蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

LIB  (bon)

2017-03-19 | 日々雑感、散策、旅行

 リチウムイオン電池(lithium-ion battery=LIB)です。 
正しくは、リチウムイオン2次電池です。 2次電池とは、充電可能という意味です。
乾電池などは、1次電池ですね。

 LIBは、小型・軽量で高電圧が得られる新しい電池として期待され、あるいは安全性など
で話題となりましたが、その後あまり意識を置いていないうちに、いつの間にかケイタイ、
スマホ、パソコンをはじめ種々の家電製品などに深く浸透し利便を享受しているのです。
さらには、電気自動車(EV)等の新しい動力として既に導入されています。 いずれ、水素
等の燃料電池に移るとしても、LIBの役割は計り知れない重要なものとなっていると改めて
思うのです。

 先ごろ、LIBについての講演録「リチウムイオン電池 現在・過去・未来」(吉野彰氏、
旭化成㈱ リチウムイオン電池材料評価研究センター理事長)を読んで、開発にまつわる
エポックや社会変化と共に進展した背景などを概観してみたいと思いました。

 講演録に入る前に、LIBの特徴などを他の電池と比較してみたいと思います。

      電池のいろいろ
        (電池工業会HPより) 

 

   電池の種類(ネット参照により作成しました。)
    


      エネルギー密度比較
       (電池の豆知識より) 

 

 種類としては、形状からボタン電池、円筒型、コイン型などの分類もありますし、さら
に、発電方法により太陽電池、燃料電池などもあります。

 要するに、リチウムイオン電池は、小型・軽量で高電圧が得られる上、長寿命でメモリー
効果(電池を使い切らないうちに充電すると、再充電した容量しか使えなくなる)もない
など多くの利点があります。 しかし、これまでに2006年にはパソコンから発火事故があり、
また2013年には航空機搭載電池のトラブルが多発するなどの事故があり、安全性に問題点が
ありました。 電気用品安全法(PSE)では、電池セルのエネルギー密度が400Wh/L以上の
ものは規制対象となりました。自動車用・原付用・医療用・産業用機械器具用などは対象外
だそうです。

 以上に、リチウムイオン電池の概要をまとめてみましたが、今日 なくてはならない電池
の開発経緯とこれからの社会変化に応じた電池の役割について、講演録の中からかいつまん
でご紹介したいと思います。

 講演者の吉野氏は、旭化成㈱でこの電池の開発に従事してこられた方で、開発の流れは
肌で感じられているのでしょう。 LIBの研究は1981年に始まり、‛85年には原型が完成し、
その6年後の1991年には商品化に成功したにもかかわらず、市場の反応はなかったそうです。
それが、4年後の1995年にウインドウズ95が発売され、携帯電話やパソコンが普及するIT
社会が始まると、その電源としてLIB市場は一気に拡大したそうです。

 1997年に 2000億円規模であった市場は、現在では1兆2000億円規模になっているという。
2000年ころまでは、日本企業がほぼ独占していたようですが、その後グローバル化が進んで
います。また、市場の変化は、これまで携帯電話、パソコン向けでしたが、2011年頃からは、
電気自動車向けが増加してくるのです。

 吉野氏の開発体験談と思える記述がありました。 要約しますと、非水系の1次電池(リ
チウム電池)は、負極に金属リチウムを使うので、非水系の2次電池の開発の場合も負極に
金属リチウムが使われたのですが、悉くうまく行かなかったそうです。 これのブレーク
スルーになったのは、導電性ポリアセチレンの発見(白川英樹氏ノーベル化学賞受賞)が
あり、これを電池の負極に用いることを発案し、正極に、オックスフォード大で発表された
リチウムイオン含有金属酸化物を使用して、‛83に安定したLIBの原型が出来たというのです。

 製品としては小型化する必要があり、ポリアセチレンでは、小型化に不向きであること
から、これと分子構造が似ている 新しい炭素繊維を用いることにより、小型・軽量化した
LIBが‘85に完成したのでした。この間、相当の調査と研究が繰り返されたのだと思われ
ます。 その後、安全性についての研究が重ねられ、ようやく1991年に完成するのです。
 

 今後の市場の動向として、講演録では、次の4つの動向により急速な拡大発展が見込まれる
と予測されています。このうち既に、2015年に中国の動向に合わせて電気自動車向けが一気
に拡大しているそうです。 ①中国のPM2.5問題解決のため、EVバブル、特にバスの電動化
ニーズが生まれた。 ②2018年に、環境対策として、車に対する環境規制が厳格化されるこ
とから、欧米での自動車メーカの対策。③アメリカ・パロアルトの電気自動車及び関連製品
開発ベンチャ企業「テスラ」の動き。 ④AGV(Automatic Guided Vehicle=自動運転技術)
へ、アップル、グーグルの参入。

 さらに、②の欧米での環境基準の厳格化は、ZEV(Zero Emission Vehicle)の定義が、
文字通り排気ガスを排出しない、100%電気自動車か 燃料電池自動車に限定される動きがあり、
これまで認められてきた HEV(Hybrid Electric Vehicle)等は定義から外される可能性が
あり、各メーカーはどの社も電動自動車の開発に転換することになるでしょう。

 最後に、このような直近の需要動向への対応策の他、さらに将来への展望と、このエネル
ギー源の役割について、吉野氏は次のように締めくくられています。

 一つは、当然ながら電池容量増大への課題です。現状、1回の充電で200km走行可能ですが、
‛20までには 300~350kmに向上すると想定されており、更に500km位走ることが出来る本格
的なLIBを目指して改良して行く。

 二つ目に、将来、電動化と無人運転化が進展すれば“無人タクシー”が普及すると予想し
ています。車移動の共有化が実現すれば、マイカーの激減、共有化によるコスト低減が図ら
れ画期的な価格破壊が達成されるとともに、あわせてゼロエミッションの実現等による地域
環境、地球環境に大きく貢献できるのではないか? 先ずは、2020年の東京オリンピックで
無人自動運転のデモが見られるでしょう。

 やや、唐突な感じもしますが、“電池”により、社会変革を実現し、環境保全に貢献する
という壮大な、しかし、実現味のある夢が描かれています。

 

 

 

 

 

                                                                                                 

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