経済なんでも研究会

激動する経済を斬新な視点で斬るブログ。学生さんの就職準備に最適、若手の営業マンが読めば、周囲の人と差が付きます。

バイデン氏の公約 戸惑う市場

2020-08-25 07:47:28 | アメリカ
◇ 怖いけれど魅力もある = 民主党の大統領候補に決まったジョー・バイデン氏が、次々と選挙公約を発表した。その骨子は①最低賃金の引き上げ②大企業や富裕層への課税強化③公的保険制度の創設④温暖化対策のパリ協定への復帰⑤日本や韓国、オーストラリアとの同盟強化――など。また経済の現状を「大恐慌以来の最悪の状態」と断定。不況対策として育児や介護支援、製造業支援、AI投資などへ、10年間で3兆ドル財政支出をすると公約した。

トランプ政権に対しては「アメリカ国民を分断させた」と強く非難。またコロナについても「無策で蔓延させてしまった」と批判。国内の分断をなくし、コロナ対策も充実すると強調している。さらに中国に対して、融和政策はとらない。ただトランプ政権のように米中対決の形はとらず、同盟国と連携して中国に圧力をかける姿勢を表明している。

たしかにトランプ政権は、コロナの鎮圧に苦慮している。また不況対策にも、一貫性がない。株式投資家の間でも、こうみる人は少なくない。さらに景気対策としても、3兆ドルの財政出動は魅力的だ。中国に対しても、同盟国と連携する方が望ましい。このように市場関係者の間でも、バイデン氏の公約を評価する向きは多い。

ところが問題は、大企業や富裕層に対する増税だ。所得税の最高税率や法人税の引き上げ。歳出の増加を賄うため、要するに増税額は10年間で3兆ドルになる。株式市場としては、大きなマイナス材料だ。あと2か月あまりに迫った大統領選挙。トランプ氏かバイデン氏か。毎日のように話題となるなかで、株式市場もどちらが買いか売りかを決めなければならない。

       ≪24日の日経平均 = 上げ +65.21円≫

       ≪25日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

今週のポイント

2020-08-24 07:32:08 | 株価
◇ 大統領選挙が大きな材料に = ダウ平均は先週ほぼ横ばいに推移、週間では69セントの値下がりだった。IT関連銘柄は相変わらず強く、このためナスダックやSP500指数は史上最高値を更新している。ただアメリカではコロナの感染が終息せず、景気の先行きについても警戒感が強まった。また米中関係の悪化が進んだこと、それに大統領選挙も市場では大きな関心事に浮上してきた。

日経平均は先週369円の値下がり。週初に発表された4-6月期のGDP成長率がマイナス27.8%に陥没したことが、市場の心理を冷やしている。ただ歴史的な成長率の落ち込みは事前に予測されており、これまでの市場なら「織り込み済み」と受け流したに違いない。それが不安材料として受け取られたのは、何か基調的な変化が生じているのかもしれない。

ニューヨーク市場では、今週もIT銘柄に買いが集中するかどうか。コロナの状況と大統領選挙が、しだいに大きな材料になって行くことは間違いない。だからワクチンの開発で前向きなニュースが出れば、株価はもう一段と押し上げられるだろう。東京市場はやや材料難。そうしたなかで、市場は安倍首相の健康状態に神経を使うことになる。

今週は26日に、7月の企業向けサービス価格。27日に、6月の全産業活動指数。アメリカでは25日に、6月のFHFA住宅価格、7月の新築住宅販売、8月のカンファレンス・ボード消費者信頼感指数。27日に、4-6月期のGDP改定値、7月の中古住宅販売が発表される。

       ≪24日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

死者が語る コロナ肺炎の危険度 (24)

2020-08-22 07:45:14 | なし
◇ ヨーロッパに第2波の兆候 = 日本時間21日午前0時の集計。アメリカの死亡者数は17万3204人。ブラジルは11万1100人、インドは5万3866人。いずれも1週間で7000人前後の増加、衰えは全くみえていない。あとイギリスが4万人台、イタリアとフランスが3万人台。スペインとイランが2万人台、ロシアと南アフリカが1万人台の死亡者を記録している。世界的にみて、パンデミックはなお進行中だ。

それどころか、このところ落ち着きをみせていたヨーロッパ諸国で、再び感染者が増え始めた。たとえばスペインではこの1週間で4万1000人、フランスでは1万8300人。ドイツでは8700人、イギリスでも7400人の新規感染者が発生した。このため各国とも深夜の飲食店休業やマスクの義務付けなど、対策の再強化に乗り出している。第2波が襲来したという見方が強い。

感染者は若者が中心で、イギリスの5300人増を除けば、死亡者はそれほど増加していない。スペインでは218人、フランスでは97人の増加にとどまっている。しかし時間とともに感染は高齢者に広がり、重症者や死亡者は増えるだろうと予想されている。その水準を第1波のときより低く抑えられるかが、各国政府の目標になってきたようだ。

この点では、日本も同じ。感染者数は6万人を超え、死亡者数は1173人に達した。この1週間では83人も増えている。1か月前には1週間で3-7人しか死亡しなかったのに比べると、増加のスピードは加速している。日本感染症学会の舘田理事長は「いま日本は第2波の真っただ中にいる」と断定。フィンランドは日本からの入国を禁止した。

       ≪21日の日経平均 = 上げ +39.68円≫

       【今週の日経平均予想 = 4勝1敗】     

モーリシャス座礁の 賠償金は?

2020-08-21 07:31:10 | なし
◇ 日本の船主保険組合が支払う = インド洋の西に浮かぶモーリシャス島の沖で、日本の油輸送船が座礁。1000トン以上の重油が流出して、自然保護区の海岸やマングローブ林に大きな被害を与えてしまった。重油の流出は止まったが、自然環境の回復には30年を要するという。事故を起こしたのは、岡山県の長鋪(ながしき)汽船が所有する「わかしお」で、パナマ国籍。商船三井がチャーターしていた。しかし日本人は一人も乗っていない。

モーリシャスは1968年、旧宗主国のイギリスから独立した。東京都ほどの島に、127万人が住んでいる。産業は漁業と観光がほとんど。今回の事故で、その両方が壊滅的な打撃を受けた。当然、モーリシャスとしては損害賠償を要求する。だが賠償金は、だれが支払うことになるのだろうか。

バンカー条約という取り決めがあって、海難事故で燃料油が流出した場合の責任は「船主が負う」と明確に定めている。したがって今回の賠償責任は、船の所有者である長鋪汽船が負うことになる。ただ実際には、日本船主責任相互保険組合が支払うことになるようだ。保険金の支出限度は10億ドルとなっている。

賠償の対象は、漁業や観光業の損失。それに重油を除去するためにかかった費用などだが、まだ被害の実態が明らかとなっていないので、その算定はできない。ちなみに1997年にロシアのタンカー「ナホトカ」が日本海で座礁、6200トンの重油が流出したときの補償額は261億円だった。ここからみても、保険金の範囲内に収まるだろうと推測できる。

       ≪20日の日経平均 = 下げ -229.99円≫

       ≪21日の日経平均は? 予想 = 上げ≫

企業の業績は 回復するのか (下)

2020-08-20 08:13:48 | 利益
◇ コロナ第2波が意味するもの = これまでに決算を発表した企業のうち、約35%の企業は3月期の通期見通しを「未定」としている。コロナの状態が見通せないから、自社の経営がどうなるかも予測できないというわけだ。たしかに第1波を超えるような大波が、これから襲ってこないという保証はない。すでに全国の感染者数は第1波のときを上回っており、重症者や死亡者もじわじわと増えてきた。

仮に第1波と同じような第2波がやってきたら、どうなるのだろう。政府や医療関係者は「第1波のときよりも、病室の整備や治療技術が向上した」と解説する。しかし企業経営という面からみると、第2波の襲来を「第1波の繰り返し」と考えることは出来ない。第1波で大きく疲弊した体力で、再び戦わなければならないからである。

小売り業や飲食業、宿泊業などは、再び休業しを余儀なくされるかもしれない。さらに一部の大企業も、窮地に陥るだろう。たとえば航空業や鉄道業。4-6月期の決算をみると、ANAは1088億円、JALは937億円の赤字。JR東日本の1553億円を筆頭に鉄道各社もすべて大赤字を計上している。いまは借り入れや社債の発行で食いつないでいるが、第2波が来たら持ちこたえられるかどうか。

政府も再び緊急事態宣言を発令すれば、また各種の補償金を支出しなければならない。それだけでなく、航空会社や鉄道会社への支援も迫られるだろう。このように経済の面からみれば、コロナの第1波と第2波は、全くその重みが異なってくる。最近の政府高官の言動をみていると、こうした認識には欠けているように思われる。危ない!

       ≪19日の日経平均 = 上げ +59.53円≫

       ≪20日の日経平均は? 予想 = 下げ≫

Zenback

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