蓼科浪漫倶楽部

八ヶ岳の麓に広がる蓼科高原に、熱き思いあふれる浪漫知素人たちが集い、畑を耕し、自然と遊び、人生を謳歌する物語です。

映画字幕の世界  (bon)

2023-07-17 | 日々雑感、散策、旅行

     今朝の1時半迄ウインブルドンのライブを見ていました。1-6,7-6,6-1のところ
    まででしたが、凄い熱戦でした。 明けてネットで確認すると、その後3-6,6-4で、
    若い(20歳の)アルカラス(スペイン)が初優勝していました。ジョコビッチ(セルビア)は、
    5連覇ならずでしたが、この試合時間、4時間42分の大熱戦でした。

 

 普段何気なく見ている映画の字幕について、これまで多くの字幕を担当さ
れて来た 映画字幕翻訳家の戸田奈津子氏が今年3月に講演された記録が、
手元の会報にありましたので、タイトルも講演時の「映画字幕の世界」をそ
のまま拝借して、お話の内容に加えて、ネット情報なども参考にしながらご
紹介したいと思います。

 これまでのヒット映画、地獄の黙示録 インディージョーンズ E.T. 戦場
のメリークリスマス バック・ツー・ザ・フューチャー シンドラーのリスト 
スピード アポロ13 マディソン郡の橋 タイタニック ジュラシックワー
ルド インフェルノ など年間50本に及ぶ数々の映画の字幕翻訳を担当されて
いたそうですが、映画字幕の翻訳という独特の難しい世界や映画翻訳家になる
までの苦労話なども紹介されていました。

       戸田奈津子さん
        (ウイキペディアより)

 戸田奈津子さんは、1936年生まれの87歳で、お茶の水大付属高校から津田塾
大学英文学科を経て、英語好きと映画好きから映画字幕の仕事の道に進まれ
たのです。 しかしこの世界は極端に狭い分野で、英語が数人で仏語、独語、
伊語を含めて総勢10人程度の中年男性が外国映画の字幕翻訳を担当していて、
女子大出の若い女性の入る分野はなかったそうです。それでも、翻訳や英文
タイプのアルバイトなどで20代、30代を過ごしたのだそうです。

 転機は、当時宣伝部長をしていた水野晴朗から映画関係者が来日するので
英語が話せて映画に詳しい通訳が必要になったとして急遽通訳の仕事を任され
ることになったのです。英会話をしたのはこれが初めてという乱暴な話では
ありましたが、懸命に対応しているうち、洋画の大スターに会える楽しみも
あったりしたそうです。
 そして、1976年「地獄の黙示録」を撮影中のフランシス・フォード・コッ
ポラ監督の来日時の通訳兼ガイドを務めたのが大きな転機となったのです。
撮影現場のフィリピンロケにも同行し、買い物やガイド役を務めたりしたこと
から、「地獄の黙示録」が完成した際には、監督の推薦で日本語字幕を担当
することとなったのだそうです。
 以降、年間50本のペースで字幕翻訳を手掛けるようになったとあります。
年間50本といえば、週に1本の割ですから大変な仕事だったと思われます。

          地獄の黙示録(シーン)
          (youtubeより)

 字幕翻訳のむずかしさについて述べられています。 小説などの翻訳だと
字数制限がないので一言一句丁寧に訳せるところを、映画のセリフの場合は、
セリフを全訳していたのでは、字幕が読み切れず、映画にも集中できない結果
となるので、
セリフは大幅に縮めて1秒間に3~4文字に収まるように工夫する
のだそうです。 例えば、“I met Margaret in San Francisco.”(私は、
サンフランシスコでマーガレットに会った)というセリフの場合、約3秒の場面
で1秒間に3文字とすると、字幕は9~10文字に収めなければならないのです。
しかし、サンフランシスコとマーガレットだけで14字ですから、これを字幕
とする場合、その場面がサンフランシスコですでに分かっていれば「この街」
でよく、マーガレットも誰のことかわかっていれば「彼女」で済ませる。
つまり「この街で彼女に会った」となるのです。

 もう一つ例が挙げられていました。“I thought you were gone.”(あなた
はもういないと思ったわ)というセリフの場合、1秒程度なので、字数制限は
4文字程度。そこで(まだいたの?)と5文字に縮めるのです。 原文通り
ではないけれども要旨は同じで、これが「字幕」なんですね。

       マディソン郡の橋(シーン)
        (youtubeより)

 字数制限の他にもむずかしさがあります。文化的背景の違いです。外国との
文化、宗教、政治、慣習などの違いを、字数制限の下で日本語に置き換え即座
に観客に理解させるのは至難の業だとあります。
 これらの中でも、コメディ映画の場合の笑いやジョークは、歴史的、文化的
な背景が分からなければ全く通じないことがあります。また、英語でダジャレ
を言う場面なども、そのままでは通じませんからその意味するところを場の
雰囲気に合わせて翻訳したりすることもあります。

 また常識も試されることがあります。 例えば、バーで男が隣にいる女に
“What would you like to drink?”(何が飲みたい?)と尋ねると、女が
“Double champagne”(シャンパンをダブルで)と答えるシーンでは、シャ
ンパンにはダブルはありませんから、女の無教養さを表している笑いの場面
なのですが、字幕の付けようがなかったことがありました。

                         

 大学を出てこの道を目指して努力を続けてようやく43歳にして、映画字幕
翻訳家としてデビューすることが出来たのでした。 それからというもの、
何十年間も、週に1本の字幕翻訳を続けてきましたが、あまりにも多くの作品
を担当してきたために、最近テレビなどで再放送された映画を観て最後に
「字幕 戸田奈津子」と表示されて、あッこれも担当していたのかと吃驚す
ることがあるそうです。

                    

 しかし、これまでに字幕について「誤訳」をしているなどとの批判をうけた
こともあったそうです。 それは、「映画字幕の翻訳と通常の翻訳は別もの
であり、字幕では字数が縛られていることを知らない人からの批判であると
気にしません。もちろん間違った訳や下手な意訳はいけませんが、理想的な
字幕は、観客に字を読んだという意識が何も残らない字幕なんです。画面の
人が日本語をしゃべっていたと錯覚を起こすくらい「透明な字幕」が一番い
いんです」とあるとき語ったとあります。

                

 記事にはありませんでしたが、このほか私が字幕に感心しているのは、俳優
の表情やともすれば口の開け方というかしゃべる雰囲気が伝わってくるような
字幕があります。英語など外国語の読解力の他、日本語の語彙、表現力にも
たけた才能が必要だと思うのです。

 最近は、日本の映画や外国ドラマを日本語に吹き替えたのなどはむしろ分か
りにくく、字幕の方を好んで見ています。加齢で聞き取れにくくなったから
なんですね。

 最近では、邦画でも字幕付き映画があるそうですね。

 

 

 

『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』特別予告映像 2月10日(金)より劇場公開!

 

 

 

コメント (4)
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