中、数秒だけお湯に浸かり、熱さに耐え切れずに一旦出てからお湯をかき混ぜ、再びお湯に浸かり…、なんてことを数回繰り返しているうち、山の上から地熱地帯の窪地に向かって一陣の風が吹き下りてくるではありませんか。周囲の火山ガスをかき集めるように吹き下りてきた風を正面からモロに受けた私は、急に頭痛と気持ち悪さに襲われたので、慌ててその場から退散しました。
私個人としては、東北に数ある野湯の中でも、ここはアクセスがかなり楽で、比較的容易に湯浴みが楽しめる場所であると認識していたのですが、地熱のコンディションはその時々によって異なるわけであり、運次第では私のようにショッパイ想いをするはめになるのでしょうね。日頃の行いが祟ったのかも。野湯あそびも一筋縄ではいかないことを痛感させられました。
野湯につき温泉分析表なし
岩手県八幡平市松尾 (地図による場所の特定は控えさせていただきます)
冬期は県道318号線(樹海ライン)が通行止になるためアクセス不可
野湯につきアクセスできればいつでも入浴可能
無料
私の好み:今回は評価せず