蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

東京五輪開催の是非  (bon) 

2021-06-05 | 日々雑感、散策、旅行

 当事者にとって、今 最も頭の痛い事案かもしれません。頭が痛いのは今だけで
なく、もう1年も前から続いているのです。 一年前にはオリンピック史上初めての
延期が決定されましたが、このときはやむを得ない状況からIOCを含む関係者間の
総意として納得されたのではと思います。

 しかし、ここ1か月前あたりから著名な人たちから「中止」の意見が出始め最近
では周辺でも中止の声が聞かれるようになりました。政府委員会でも、野党からは、
この難しい判断に対する質問に熱気を帯びて、“したり顔”で、ぐんぐんせめて来
たりしていますが、自らの立場だったらどうしていたか。知る由もないところです。
         (ネット画像より)

 私はオリンピックを楽しみにしている観戦者の一人にすぎませんが、ここまで
「開催」を通して来たのだから、選手や関係者を考えれば、縮小してでも開催すべ
きじゃないのか・・という意見でした。
 しかし、政府の感染症対策分科会の尾身会長の6/2の衆院厚生省委員会での発言
『 現在の感染状況では「普通はない」。予定通り実施する場合は、感染対策の観
点から開催規模をできるだけ小さくし、管理体制を強化するのが主催者の義務だ』
を聞いて、改めて事の重大さをひしひしと感じたのでした。これまで、テレビなど
の答弁で、最も信頼すべき専門家の一人と考えていた人だからです。

 オリンピックを本当に開催するのか? 開催するとすればどのように行うのか? 
改めて問い詰められ、言葉に詰まってしまいました。

 ここでもう一度、感染状況や、世界の動向、日本での緊急度合いの推移などを振
りかえってみました。

  陽性者数             入院治療等を要する者の数


            1月  5月              1月   5月
               (厚労省HPより)


   5つの指標から見た危険度 5/20(赤はステージ4、オレンジはステージ3)             

                                    

                          (NHK特設サイトより)

 感染状況や重傷者の推移からみても、さらに緊急事態宣言、まん防措置地域の危
険レベルの推移からみても、やはり昨年12月、今年1月あたりのピークを真摯に捉
えて判断するべきだったかもしれないのですね。

 朝日新聞の世論調査で「東京オリ・パラをどのようにするのがよいと思いますか?」
に対して、「21年夏に開催する」「再び延期する」「中止する」の三つの選択肢を
尋ねた結果、次の結果が得られていました。

  20年7月=21年夏開催(33%)/再延期(32%)/中止(29%)
     10月=21年夏開催(41%)/再延期(26%)/中止(28%)
    12月=21年夏開催(30%)/再延期(33%)/中止(32%)
    21年1月=21年夏開催(11%)/再延期(51%)/中止(35%)   
        2月=21年夏開催(21%)/再延期(43%)/中止(31%)
        3月=21年夏開催(27%)/再延期(36%)/中止(33%)
        4月=21年夏開催(28%)/再延期(34%)/中止(35%)
        5月=21年夏開催(14%)/再延期(40%)/中止(43%)

で、このRDD調査でも、やはり1月時点が、「開催」の意見は、最小でした。

 「中止」の判断が、下しにくいのは、IOCが開催に強い意向を示している。そして、
この五輪の開催有無の決定権限は、IOCにあるのだそうです。「IOCと開催都市東京
都の契約において、開催契約を解除し開催を中止する権利はIOCのみにあり、開催
都市側に、その規定はない。」 その理由は、「オリンピック大会はIOCの独占的
財産だから」だそうで、つまり、オリンピックの「所有者」として、開催契約を解
除できるのはIOCなのだという。

 また、契約解除、つまり開催中止の正当な事由としては、戦争や内乱などのほか、
「IOCがその単独の裁量で、本大会参加者の安全が理由の如何を問わず深刻に脅か
されると信じるに足る合理的な根拠がある場合」という項目が記載されているので、
今回のパンデミックはまさしく深刻な脅威に相当するのではないかという主張もあ
り得ますし、オリンピック憲章にも、「選手のための医療と健康対策を促進し支援
する」、「安全なスポーツを奨励」という規定があるようですが、肝心のIOCが、
「やる」といっているのです。

 2021年5月21日、IOCのジョン・コーツ副会長は「緊急事態宣言が出ていてもオ
リンピックは開催できる」と断言。同24日にはトーマス・バッハ会長が、ビデオメ
ッセージで「東京大会を実現するために、われわれは犠牲を払わなければならない」
と発言しているのです。

 IOCとしては、昨今五輪開催都市立候補は激減し、このままでは五輪存続の危機的
傾向にあるさ中に、五輪を「延期」⇒「中止」となれば、それこそ危機を助長する
こととなるため、何としても開催にこぎつけたいのでしょう。

          

 もし日本が一方的に契約を解除する場合、それによるリスクや損失はもっぱら開
催国の組織委員会のものとなる との内容を承知の上で契約は締結されているでし
ょうが、東京都が承知していなかったのは、このコロナパンデミックの発生なんで
すね。(だれにも予測などできなかった未曽有のこと。)


 IOCと開催都市(東京都)両方が合意して中止とした場合、つまり、日本とIOCが
開催都市契約の枠組みの中で、共に中止を決定することが、唯一の現実的なシナリ
オになるのでしょう。 もしそういう展開になれば、「保険」という要素がからみ、
然IOCや開催国の組織委員会は保険に入っているだろうし、放送各社やスポンサー
各社も保険をかけているはずですから、大会に関わる保険金支払いの案件となり、
険金は大会主催者側の経費実費は補償されることになるでしょう。
 しかし、五輪開催を期待して日本国内で行われた数々の関連投資は補償の対象外
となります。たとえば、海外からの観客を期待して投資した費用などは、取り戻せ
ないことになりますが、すでに政府は海外からの一般観客を受け入れないとしてい
ますから、このことは保険とは無関係の話となります。

          

 今年1月には、アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は1月15日、
「東京オリンピック開催の望みは薄くなった」という見出しの記事を掲載し、新型
コロナウイルスの感染拡大が世界で広がっていることから、開催中止の可能性があ
ると指摘していますし、日本の河野太郎行革担当相も1月14日に、東京オリンピック
が「どちらに転ぶかは分からない」との発言もあり、IOC委員のカナダのディック・
パウンド氏も、開催について「確信が持てない」とBBCの取材に述べていたのでした。

 さらに、東京大大学院経済学研究科の仲田泰祐准教授らが30日までに、東京五
輪開催時に新型コロナウイルスの感染拡大がどう進むかの試算をまとめています。

       (東京大大学院仲田准教授資料より)

 上のグラフは、選手約1万5000人、大会関係者約7万8000人などが各地
から入国するとして、報道陣らを含めて計10万5000人が入国し、半数が新型
コロナワクチンを接種済み、100人が感染したまま検疫を擦り抜けて入国すると
の前提条件設定しています。
 現在の緊急事態宣言が6月中旬に解除され、ワクチン接種が1日60万回のペー
スで実施されると仮定した場合、都内の感染は10月中旬に再びピークを迎えると
の結果が示されています。パブリックヴューイングによる人の流れが大きなウエイ
トを占めていると指摘されていますが、今回はすでに、このPVは中止と決定されて
いますから、このグラフよりは下回ることになります。

          それでも・・

 『 菅義偉首相は1日の参院厚生労働委員会で、東京五輪・パラリンピックに関し、
「国民の命と健康を守るのは私の責務だ。五輪を優先させることはない」と強調し
ました。その上で、「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じた上で、国民の
命と健康を守ることが開催の前提だ」と重ねて説明した。』とあります。

            

 このように見てくると、後付けではありますが、昨年の12月~今年の1月あたりが
「中止」の決断時期だったのかもしれません。もちろんIOCの説得のために、各国
との根回し、同調を取り付けることは言うまでもありません。 すなわち、各国
(主要国)の反応(五輪参加難航もしくは不可)などを取り付けて、IOCに対応する
機会が得られたかもしれません。このあたりの強力な情報活動と行動がとられたの
でしょうか? (各国から見放されたのでしょうか? あるいは、努力しなかった
のでしょうか?)

 いずれにしても、今となっては、まさしく「前門の虎、後門の狼」の態となり
その判断には相当な力が必要でしょう。

 

                                                                                                                                                                                                                                                 
都の雨に 鳥羽一郎さんの歌唱です。

 

 

 

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