温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

上山温泉 ホテル山内

2014年12月23日 | 山形県

上山温泉の湯町地区では、鶴の休石や足湯を中心にして、狭い範囲に中小規模の温泉旅館が肩を寄せ合ように営業していますが、今回はその中の1軒である「ホテル山内」にて日帰り入浴してまいりました。昭和後期の匂いが残るALC造と思しきこのお宿は、名前こそホテルですが、どちらかといえば民宿に近い中小規模の旅館です。近隣の同規模旅館は木造の和風建築ですから、現代的な造りであることを活かし、敢えてホテルと名乗って差別化を図っているのかもしれませんね(あくまで私の邪推ですけど)。


 
玄関にさげられた歓迎札の左隅に「外来入浴500円」と書かれているのを確認した上、フロントで声を掛けて入浴をお願いしますと、宿の方は「500円ですが宜しいですか」と聊か不安げな面持ちで念を押してきました。同じ町内の湯町共同浴場でしたら150円で入浴できますから、350円の価格差を配慮してくださっているのか、はたまた日帰り入浴客の存在自体が稀有なのか。鈍感な私にお宿の方の気持ちを推し量ることはできなかったのですが、私としては何ら問題ありませんので「はい、よろしくお願いします」と答えたところ、ようやく表情を和らげてお風呂へと案内してくださいました。


 
浴室はロビーの奥、フロント前にあり、男女別の内湯が一室ずつです。脱衣室はシンプルながら、ウッディな内装からはぬくもりが伝わってきます。お宿の方は、脱衣室にあるタオルを使っても構わないと仰って下さいましたので、遠慮無く一枚使わせていただきました。


 
芒硝臭と石膏臭が混ざりながらふんわりに香る浴室は、壁はレンガ色で、床はワインレッドと、暖色系のタイルでまとめられています。洗い場にはカランが3基並んでおり、うちシャワー付きは2基。シャンプー類も備え付けられています。この日の清掃が済んでからの湯浴み客がまだいなかったのか、訪問時は腰掛けや桶がきちんと整頓されていました。



暖色系の浴室の中で、スカイブルーの浴槽はとても目に鮮やかであり、お湯の透明度を際立たせていました。容量としては4~5人サイズ。縁からはお湯が静々とオーバーフローしています。もちろん湯使いは放流式です。湯面は室内の光を青白く反射し、槽内の黒い目地は湯面が揺れる度に虹色の輝きを放っていました。後述するように、湯口まわりは真っ白な析出がコンモリ付着しているのですが、浴槽は付着する隙が無いほど、丁寧かつこまめに清掃されているのでしょう、黒い縁がうっすら白く覆われている程度で、これといったこびりつきは見られず、隅々まで綺麗に保たれています。


 
こちらのお風呂のシンボルである石膏の裸婦像。その足元からは直に触れないほど熱いお湯が浴槽へ落とされていました。その周りには真っ白な析出がビッシリこびりついており、温泉が創り出す造形美を目にした私は、思わずニンマリしてしまいました。ニンマリ…。誤解なきよう、ここで断言します。私は決して裸婦像の硬直した乳首を見て興奮したわけではない。心が吸い込まれそうなほど清らかに白い硫酸塩の析出にしか興味が無かったと!

そんなくだらないことはともかく、お湯は無色澄明で、芒硝味と石膏味の他、甘塩味が感じられます。事前に仕入れた情報によれば、こちらのお湯は加水されているとのことでしたが、実際には上述のように触れないほどの熱さがあり、その代わりお湯の投入量が絞り気味でしたので、私の訪問時は加水せずに(されていたとしてもごく少量)、投入量で湯加減を調整していたものと思われます。この加減が実に絶妙でして、湯船は42~3℃というとても入りやすく気持ち良い湯加減がキープされていました。湯船に浸かると、ツルスベとキシキシがせめぎあいながらも、トロミが仲介して程良く角が取れてまろやかになり、却って軽やかさすら覚えるほど、お湯が優しくマイルドに肌に乗ってきました。投入量こそ絞り気味ですが、タイミングが良かったのか鮮度感が素晴らしく、絶妙な湯加減の影響もあり、一度入ると出られなくなる、後を引く心地よい浴感が楽しめました。
シンプルなお風呂であるがゆえに、上山温泉のお湯の良さが引き立っている、クオリティの高いお風呂でした。


上山地区1号源泉・上山地区2号源泉・上山地区3号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 64.3℃ pH7.9 蒸発残留物2598mg/kg 溶存物質2529mg/kg
Na+:523.1mg, Ca++:329.1mg,
Cl-:809.8mg, Br-:2.2mg, SO4--:755.1mg,
H2SiO3:58.9mg,
(平成22年3月19日)

上山地区3号源泉
ナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩温泉 66.8℃ pH7.8 502L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質2600mg/kg 成分総計2615mg/kg
Na+:523.3(57.78mg), Ca++:323.4mg(40.97mval%),
Cl-:822.9mg(56.89mval%), Br-:2.3mg, I-:0.2mg, SO4--:815.5mg(41.62mval%),
H2SiO3:61.0mg,
(平成21年10月17日)

JR奥羽本線(山形新幹線)・かみのやま温泉駅より徒歩15分(1.2km)
山形県上山市湯町4-10  地図
023-672-0111

日帰り入浴10:00~16:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
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