温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

東鳴子温泉 中鉢温泉 2016年4月再訪

2017年01月20日 | 宮城県
 
鳴子温泉郷では多様な泉質の温泉が湧出していますが、東鳴子温泉と川渡温泉の境界に当たるエリアは、私が大好きなモール泉系重曹泉の分布域であるため、鳴子の中でも特に贔屓にしたくなるエリアです。今回取り上げる「中鉢旅館」は、拙ブログで約6年前に取り上げたことがありますが(当時の記事はこちら)、久しぶりに飴色の重曹泉に入りたくなったので、立ち寄り入浴で再訪することにしました。余談ですが、中学と高校で私と同窓だった中鉢君は、お父さんが仙台出身だと言っていたのですが、全国的に見れば珍しい中鉢さんという姓は、旧仙台藩領に多い苗字なのでしょうか。
駐車場に車を止め、平屋の別棟を貫く通路を抜けて、母屋の玄関へと向かいます。


 
本館の玄関周りは前回取り上げた時とほとんど変わっておらず、その安定性にホッとします。でも玄関近くにある源泉前の蹲踞には、かつては筧からチョロチョロとお湯が注がれていましたが、今回訪問時はそれが止められていました。



帳場のカウンター脇に設置されている券売機で料金を支払い、廊下を進んで浴室へ。


 

総木造の浴室には太い柱が立ち、その柱に支えられた高い天井には立派な梁が組まれています。床には十和田石が敷かれているので、足から伝わる感触が良好です。静かで品の良い、落ち着いた趣きのあるお風呂です。浴室の片側には洗い場が配置されており、真湯の出るシャワー付きカランが5基一列に並んでいました。


 

内湯の浴槽は(目測で)2.5m×4mの大きな四角い石風呂。湯口から間断なくお湯が注がれており、浴槽縁に2ヶ所ある切り欠けからお湯が溢れ出ていました。そして湯口や切り欠けなどには薄っすらと白い湯の華が付着していました。完全放流式の湯使いですが、投入量をうまく塩梅することによって、湯船は42〜3℃という入り応えのある湯加減に調整されており、肩までお湯に浸かると思わず「ふぅ」と息を漏らしてしまいました。


 

露天風呂も以前訪問時と変わりありません。東屋で屋根掛けされた日本庭園に岩風呂が設えられ、石囲みの湯口からお湯がふんだんに供給されています。5〜6人サイズのこの露天風呂は、内湯同様に放流式の湯使いですが、外気の影響を受けるためか、内湯よりもぬるくなっていました(私の体感で40℃前後か)。内湯は少々熱めですから、長湯するには露天の方が良いかもしれません。温泉成分の付着により、湯口の流路は灰白色に染まっていました。

前回取り上げた馬場温泉の近所に位置しており、いずれも泉質名は純重曹泉で、お湯の特徴は総じて言えば似たような感じですが、細かく見てゆくといろんな違いに気付きます。まず見た目ですが、馬場温泉では濃い紅茶色であるのに対し、こちらは琥珀色あるいは飴色と表現すべき色合いに微濁しています。そして湯中では同色の細かな湯の華が浮遊しています。泡付きに関しては、馬場温泉の1号源泉(外の湯小屋)と2号源泉(内湯)の中間といった感じで、1分以上浸かっていると肌に気泡が少しずつ付いてきました。湯面からは油性インクのようなアブラ臭と木材臭をミックスしたような香りが漂い、お湯を口に含むと口腔粘膜がイガイガする焦げたような苦味、重曹的清涼感、そして少々の甘味が感じられました。湯に浸かるとツルツルスベスベの滑らかな浴感に包まれ、湯上がりは粗熱の抜けが良く、さっぱり爽快な気持ち良さが持続しました。立派な浴室と露天の両方に入れ、しかもツルスベの重曹泉で湯上がり爽快という、私の好みのストライクゾーンど真ん中に嵌る素晴らしいお湯でした。


石割の梅源泉
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 50.3℃ pH7.1 62.8L/min(掘削自噴) 溶存物質1130.4mg/kg 成分総計1265.4mg/kg
Na+:215.8mg(80.67mval%), Ca++:18.8mg, Mg++:7.4mg, Fe++&Fe+++:1.0mg,
Cl-:16.7mg, HS-:0.2mg, S2O3--:0.2mg, SO4--:55.9mg(9.97mval%), HCO3-:589.5mg(83.06mval%),
H2SiO3:188.2mg, CO2:134.8mg, H2S:0.2mg,
(平成21年11月4日)

JR陸羽東線・鳴子御殿湯駅より徒歩25分(2.0km)
宮城県大崎市鳴子温泉要害38−5  地図
0229-84-7951
ホームページ

立ち寄り入浴11:00〜17:00
500円(湯めぐりシール使用不可)
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東鳴子温泉 馬場温泉の内風呂

2017年01月18日 | 宮城県
 

鳴子の馬場温泉といえば、敷地内の湯小屋(左下or最下画像)がマニア垂涎の極上湯として有名で、私も何度かお世話になっていますが、お宿の内湯には何年もの間ご無沙汰でしたので、鳴子へ立ち寄った某日、久しぶりに内湯で日帰り入浴することにしました。


 
鳴子の湯めぐりチケットを片手に玄関を入って入浴をお願いしますと、スムーズに対応してくださいました。



フローリングの館内は明るく綺麗。浴場出入口は帳場の右斜め前。男女が隣り合わせで並んでいます。
クランク状に折れ曲がっている脱衣室を抜けてお風呂へ。


 
浴室に入った途端、芳しいモール泉の香りに包まれました。白いタイル張りの室内窓側に後述する浴槽が据えられ、その手前右側に洗い場が配置されています。洗い場には真湯の出るシャワー付きカランが3基並んでいました。



浴槽はほぼ三角形ですが、細かく観察しますと野球のホームベースを歪めたような5角形をしており、7〜8人は入れそうなサイズを有しています。3mほどの手前側長辺には木材が用いられており、見た目に柔和な印象を与えていました。三角形の頂点に当たる最奧部にはお湯の排出口が口を開いており、浴槽のお湯は全量がそこから流れ去ってゆきます。湯使いは完全掛け流し。


 
室内のタイルはホワイトですが、浴槽内にはグレーのタイルが採用されており、お湯は紅茶のような濃い色を帯びているため、槽内底面が視認しにくく、またツルスベの強い泉質ゆえ滑りやすいので、足元を慎重に確認しながら湯船に入りました。
投入口からは絶え間なく温泉が投入されており、湯気とともに先述の芳香を放っています。紅茶色の湯中では同色系の薄くて細かい湯の華がチラホラと舞っていました。外の湯小屋に張られているお湯は馬場の湯1号という源泉ですが、こちらはそれと異なる馬場の湯2号源泉であり、1号泉と同じくモール泉の特徴がよく表れているものの、1号泉との決定的な違いは泡付きの多寡で、全身気泡に覆われる1号泉と異なり、この2号泉ではうぶ毛に細かな気泡が少々付着する程度なので、1号泉のアワアワを体感しちゃうと、ちょっと面白みに欠けるかもしれません。でも、ツルツルスベスベの大変滑らかな浴感や、燻した木材を連想させる芳醇な香り、そして口腔や喉の粘膜に苦味が残るような焦げ味がはっきりと感じられ、湯上がりの爽快感も極上。今回の入浴を通じて、泡付きを除けば決して1号泉に引けを取らない素晴らしいモール泉であることを再確認することができました。


馬場の湯2号
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 48.0℃ pH6.9 溶存物質1573.5mg/kg 成分総計1087mg/kg
Na+:315.5mg(83.10mval%), Ca++:20.0mg(6.06mval%), NH4+:12.0mg, Mg++:8.3mg,
Cl-:53.1mg, I-:1.4mg, HS-:0.2mg, S2O3--:0.7mg, HCO3-:915.8mg(88.55mval%),
H2SiO3:199.8mg, CO2:195.0mg, H2S:0.2mg,
(平成26年11月6日)
加水加温循環消毒なし

JR陸羽東線・鳴子御殿湯駅より約15分(1.2km)
宮城県大崎市鳴子温泉字馬場102  地図
0229-83-3378

11:00~20:00(土曜は15:00まで)
500円(湯めぐりチケット2枚)
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり

私の好み:★★★
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

北投温泉 景泉浴室

2017年01月17日 | 台湾
 
前回記事に引き続き、昨年ブログで紹介し忘れた台湾の温泉をピックアップ致します。
台北市街の超有名温泉地である北投温泉は、あくまで私の個人的見解ですが、宿泊でも日帰り入浴でも、快適だけど極端に高いか、あるいは安いけど極端に狭い(あるいは古い)かのいずれかに分かれる傾向があるようです。昨年の某日に台北市内で滞在していた時、夕食を済ませてホテルへ戻る前に強酸性のお湯で身を引き締めたくなったので、MRT(地下鉄)で北投へ向かったのですが、単にひとっ風呂浴びるだけなので、後者に属する温泉施設を利用することにしました。その時訪れたのは、地熱谷の入口に建つマンション1階の「景泉浴室」です。駅から徒歩圏内で且つ未訪問であるという点でこちらを訪れたのでした。個室風呂専門の施設です。


 
お隣には以前このブログで取り上げたことのある「新北投温泉浴室」があり、こちらと同じように個室風呂を専業としているのですが、「新北投温泉浴室」の個室(一人用)は130元であるのに対し、こちらは150元と20元高いためか、宵の口だというのにお客さんの姿は見当たらず閑散としていました。個室には最もシンプルな個人湯(一人用)の他、二人用や家族用など利用人数に合わせた個室が用意されている他、花崗岩浴室なるものもあり、料金設定は普通の個室の倍となっていました。お風呂で花崗岩ということは、つまり御影石ということかな?
番台の前には「艶景美泉」と記された朱塗りの額が掲げられていますが、決してお風呂から景色が眺められるわけではありませんので悪しからず。


 
受付の前には天然温泉である証が掲示されていました。またカウンターの後ろには、料金表と並んで「石鹸は使わないで」という文言が掲示されていたのですが、北投の温泉は強酸性で石鹸が中和しちゃいますから、使用禁止どころか、使おうと思っても使えません。


 
カウンターでテレビを見ていたおばちゃんに入浴したいと申し出て料金の150元を支払うと、たくさんの個室が並ぶ薄暗い廊下を進んで、その中の一室へと案内してくれました。


 
浴室は台湾の個室風呂によくある典型的な構造。タイル張りの狭い浴室いっぱいに一人サイズのFRP製バスタブが据えられ、ドア脇には小さな棚、そしてドア内側には衣服を引っ掛けるフックが取り付けられていました。シャワーなどは無いので、桶でバスタブのお湯を直接汲んで掛け湯することになります。なお、室内に靴を置く場所は無く、掛け湯をしたら床は悉くビショビショになってしまいますので、靴はドア外側の廊下に置いておきましょう。
なお(上画像でも写っていますが)ドア内側に表示されているように、利用時間は40分間です。客が入室すると、おばちゃんが番台のホワイトボードに各室の終了時間を書いて、40分を超えないよう時間管理していました。


 
こちらの貸切風呂は利用する度にお湯を張り替えるため、入室時のお風呂は空っぽです。利用時間は限られていますから、入室してすぐにコックを開け、備え付けのスポンジで槽内を軽く洗ってから、栓をしてお湯を張りました。入浴できる嵩まで溜まるのに、5分強は要しました。



コックから吐出される時点の温度は41.6℃でしたから、湯船ではさらにぬるくなります。配湯や貯湯される過程で冷めちゃうのかな。温度はいまひとつ物足りませんが、さすが北投の青磺だけあり、pH計はpH1.18という強酸性を表示しました。日本では草津温泉や玉川温泉など遠方まで行かないと入れない強酸性のお湯が、台北では市街地で入れるのですから、台湾の温泉環境ってすごいですね。お湯からは酸っぱい匂いがほんのり香るものの、酸が強すぎてガスがお湯から遊離できないのか、無臭と言っても差し支えないほど匂いはかなり薄い状態です。しかしながら、お湯の雫がちょっとでも口に入ると、口腔の粘膜が一気にキュッと収斂する強烈な酸味が広がり、酸味のみならず、塩味、渋み、えぐみなど様々な味覚が波状攻撃のように粘膜を刺激してきました。このお湯を口に含んだら、歯が溶けちゃうかもしれませんね。
湯中では強酸性のお湯らしいヌルヌルを伴うツルスベ浴感がはっきりと全身に伝わり、肌がツルッと生まれ変わったかのような感覚になりました。天然のケミカルピーリングですね。でも湯上がりからしばらく経つと少々ベタつきます。シャワーなど上がり湯が無いため、強酸性のお湯が肌に残るんですね。この施設に限りませんが、肌の弱い方に北投温泉は奨められません。


 
余談ですが、以前拙ブログで取り上げたことのあるお隣の「新北投温泉浴室」は、ブログで紹介した当時は温泉施設専業でしたが、その後リニューアルされたらしく、昨年春の時点で表の姿がコンビニ「Hi-Life」に変わっており、コンビニのレジが温泉の受付となっていました。何らかのお店と兼業する温泉施設は日本でもたまに見かけますが、コンビニ兼業の温泉は珍しいですね。


氯化物硫酸鹽泉(直訳すると塩化物硫酸塩泉) 40.5℃(※) それ以外のデータ不明
(※)「温度」としか表記されておらず、源泉温度か使用位置温度か不明


MRT新北投駅より徒歩10分弱(約700m)
台北市北投區中山路30號
8:30〜24:00 無休
個人池(一人用)150元/40分、双人池(2人用)300元/40分など
ドライヤー(有料)あり

私の好み:★★
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

礁渓温泉 春和日式大浴池

2017年01月15日 | 台湾
 
前回取り上げ礁渓温泉公園「森林風呂」に入った前日の夜も、私は当地で温泉に入っていました。温泉街のホテルが建ち並ぶ徳陽路を歩いていると、「湯囲溝温泉公園」のちょうど真裏あたりに福崇寺というお寺の黄色い看板が立っているのですが・・・


 
お寺の看板のまわりをよく見ますと、温泉の湯気にまみれながら「春和泡湯」と書かれた小さな看板が数枚立てられていますね。今回の目的地はこの小さな看板で案内されている温泉です。お寺の境内を抜けてその奥へと進みます。


 
実はお寺の看板の先に車専用の出入口もありますので、わざわざ薄暗い境内を抜ける必要はないのですが、ルート的にショートカットできますし、ネタとして面白いので、敢えて境内を歩いてみたのでした。車道と合流し砂利敷きの敷地内を歩いていきますと、やがて左手の奥に受付棟が見えてきました。軒先には浴場名が書かれた赤い提灯がぶら下がっていました。



こちらの施設では、後述する大衆池(大衆浴場)の他、個室風呂もたくさんありますので、誰にも邪魔されずに湯浴みしたい場合は個室が良いでしょう。ネット上の情報(たとえばこちらのブログ)によれば、双人湯(2人用・180元/40分)、そしてキャパの大きな温馨湯・貴賓湯などがあり、双人湯はパーテーションで仕切られた狭い個室に浴槽があるだけの風情に欠けたお風呂ですが、温馨湯・貴賓湯は広々しているので、家族団欒の湯浴みをするには良さそうな雰囲気です。ただ、ネット上の画像を見る限り、多少の飾りつけはされているものの、どのお風呂も殺風景。しかも40分という短時間ですから、コストパフォーマンス的にはちょっと難ありかな(温馨湯は400元/40分・貴賓湯は800元/40分)。なお、どの貸切風呂も2人以上で利用するのが、こちらのローカルルールとなっているようです。


 
受付棟の隣には吹きさらしの化粧台が設置されており、有料のドライヤーが備え付けられていました。このオープンで大雑把な感じが、いかにも台湾らしいところ。



敷地の最奥に、周囲を鋼板で、そして上部を大きな屋根で覆われた2つの区画があり、右が女湯の大衆湯、左が男湯の大衆湯というように分かれていました。こちらの大衆湯は裸で入る露天風呂です。しかも料金は70元。一人で旅をしている私は迷うことなくこちらを利用することにしました。
「男湯」と書かれたドアを開けると、すぐ目の前に厚いビニールカーテンがかかっており、そのカーテンの向こう側にはいきなり露天風呂が広がって、30人をゆうに超える裸体の男たちが、湯船に浸かっていたり、縁で寝そべっていたり、腰掛けて休憩してたりと、思い思いのスタイルで寛いでいました。ドアを開けていきなりそんな光景にぶち当たると、台湾の温泉に慣れている私でも、さすがにびっくりして腰を抜かしてしまいそうになりました。

台湾のローカルな浴場によくあるタイプといったら良いのか、このお風呂では下足ゾーンと入浴ゾーンの区別がなされておらず、足元はビショビショ。特に出入口付近はちょっとドロドロしていますから、サンダル持参で利用することをおすすめします。鋼板の壁に沿っていくつかの棚が分散して設けられており、衣類や荷物はその棚に、靴は棚の下や上に置いておきます。棚とお風呂の間には仕切りなどないので、入浴客の面前で着替えることになります。また、同じ壁に沿って洗い場も設けられており、スパウトのみのカラン(お湯と水のペア)が数組取り付けられているのですが、お湯の水栓からは源泉のかなり熱いお湯が吐出されるので、迂闊にお湯に触れると火傷しちゃうかも。私はお湯と同時に水を出して薄めながら桶に溜めて使いました。

浴場内には(目測で)5.5m×6.5m四方のコンクリ浴槽が2つ並んでおり、周囲に岩を並べて温泉風情を醸し出していました。いずれの浴槽も手前3分の1程度には屋根がかかっていますが、残り2分の3は完全な露天状態です。一般的なお風呂よりも広く、そして結構深い造りなので、お風呂というよりプールみたいですが、浴槽側壁に設けられている段に腰をかけるとちょうど良い感じで肩までお湯に浸かることができました。

2つの浴槽は温度によって使い分けられており、出入口に近い手前側は41〜2℃の入りやすい湯加減であるのに対し、奥の浴槽は高温槽となっていて、館内表示では「42〜3℃」と案内されていましたが、私の体感ではもっと熱く、湯船に入ると脛がピリピリしましたので、おそらく44〜5℃はあったのではないかと推測されます。お湯は両浴槽に跨るような形で据え置かれている巨大な岩(厳密に言うと岩の上から垂らされているホース)より投入されており、そのホースから出てくるお湯は直に触れないほど激熱。加水によって温度調整されているのか、適温の手前側浴槽は温度低下の影響を受けて僅かに山吹色のような微濁りを呈しているのに対し、奥の熱い浴槽は比較的透明度が高く、源泉本来の個性が活きているような感を受けました。そして両浴槽とも湯船へ入るための階段部分からお湯が溢れ出ており、湯口の岩やオーバーフローが流れる床などは温泉成分の付着によって赤茶色に染まっていました。
持参したコップでお湯をテイスティングしてみますと、微かな塩味と弱い土類系の味および匂いが感じられ、ちょっと焦げたような芳ばしい匂いも嗅ぎとれます。湯中ではツルスベ浴感とキシキシ浴感が五分五分で拮抗しており、両感触とも肌にしっかりと伝わり、その上しっとり滑らかなフィーリングも得られました。この温泉の泉質名は台湾式の表記で碳酸氫鈉泉。日本語で言えば重炭酸土類泉や塩化土類泉といった部類に属しますが、重炭酸土類泉を薄くした代わりに重曹泉の個性をプラスしたような、両方を良いトコ取りできるようなお湯であり、お世辞抜きでなかなかの良泉であるように思われました。
大雑把で殺風景な浴場の構造や入浴客の利用態度など、いろんな意味で台湾らしいルーズな感は否めませんが、広くて開放的な露天風呂なので、入浴中は圧迫感が無く、また利用客が多くてもストレスを感じることはありませんでした。大きな露天で常夏の夜空を仰ぎながら熱いお湯に浸るのも、なかなかオツなもんですよ。


碳酸氫鈉泉(詳しいデータはわからず)

台北駅前の台北轉運站から葛瑪蘭客運の礁渓行バス(104元)、もしくは台北の市政府バスターミナルから首都客運の羅東行1572番バス(90元)に乗車。両社とも高頻度(10〜20分毎)で運転。所要1時間前後。バスターミナルから徒歩15分(1km強)
台鉄・礁渓駅から徒歩10分(約800m)
宜蘭縣礁溪鄉德陽路80巷3號


平日7:00〜25:00、休日7:00〜26:00
大衆池70元(この他貸切風呂あり。料金等は当記事本文参照)
ドライヤーあり(有料)

私の好み:★★★
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

礁渓温泉 森林風呂

2017年01月13日 | 台湾
 
ちょうど1年前ですが、私は台湾の宜蘭にある台湾屈指の温泉地、礁渓温泉をウロウロしていました。雨がそぼ降る平日の温泉地は人の影もまばら。でもせっかく当地を訪れたなら温泉の露天風呂に入りたいので、傘をさしながら温泉街を北へ向かって歩くことにしました。


 
礁渓を訪れるのは久しぶりだったのですが、しばらく来ないうちに街の様子が変わっており、温泉街の北のはずれにバスターミナルが新設されていたことを、この時初めて知りました。台北への高速バスもここから発着するのですが、温泉街の中心部や鉄道駅から中途半端に離れています。たしかに、温泉街ならどこでも徒歩で行けることには違いないのですが、宿泊先のホテルによってはタクシーを使いたくなるようなロケーションです。さすがに温泉街の中心では、操車に必要な広い敷地を確保できなかったのでしょうね。
なお、台北から礁渓へ行くには、遠回りする上に週末は満席が常態化している鉄道よりも、安くて頻繁に運行されている高速バスの方がはるかに便利です。詳しくは当記事の下部をご覧ください。


 
バスターミナルに隣接する緑豊かな礁渓温泉公園には足湯が設けられており、雨に濡れる心配がない屋根の下では、湯気に包まれながら足湯を楽しむ観光客の姿が見られました。


 

公園に隣接して公営の温泉プールもあるのですが、冬季は閉鎖されるのか、誰もおらず閑散としていました。


 
園内の歩道を奥の方へ進むと、「30分で台北から日本へ 5つ星 森林風呂裸湯」と書かれた看板が立っており、その看板が指し示す方向には「森林風呂」と記された扁額がかかるコリドーが設けられていました。「30分で日本」ってどういう意味?


 
池畔のコリドーを歩いて「森林風呂」へ向かいます。池は灰色に汚く濁っており、そこで暮らすアヒルが可哀想に思えてきました。


 
目的地の「森林風呂」に到着です。ここは日本の温泉をイメージして2010年に開業した比較的新しい温泉入浴施設。既に多くの日本人旅行者によってネット上で紹介されていますが、私はまだ行ったことがなかったので、どんなお風呂なのか体感すべく訪れたのでした。赤い暖簾がかかる受付前には、白い湯気(を模した演出。ドライアイスかな?)が上がる桶や、日本の郵便ポストをイメージしたと思しき赤いポストのオブジェが置かれています。


 
受付窓口を挟んで右手が女湯、左手が男湯。先ほどの看板に「裸湯」と書かれていたように、こちらのお風呂は日本のように裸で入浴します。それぞれの出入口に大きな暖簾がかかっており、その脇には礁渓温泉おなじみの、利用中の人数を表示するカウンターが取り付けられていました。下足場で靴を脱いで浴室へ。


 
広い浴室は吹きさらしの半露天状態。常夏の台湾ならではの開放的なつくりと言えそうですが、嵐の日には容赦なく風雨が吹き込んでくるでしょうし、台湾でも冬には10℃近くまでしっかり冷え込みますので、天候によっては我慢を強いられそうな感じです。
しかしながら、まだ開業して6年しか経っていないので、これといった老朽箇所は見当たらず、余程のことがなければ問題なく湯浴みできそうです。男湯の場合は中央に正方形の中庭湯(訪問時には水風呂でした)が据えられ、その向こう側に洗い場が配置されています。洗い場にはシャワー付きが6基、スパウトのみが2基、計8基のカランが取り付けられていました。ボディーソープとシャンプーはカランの横に備え付けられています。


 
浴場内には様々な浴槽が設けられています。内湯に相当する浴槽は、角の奥まったところにある「光之湯」と、横に長い「天女湯」の2つ。前者はその名の通り浴槽をスポットライトで照らすことにより、光線を強調しているようでした。一方、後者は壁に天女の羽衣をイメージしたと思しき壁絵が施されていました。いずれの浴槽もぬるく(40℃未満)、後者に至っては湯面にゴミのようなものが浮遊しており、しかもお湯から生臭さを感じたので、私は入っておりません(たまたま運悪くそのような状態に遭遇してしまったのでしょう)。でもぬるくて体への負担が軽いからか、ここに長時間浸かって談笑するお客さんが数名いらっしゃいました。


 
浴場内は庭園をイメージした誂え。このお庭には、後述する露天浴槽のほか、「風之湯」と称する小さな浴槽、離れ小屋のサウナ、水風呂、そして休憩用の東屋が設けられており、ゆとりある空間を存分に活かして様々な設備が配置されていました。近年の台湾では裸で入浴する温泉が増えてきましたが、裸で入れる露天風呂なのに、これだけ開放感がある施設は確かに貴重かもしれません。


  
岩風呂風の露天風呂は3つに分かれており、それぞれ大きさや温度が異なっています。左側の一番小さな浴槽(左or上画像)はぬるく、真ん中の大きな浴槽は適温(40℃強)、右側の浴槽(右or下画像)はやや熱めの湯加減となっていました。


 

3つの岩風呂はまとめて「雙龍湯」と名付けられていました。またこの岩風呂と並んで設置されている休憩用の東屋の名前も「雙龍棟」。その名前からして風水に関係しているのでしょう。龍に因んでいるのか、中央の大きな浴槽では一定時間ごとに、まるで上から龍が下りてくるかのようにお湯が落とされていましたが、ほかの浴槽では底面から供給されていました。そして各浴槽においても切り欠けからお湯が溢れ出ており、溝へと排湯されていました。内湯浴槽のお湯はあまり良い状態ではありませんでしたが、これら露天各浴槽のお湯はまずまずのコンディション。どのような湯使いかは不明ですが、新鮮源泉の投入は随時行われているようです。特に中央の浴槽はお湯の状態が良かったので、私はひたすらそこで湯浴みし続けました。
こちらに引かれているお湯は典型的な礁渓温泉のそれ。つまり、無色透明でほぼ無味無臭ながら、わずかに重炭酸土類泉のような感覚を有しています。湯船に入ってしばらくはトロミを伴うツルスベ浴感に包まれるのですが、やがてキシキシと肌に引っかかる感覚も得られます。でもそうした個性は、このお風呂では鳴りを潜めていたような気がしたので、掴み所の無いお湯と言えるかもしれません。受付に掲示されていた成分表示によれば湯温は33.6〜33.8℃なんだそうですから、これが本当ならば各浴槽においては加温されたお湯が供給されていることになります。

果たして入浴して「30分で日本へ」行った気分になれるかどうかは、人それぞれの感性に依るのでしょうけど、礁渓温泉で、比較的きれいで且つリーズナブルな露天風呂に入りたければ、ここか「湯囲溝公園」のいずれかを選べば良いかと思います。特にこのお風呂はバスターミナル至近なので、台北からやってきてすぐに温泉へ入りたい方にはもってこいです(バスターミナルにコインロッカーがありますので、大きな荷物はそこへ預けられます)。一方、多少ボロくてもお湯を重視するならば、次回記事で取り上げる「春和日式大浴池」がおすすめかな。


碳酸氫鹽泉(日本語では重曹泉) 33.6〜33.8℃ pH8.4 溶解固体量510〜629mg/L
HCO3-:510〜620mg,

台北駅前の台北轉運站から葛瑪蘭客運の礁渓行バス(104元)、もしくは台北の市政府バスターミナルから首都客運の羅東行1572番バス(90元)に乗車。両社とも高頻度(10〜20分毎)で運転。所要1時間前後。バスターミナルの目の前が礁渓温泉公園。
台鉄・礁渓駅から徒歩10分(約800m)
宜蘭縣礁溪郷玉石村公園路70巷60號


24時間営業
150元(貸タオル付きは250元)
ロッカー(20元有料)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする