温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

見立の湯 2014年10月再訪

2014年12月26日 | 岩手県
 
和賀山塊の奥地で密やかにお湯を湛える露天風呂「見立の湯」。拙ブログでは4年前に一度取り上げておりますが(その記事はこちら)、その際にはお湯が完全に抜かれており、せっかく現地まで辿り着いておきながら、入浴を果たせずに悔しい思いをしました。是非今回は4年前の雪辱を果たすべく、満を持しての再訪です。
道程は以前と全く変っていないので、特に地図を確認することなく、記憶のまま車を走らせました。具体的には、錦秋湖畔の集落から伸びる一本道を南下し、途中の分岐を鷲合森方面へそれて、林道夏油湯田線へと入ります。なお林道名に「夏油」とありますが、道は途中の鉱山跡で途切れているため、夏油方面へ抜けることはできません。


 
アスファルト舗装された道を快適に走行してゆくと、やがて舗装が終わる箇所に行き着きます。私の訪問時、この舗装終了地点には工事関係者用のプレハブ小屋が建てられており、バリケードが道路を塞いで、この先は車両通行止となっていました。前回訪問時はこんな小屋はありませんので、最近この先で何らかの工事が始まったのでしょう。なおバリケードの脇には車ですり抜けられそうな余裕がありましたが、念の為に私は道の幅員に余裕がある場所で車を止め、ここからは徒歩で向かうことにしました。


 
国有林の中を貫く砂利の林道は、工事に伴いよく整備されており、FFの乗用車でも楽に走行できそうな感じです。明らかに前回訪問時より路面コンディションは良好です。



前回訪問時には見られなかったもののひとつが、沿道の山林に築かれた蛇籠の排水路です(上画像)。砂利が真新しいので、つい最近設けられたのでしょう。この奥の山間では、三菱の鷲合森鉱山が昭和47年まで操業されており、黄銅鉱などを採掘していたそうです。鉱山というものは閉山後もズリや廃水の処理、掘削後の斜面や地盤対策など、長年にわたって諸々の後処理が必要になりますから、先程の工事小屋はそうした鉱山の対策工事を行っているのでしょう。閉山から40年以上が経っているのに、いまだに後処理をしなくちゃいけないのですから、鉱業って後代に負債を残す面倒くさいお仕事ですね。

この鷲合森だけでなく、現在の西和賀町域にはかつて多くの鉱山が操業されており、地中のグリーンタフに存在する黒鉱(黄銅鉱など)を採掘していたため、鉱山開発に伴ってオマケのような感じで温泉も発見され、現在の温泉郷が形作られていったようです。そういえば、湯田湯川温泉へ向かう手前の斜面には、40年ほど前に閉山した土畑鉱山の跡地が、当時の形のまま廃墟になっていますね。グリーンタフの黒鉱を掘っていたら硫酸塩の温泉も湧き出てきたエリアといえば、秋田県の大館周辺がその典型例であり、この湯田温泉エリアと同じく無色透明の硫酸塩泉であることも共通しています。
東北の温泉と鉱山開発は、切っても切れない関係がありますね。


 
さて歩き始めてからちょうど20分で、「見立の湯」への杣道入口までやってきました。前回訪問時は綺麗な状態だった看板も、4年の間に雪で潰されちゃったのか、一部のシールは剥がれ、上部を中心にしてかなり曲がっています。看板の下には4WDの黒い軽自動車がとまっていますが、もしかしたら「見立の湯」に先客でもいるのかな。


 
踏み跡がはっきり残っている杣道で、沢に沿う形で山の斜面を進んでゆきます。ところどころ滑りやすいところがあったので、慎重に歩みを進めたのですが、この道ってこんなに歩きにくかったっけ?。


 
コンクリ躯体の謎の物体「ニセ見立」を過ぎ、杣道を更に奥へ。


 
杣道に入ってから約6~7分で、お目当ての「見立の湯」が下方に見えてきました。
今回こそはお湯が溜まっていてほしい! そう願いつつ、湯船へと近づいて行きますと…


 
2つある浴槽のうち、一方にお湯が張られていることを確認。「見立の湯」はいつも片方しかお湯が溜められていませんから、これでいつも通りの姿です。
「あぁ、よかった…」
ほっと胸をなでおろします。4年越しで念願が果たせそうです。



川側から見たお風呂の様子。
当地を訪れた他の温泉ブロガーさんが仰られているように、鷲合森鉱山の操業時、ここには鉱山関係者の施設があり、上屋は解体撤去されたのですが、湯船だけが残って現在に至っております。大人数を収容する建物があった場所ですから、今でもこのまわりはちょっとした広場になっているのですが、その一角には火を焚いた跡があり、ゴミも少々散らかっていました。誰かしらがここで野営したのかな。
そういえばこの時は人影を全く見ませんでした。先程入口に止まっていた黒い車の持ち主は、温泉ではなくキノコ狩りでもしているのかな。


 
いきなり裸になって湯船に飛び込んだところで、張られているのがお湯じゃなくて水だったら意味がありません。はやる気持ちを鎮ませながら、トポトポとささやか音を立てている湯口へ、持参した計器類を当ててみますと、温度は41.3℃、pH=6.8と表示されました。なかなか良い湯加減ではありませんか。


 
この湯船は有志の方が定期的にお手入れしてくださっているらしく、山の中に晒しっぱなしにしては、さほど汚れておらず、衛生的に野湯が苦手な方でも入れそうな感じ。
一切の濁りが無い、美しく透き通ったお湯です。湯船では38.6℃でした。


 
温度も問題ないことを確かめて、無事入浴です。クリアに澄んだお湯は、無色透明でほぼ無味無臭ですが、微かに芒硝や石膏らしい感覚を帯びていました。優しくマイルドな肌触りが実に心地よく、とってもエアリーで軽やかです。優しい浴感もさることながら、入浴中の泡付きもなかなか。浴感や泡付き、そして不感温度帯に近い湯加減であることが相乗効果を生み、肩まで浸かると微睡んでしまい、あまりの気持ちよさゆえ、1時間近くも入り続けてしまいました。
このお風呂をお手入れしてくださっている方に感謝を申し上げます。


泉質不明

岩手県和賀郡西和賀町

私の好み:★★★
コメント
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