蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

光触媒  (bon)

2019-11-26 | 日々雑感、散策、旅行

 もうご存知のことと思いますが、ちょっと整理してみました。
  光触媒について、昨年6月に講演された講演録(藤島昭氏、東京理科大学教授、前学長)
が手元の会報(少し前の)にあり、自然界の大事な原理であることに改めて納得した次第
です。

 光触媒というのは、『を照射することにより触媒作用を示す物質の総称である。』と
ウイキペディアにあります。  植物は、二酸化炭素と水を取り込み太陽光を利用して、
つまり「光合成」によって酸素とでんぷんを作っているのです。ここで、植物の葉緑素に
代えて酸化チタンを触媒にした『人工光合成』とも言える研究が進められているのです。

 原理は、酸化チタンを触媒にして、太陽光(光)によって、水を水素と酸素に分解され
る化学反応なんですね。
 講演者の藤島氏が大学院生であった頃、1967年にこの現象を発見され、当初は、光によっ
て、水から燃料となる水素が生成される、すなわちクリーンエネルギー『太陽で夢の燃料』
ということで、世界中に知られ、折しもオイルショックによるエネルギー問題の解決・・
などと騒がれたそうです。 

      光触媒の原理
      (光触媒工業会HPより)

 しかし、藤島氏の実験で、1m四方の酸化チタンに一日中太陽光を浴びせて7リットル
の水素を生成しましたが、7リットルの水素は、燃やすと一瞬で燃え尽きてしまいます。
氏の計算によると、太陽エネルギーの変換効率は僅か0.3%に過ぎないそうです。 酸化チ
タンは、太陽光の内 紫外線しか吸収できないからと分析されています。

 

 光触媒という言葉が使用されたのは、1915年頃だそうで、それ以前から酸化亜鉛に光を
照射すると色素の漂白が起こる現象やその後 酸化チタンでの反応などが発表されていたよ
うですが、実用性のある応用が見つからず研究は停滞していたとあります。
 しかし、上述した、藤島氏の発見が基礎となってエネルギー問題ではなく環境分野の大
きな成果に結びついてきたのです。

  この原理は、エネルギー問題の解決から大きく転換し、「光触媒による環境問題の解決」
を目指して様々な開発が推進され、既に実用されているものも多くあるのです。

  光触媒には、「強力な酸化分解力」と「超親水性」という性質があり、これら二つの性質
を利用した幅広い分野の製品開発が行われているのです。
  すなわち、①抗菌・抗ウイルス、②防汚、③防曇、④脱臭、⑤大気浄化、⑥水浄化 の
分野で応用されているのです。

 「強力な酸化分解力」とは、材料表面のどんな有機物も酸化し、最終的に水と二酸化炭素
に分解する、すなわち有害物質の分解、殺菌ができるということなんです。 光(紫外光
ランプ)を照射するだけで殺菌処理が出来るのです。 「超親水性」とは、材料表面を水
に馴染みやすくする作用で、表面に水滴を作らせず、水を表面全体に薄い膜状に覆う性質
です。

   *以下の図は、すべて光触媒工業会HPより転写しました。
     光触媒工業会は、2007年に結成されています。

  強力な酸化分解力

  

  超親水性

  

 

 講演録で述べられた光触媒の応用例を以下にその概略を挙げておきます。

 ①抗菌・抗ウイルス 病院の手術室などの壁や床に酸化チタンでコーティングした抗菌
タイルを使用し、蛍光灯の光で完全殺菌されているのです。 このほか、エアコンに光触
媒空気清浄器を使って室内の空気を浄化したり、また、光触媒蚊取り器の開発も進められ
ているそうです。蚊を媒介とするマラリアなどの感染を防止する目的です。 歯科分野で
もインプラントを抗菌する方法が検討されているそうです。

 ②防汚 では、建築部材への応用が盛んで、外装タイルを酸化チタンでコーティングす
ると、太陽光により活性酸素が発生し表面の汚れを分解し、雨が降れば光触媒の超親水性
によって汚れが洗い流されるという仕組みです。いわば、「セルフクリーニング効果」と。
 また、白の光触媒ペンキで塗装すれば、いつまでもきれいな白い壁が続くというのです。

 ③防曇 鏡の表面を酸化チタンで薄くコーティングすれば、蛍光灯の光で、浴室でも曇
らない鏡が出来るし、車のサイドミラーなどにも応用され、殆どの車メーカーは採用して
いるのです。
 ④脱臭 喫煙ブースなどの天井に光触媒空気清浄器を設置しているケースがある。
 ⑤大気浄化 人の多く集まる空間に、光触媒タイルを用いて、排気ガスに含まれる窒素
酸化物を分解除去し空気をきれいにする効果があり、駅構内、競技場内に適用されている。
 ⑥水浄化 空気や水の汚染を光触媒で分解し、再利用する方法などにより、宇宙衛星な
どの閉じた空間での対応を目指した研究がされているそうです。

    幅広い応用分野

    


 ちょっと専門的ですが、“光触媒効果に用いる光の波長”と言うのがあって、冒頭の
太陽エネルギー変換効率のところでもありましたが、酸化チタンが吸収する光というのは、
波長が380nm以下の紫外領域にあるとあり、太陽光、白熱灯、蛍光灯などの光源ではごく
一部の光だけしか光触媒反応に
寄与していないことになります。 この波長をもっと伸ばす、
つまりより可視光に近いところでも反応出来るようにすれば、さらに性能向上が期待でき
応用範囲も広がるだろうと想定されています。現在では、400~600nmで作用する光触媒が
開発されているそうです。
 (参考)紫外線は波長380nm以下。可視光は波長380-780nm(紫~青色:380-490nm、
緑-黄色:490-600nm、橙-赤色:600-780nm)。400-600nmは紫色-橙色の可視光に相当する。

 

 

 

 

 

 

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