蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

本居宣長  (bon)

2015-09-30 | 日々雑感、散策、旅行

               大雪山、岩木山など今年“初冠雪”の便りが届く頃となりました。
                         あれほど続いた猛暑は、いまは懐かしくさえあります。
               株価は、2日間で1,000円以上下落するなど荒れ模様となっています。
               あのジェームスディーンが事故死(24才)して今日で60年だそうです。

 

 人物題が続きますが、本居宣長(1730-1801)は、9月29日(旧暦)が命日なのだそうです。
江戸中期の国学者で、今から、200年ちょっと前の人なんですね。 
本居宣長は、三重県松阪の木綿商の次男として生まれ、15歳の頃に商売の勉強のために江戸に行くが
1年で戻り、商売に適していないと、母に相談して医業を学び、地元・松坂で医師として40年以上にわたり
活動したとあります。 昼間は医師としての仕事に専念し、自身の研究や門人への教授は主に夜に行った
そうです。

         本居宣長
            (ウイキペディアより)

 

 我々の良く知る本居宣長は、何といっても「古事記伝」にみられる当時解読不能と言われた日本最古の
歴史書「古事記」を35年を費やして解読に成功したことであり、その成果はその後の国学の源流を形成した
ことです。 さらに、「源氏物語」の注解「源氏物語玉の小櫛」、を著すなど、言葉や日本古典を講義し、
源氏物語に見られる“もののあはれ” という日本固有の情緒こそ文学の本質であると提唱し、
大昔から脈々と伝わる自然情緒や精神を第一義として、外来的な儒教の教えは自然に背く考えであると
非難し、ために荻生徂徠を批判したとあります。 
また、法学においても特記される提言を行っており、紀州徳川家に贈られた「玉くしげ別本」の中で
『定りは宜しくても、其法を守るとして、却て軽々しく人をころす事あり、よくよく慎むべし。
たとひ少々法にはづるる事ありとも、ともかく情実をよく勘へて軽むる方は難なかるべし』とその
背景事情を勘案して厳しく死刑を適用しないように勧めています。

 本居宣長名言として、以下の3つが挙げられていました。

『かぎりを行うのが人の道にして、そのことの成ると成らざるとは人の力に及ばざるところぞ。』

『才のともしきや、学ぶことの晩きや、暇のなきやによりて、思いくずおれて、止ることなかれ。』

『人の情の感ずること、恋にまさるはなし。』

この最後の、明言は、まさしくそのことながら、彼から出た名言とはちょっと不思議なくらいです。 
まあ、彼は、“鈴”のコレクターで有名だとか、で、駅鈴のレプリカなど珍しいものを多く所蔵していたり、
自宅を「鈴屋」という屋号をつけていたそうです。

         本居宣長記念館(三重県松阪)
            (ウイキペディアより)

 

 3大業績として、「古事記」研究、「源氏物語」研究、日本語研究が挙げられており、著書もたくさん
ありますが、実際的な政治や経済の具体策が書かれている 
日本式経済論:本居宣長『秘本玉くしげ』の章 として、“ ウエブサイト「日本式論」 管理人モト”に、掲載されていましたので、
その中から各節を列記し、最後の第十三節だけ転写しました。

 第一節    時世と先規

 惣體世の中の事はいかほとかしこくても、人の智恵工夫には及ひかたき所のあるものなれは、
たやすく新法を行ふへきにあらす  すへての事、たた時世のもやうにそむかす、先規の有来りたるかたを
守りて、これを治むれは、たとひ少少の弊は有ても、大なる失はなきもの也。何事も久しく馴来りたる事は、
少少あしき所ありても、世人の安んするもの也 

第二節 根本の道理
 根本の道理によりておこなふときは、まはり遠き如く、却て思ひの外に速に其験ありて、よく行はるる
事も有  或は當分はそのしるしみえされとも、つひにその験あらはれて、永久に行はれ、或は目に
見えてはしるしなきやうにても、目に見えぬ所に、大なる益ある事なともあるなり

 第三節 百姓の困窮
 近来百姓は、殊に困窮の甚しき者のみ多し。これに二つの故あり。一には、地頭へ上る年貢甚多きか故也。
二つには、世上一同の奢につれて、百姓もおのつから身分のおこりもつきたる故也  不便に思召て、
有来りたる定まりの年貢の上を、いささかもまさぬやうに、すこしにても百姓の辛苦のやすまるへきやうにと、
心かけ玉ふへき事、御大名の肝要なるへく、下下の役人たちまても、此心かけを第一として、忠義を思はは、
随分百姓をいたはるへき旨を、常常仰付らるへき御事にこそ  抑此事の起るを考るに、後にいつれも、
下の非はなくして、皆上の非なるより起れり

第四節 民と国と天下
 平民の身一分のうへにては、いかにも何わさをしてなりとも、金銀を得る事の多きか利なれとも、
上に立て民を治むる人の身にとりては、領内おしならして利益あることならては、損ある也   
天下と一國一國との差別あり。たとへは何にもせよ、世上に無益の奢のために用る物を多くつくり出す國
あらんに、これは天下のうへよりいへは損なれとも、其國にとりては損にあらす  天下と一國一國との
上にて、その趣のかはる事、外にも多し。さて又、交易のために商人もなくてはかなはぬものにて、
商人の多きほと、國のためにも、民間のためにも、自由はよきもの也。然れとも、惣して自由のよきは、
よきほと損あり。何事も自由よけれは、それたけ物入多く、不自由なれは物入はすくなし

第五節 貧富の動き
 富る者はいよいよますます富を重ねて、大かた世上の金銀財寳は、うこきゆるきに富商の手にあつまる
こと也  富める者、商の筋の諸事工面よき事は申すに及はす、金銀ゆたかなるによりて、何事につけても、
手行よろしくて、利を得る事のみなるゆゑに、いやとも金銀は次第にふゆる事なるを、貧しき者は、
何事もみなそのうらなれは、いよいよ貧しくなる道理也   惣して今の世は、大抵利を得る事は難くして、
損はしやすき時節なるゆゑに、富商は随分金銀をへらさぬ分別を第一として、慥なるかたにつく故に、
まつは減する事はすくなくて、とにかくにふゆる方おほき也。さてそれも少し不廻なる方に趣くときは、
又万事みな右のうらへまはる故に、鉅万の金銀も消やすき事も、又春の雪の如し

 第六節 財産の配分

 世上の金銀財寳は、とかく平等には行わたりかたきものにて、片ゆきのするは、古今のつねにて、
ほとよく融通するやうにはなりかたき事也  上に立て治め玉ふ人の御はからひを以て、いかにもして、
甚富る者の手にあつまるところの金銀を、よきほとに散して、専ら貧民を救ひ玉ふやうにあらまほしき
もの也  但しその散しやうは、その者の歸服して、心から出すやうにあらては、おもしろからす。
いかほと多く蓄へ持たれはとても、これみな、上より玉はりたるにもあらす、人の物を盗めるにもあらす、
法度に背きたる事をして、得たるにもあらす、皆これ、面面の先祖、又は己か働きにて得たる金銀なれは、
一銭といへとも、しひてこれを取へき道理はなし  とにかくに、しひてこれを召んことは、心よからす、
又其金銀を他の事に用ひんも、心よからす、ひたすら貧民を救はまほしきこと也。上より民を救ひ玉ふ
御仁政の専行はれて、貧民其御めくみを有かたく存し奉る様子を見は、仰付られす共、おのつから富人は、
救ひの志出来へきこと也。さてもし志ありて、貧人を救ふ者あらんには、そのほとほとに厚くこれを賞美
したまはは、いよいよ相はけみて救ふ者多かるべし  貧民を救ひて賞せられんは、世の中の人の甚悦ふ事
なれは、そねみにくむ者はなくして、これをうらやむもののみ多かるへし。此所をよく考へて、
富人の金銀を散して、貧民を賑はすへき仕方はあるへき事也 

第七節 人間の分限
 人は何事も、その身の分限相應にするかよき也。分限に過て奢るかわろき事は、申すに及はす、
又あまり降して輕くするも、正道にはあらす。大名は大名相應に、御身を持玉ふよし  倹約を心かくれは、
おのつから悋嗇きかたに流れやすきものにて、必すすへき事をも、止てせす、人にとらすへきものをも
惜みてとらさす、甚しき者は、人のものをさへ、奪はまほしく思ふやうの心にもなりやすし。然に此所を
よく心得て倹素にして、しかも悋嗇に流れぬやうには、ありにくきもの物也  殊に上にたつ人なと、
此のわきまへなくして、悋嗇なるときは、下の潤ひかわきて、甚よろしからす。されは倹約も實には
宜しき事のあらす。とかく上中下、各身分相應にくらすかよき也  ものはかきり有て、のほりきはまる
時は又おのつから降ることなれは、いつそは又、本へかへる時節も有へきに、されと此世上の奢りなとの、
左様に自然と質素の方へかへるといふことは、まつは何そ變なる事なとのなくては、かへりかたきこと
なれは、その變の有て、自然とかへるを、安閑として待居るへきにもあらす   
されは、上にたつ人は、
随分なるへきたけは工夫をめくらして、自他奢の長せさるやうに、少しつつにても、質素の方へかへるやうに、
はからひ玉ふへき也。すこしつつにても、質素の方にかへりて長することなけれは、起るへき變事も
おこらすして、長久に無事なるへし

第八節 実体経済と資本経済
 商人なから、物の交易をもせす、たた金銀のうへのみを以て世を渡る者も、おひたたしく、富人は別して
これによりて、ますます富を重ぬること甚し  惣して、金銀のやり引しけく多き故に、世上の人の心、
みなこれにうつりて、士農工商、ことことく己か本業をはおこたりて、たた近道に手早く、金銀を得る事に
のみ、目をかくるならひとなれり  世に、少しにても金銀の取引にて利を得る事あれは、それたけ、
作業をおこたる故、世上の損也。いはんや業をはなさすして、たた金銀の上のみにて世を渡る者は、
みな遊民にて、遊民の多きは、國の大損なれは、おのつから世上困窮の基となれり 

第九節 国政の対策
 天下のため、國のために害なる事、世に多し。其中に、實は大に害あれとも、害と見えさる事もあり。
又ここにはあれとも、かしこに害あることあり   又當分はあるやうなれとも、後日に大害となること
あり。これら皆、人の惑ふこと也。國政をとらん人、つねに心を付らるへし  たたつねつね、善事は
そのかたのくつれぬやうに、止ぬやうにはからひ、惡き事は少少つつも消するやうに、長せぬやうにと、
心かけ、さて又新規に始めんとする事は、よくよく考へて、人人の料簡をもきき、他國の例なとをも聞合せ、
諸人の歸服するかせぬかをよく勘へて、行ふへし  さしつまりてやむことを得さるときは御家中の禄を、
年を限りて減じ給ふより外の上策はなし。これ、當然のあたりまへ也   
なるへきたけは、此事は
なくてあらまほしきものなれとも、上の御身分につきたる御物入ともをも、なるへきたけ省略減少せられ、
はしはしくまくままて、御手をつめられて、このうへやむことを得ぬときは、此法より外に、作略は
有ましきこと也 

第十節 意見
 大小の事、何によらすよき料簡あらは、たとひ輕き人なりとも、少しも憚ることなく、申出るやうに、
有たきもの也  とかく御政務につきては、御前へ出たる人、あまりに憚り恐れす何事もうちくつろきては
料簡を申上るやうにし、輕き役人をも近く召れて、心やすく何事をも申上るやうに、あらまほしきもの也

第十一節 賄賂
 すへて世中に此筋盛んなるゆゑに、おのつから國政正しくは行はれかたく、又上に損失ある事おひたた
しく、下にも損害甚多し  國政の大害、下民の大害、此賄に過たるはなし   そもそも賄はつかふ者
にはとかなくして、罪は取者にある事なれ共、取者をのみ制しては、止かたけれは、つかふ者をいましむる
も、一つの權道なるへきにや 

第十二節 時代
 諸事をいかやうにつめてなりとも、物入の少なきやうにして、是非とも御収納にて何事も事足るやうに
相はたらかんそ、肝要なるへき   時代のうつるにつきては、世中のもやう、人の氣質なともうつりかはる
ものなれは、昔の法のままにては今は宜しからさる事もあるへけれは、其時代時代の世中のもやう、
人の氣分なとをよく辨へて、昔の法をもこれに引當て考ふへき也 

第十三節 『秘本玉くしげ』考 (この節は原文のままとしました。)
 本居宣長の『秘本玉くしげ』には、経済についての方策が示されています。
宣長は、安易に新しいことに手を出すことを戒め、時世に沿って先人の規範を守り、道理に適うように
急がば回れと説いています。効果が表れなくても、最後に表れたり、見えないところに表れたりすることが
指摘されています。

 百姓の困窮については、年貢の多さと贅沢が原因として挙げられています。年貢を増やさないようにする
のが上の役目であり、下には非はないというのです。

 利益については、個人経済と国家経済と世界経済には、差異があることが認識されています。
 交易には商人が必要であり、自由が広がります。ただし、自由すぎることによって不自由になることも
あると指摘されています。便利だと出費が多く、不便だと出費が少ないということもあるからです。

 富については、富が富を次々と産み出すことが語られています。金銀は流通して、富裕層へ集まると
いうのです。しかし、良くない方に傾くと逆へ働くため、巨万の富も雪のように消えやすくなることも
あるというのです。

 世間の財産は平等ではないため、為政者が富裕層の財産を分配し、貧困層を救うべきことが説かれて
います。それには、富裕層の納得のいく方法でなければならないとされています。

 分限については、人間は身分相応にするのがよく、地位に応じた振る舞いが求められています。
上に立つ者がケチであるとき、下の者が潤わないので宜しくないと考えられています。

 物事の限りについては、上がりきれば自然に下がって本来の形に戻ると考えられています。しかし、
世間の贅沢などは変化がないと戻らないため、上に立つ者は自他共に贅沢にならず質素になるように
計るべきだというのです

 商人が実体経済に関わらず、資本経済で利益を上げることが多くなれば、世間の人は本業をおろそか
にし、自然と世の中は困窮していくと指摘されています。

 世の中の害については見えないこともあり、利益に害が付随することもあるため、短期的な害だけでなく、
長期的な害も含めて為政者は注意すべきだと説かれています。

 新しいことについては、考慮して他人の意見を尊重し、他国の事例を参照して、皆が納得するかしないか
を考えて行うべきだと説かれています。

 緊急事態には、あらゆる支出を抑えて、それでもやむを得ないときには給与を下げるしかないとされて
います。

 政治の意見については、良い考えがあれば、身分に依らず申し出るような環境が良いとされています。
 賄賂については、盛んなほど国政が正しく行われず、上も下も損害が激しいとされています。
賄賂を止める方法として、贈る者も受け取る者も罪に問うことが挙げられています。

 宣長は、いろいろと工夫して、収入に見合った生活が肝心だと述べています。そのためには、その時代に
合わせて昔のやり方を当てはめて考えるべきことが説かれています。

 

  

 

 

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