何をもって「幸福」というか? 難しいですね。 刹那的な幸福もあり、
それがしばらく続くこともあり、ある人には幸福であっても、ある人には必ず
しもそうでないこともある・・「幸福」とは何でしょう。Wellbeingの意とさ
れてもいます。
(ネット画像より)
国連の持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)は 3月20日、
2023年版の「世界幸福度報告書」を発行し、世界幸福度ランキングを発表し
ています。 首位は6年連続でフィンランド。2位デンマーク、3位アイスランド
とトップ・スリーは昨年と変わらない。日本は2022年の54位から、2023年は
47位へと7つ順位を上げています。
かって、“世界一幸せな国”は、南アジアのブータンがそうであると、多く
の人は記憶されているのでは、と思います。 世界幸福度ランキングが発表
されたのは、2012年が第1回で、その翌年、2013年度に北欧諸国に続いてブー
タンは世界8位となり、“世界一幸せな国”として広く知られたのですね。
しかし、ブータンは2019年度版で156か国中95位にとどまって以来、このラン
キングには登場しなくなっているのです。今年度版にもありません。
ブータンの幸福度が高かったのは、情報鎖国によって他国の情報が入って
こなかったからだと分析されていました。「情報が流入し、他国と比較できる
ようになったことで、隣の芝生が青く見えるようになり、順位が大きく下がっ
たのです。」の意見があります。 当時ブータンは、国民が皆一様に「雨風を
しのげる家があり、食べるものがあり、家族がいるから幸せだ」としており、
それまで幸せと感じていても、人と比べ始めたとたんに幸福度が下がってし
まったのですね。
で、国連の発表する幸福度はどのようにして算出されているかを見ますと、
『幸福度ランキングは、対象国で実施した世論調査をもとに、自分の幸福度が
0から10の10段階で自己評価した主観の平均を出し、その結果を、「一人当たり
GDP」「健康的な平均寿命」「困ったときに助けてくれる友達・親族はいるか」
「人生で何をするか選択の自由があるか」「GDPにおける寄付実施者の度合い」
「政府機関に腐敗は萬栄しているか」「昨日楽しかったかどうかの自己認知の
度合い」「昨日楽しくなかったかの自己認知の度合い」の6つの説明変数で回帰
分析し、寄与度も分析し数値化した。』とあり、具体的なところまでは分かり
ませんでしたが、まぁ、これらの数値に基づく結果の順位が示されているの
ですね。
上位20位までを、元の表から抜粋して以下に示しました。
(ウエルナレページより)
で、フランスが21位、イタリア31位、日本47位(幸福度指数は6.129)とあ
りました。他のアジア諸国では、シンガポール25位、台湾27位、サウジアラ
ビア30位、韓国57位、タイ60位、中国64位、フィリピン76位、香港82位で、
最下位はアフガニスタンでした。
これらの数値が、算出方法が上に述べたような基準に従っていますから、
絶対的な幸福(それすらも明確に定義できませんが)を示しているわけでは
なく、一つの尺度として順位化しているのですが、日本がなぜ、低いのかに
ついては次のような分析がありました。 すなわち、
『日本の幸福度が低いのは、他人と比べたがる気質も関係しているでしょう。
精神医学においても、他人と比較する人は幸せになれないことがわかってい
ます。欧米人は、他人と自分を比較したがらない。横並びを嫌い、収入、学歴、
容姿、ファッションなど、さまざまな要素で他人と違うことを好みます。』
とあるように、国民性によるところがあるようです。国連の調査項目によっ
ても順位は変化するでしょうね。
ところで、手元の会報記事に、フィンランド人のラウラ・コピロウさん
(フィンランド、エスポ―市生まれ、女性、34歳?)の『幸福度ランキング』
に関した講演録がありました。
講演は、今年3月10日にありましたから、この時の演題には『幸福度連続
5年一位』として(23年度はまだ発表されていないので)お話されていました。
ラウラさんは17歳の時留学生で来日し、函館の高校で過ごし、大学はヘル
シンキ大学に入学し、ほどなく再来日し早稲田大学に短期留学し、2013年に
ヘルシンキ大を卒業すると国費留学生として北海道大学大学院に入学し修士
課程を修了して、日本のIT企業に就職しました。そこではデジタルマーケティ
ングを担当した後、18年にフィンランド大使館に転職し、現在上席商務官と
して活躍されています。
(ネット画像より)
フィンランドといえば、サンタクロース、ムーミン、オーロラ、サウナ・・
を思い浮かべる人も多いかと思いますが、ラウラさんは、フィンランドが幸福
度連続一位を占めていることから、フィンランド人の自然観、仕事や休暇、
生活などに対する考え方や日本人との違いなど、幸せの基準について紹介さ
れていました。
多くの項目について、フィンランド人はどのように考えているか、日本との
違いなどに触れていますが、ここでは、そのうちいくつかを抜き読みしてご
紹介したいと思います。k
フィンランドでは、幸福度と経済が両立しているといっています。定時に
帰り残業はなく、有休消化率もほぼ100%ですが、一人当たりのGDPは日本の
1.25倍だと。フィンランドでは教育費は大学を含めて無料で、しかも生活費
が国から援助される。失業しても失業手当で生活ができる。転職の場合もリ
スキリングの制度が整っている。離職せずに新しい職業訓練が受けられる。
何があっても安心できるから挑戦できる。
フィンランドでは、「最も優秀な人や最も裕福な人が、最も高い地位に就
く社会」ではなく、「最も弱い立場にいる人が上昇して行ける社会」を理想
としているので、みんなで弱い立場にいる人を支え合うのです。ここで弱い
立場にいる人とは、自分で稼げない人のことで、そのため国が子どもや学生、
失業中の人、定年退職した人を支援するのです。
国民の70%以上が「税金を払いたい」と考えています。「税金を払っても、
他人に使われるだけ」と思うと、誰も税金を払いたくないけれども、フィン
ランドでは、相互信頼度が85%と非常に高く、「税金は社会と自分に返って
くる」との安心感があるので、税率が高くても支払うのです。
仕事と休みは、同じくらい大切だと考えています。仕事の結果は重視しま
すが、休みを取ることに罪悪感なしに自分のために休みをとる。夏休みは3~
4週間ほど。また、日常ではお昼休憩の他に15分のコーヒー休憩が2回取ること
が法律で決められているそうです。
フィンランド人の幸せ感とは、その基準がシンプルで、「太陽が出て、ご飯
がおいしくて、大切な人がいれば、それで幸せ」ですが、日本人の多くは、
「将来もっと凄いことが起きて、本当の幸せが訪れる」と考えているように
思います。そして常に他人と比べているように感じます。フィンランド人は
「自分がいいと思っていることはいい」と考えるので人と比べないし「今を
生きる」ことを大切にしている人が多い。
最後に、日本とフィンランドで、「平等」の考え方が違っているようだと
指摘されています。例えば日本企業では、皆が同じ時間に出社して、同じ時
間に退社していることから、「皆が同じ行動をとっている状態=平等」と考
えているのに対して、フィンランドでは、「生まれた時に皆が何でもできる
状態、そして様々なサービスを受けるチャンスをすべての人に平等に与えら
れる状態=平等」と考えている。と結ばれています。
この最後の「平等」に関しては、一面を捉えた感想のように思いますが、
確かに、みんなが一斉に行動しているように見えるのは、異様なんでしょう
ね。それと、会社と自分の捉え方では、やはり日本では、まだまだフィンラ
ンドのように割り切れない部分が多いと思います。
確かに、他人と比べる‥のは、特徴なのかもしれませんね。比べて異なる
行動をとるとは限らず、比べて皆同じ行動をとる・・そのような民族(儒教
思想)なのでしょうね。しかし最近の若年層ではかなり違ってきているかも
しれませんね。
それは、日本の伝統的な他人を思いやる心や、やさしい心遣い、目上を敬う
などが、次第に影を潜めているのかもしれません。
Body and Soul - Benny Goodman 1980