最近、オーバーツーリズム(観光公害)が、富士山や京都をはじめ多くの地域で問題
となっています。
ネットの「AIによる概要」によれば、オーバーツーリズムとは、特定の観光地で観光
客が過剰に集中することで、地域住民の生活や自然環境、景観などに悪影響を及ぼす
現象を指します。日本語では「観光公害」とも呼ばれます。
オーバーツーリズムの具体例として、・宿泊施設の不足 ・景観の損失 ・ごみの投棄
・騒音 ・交通渋滞 ・交通機関の混雑 などが挙げられています。
なので、オーバーツーリズムは、観光客の満足度を低下させ、観光地としての魅力を
減少させるなど、大きな損失につながる問題だとあります。
観光ニッポン
(ダイヤモンド・オンより)
手元にある会報記事に『オーバーツーリズムにどう対処するか』(田中俊徳氏、九州
大学アジア・オセアニア研究教育機構准教授)に即発されて、ネット記事などをサーフ
しながらこの問題を俯瞰してみました。
観光地が混雑したり、自然環境が壊されたりする例は以前にもありました。例えば、
尾瀬や箱根、上高地などの景勝地がゴミに溢れ、大渋滞や自然環境が荒らされる事態は
ありました。これらの課題を受けて、研究者の間では「過剰利用(Overuse)」や
「環境収容力(Carrying Capacity)」といった言葉で、その対策や戦略が検討されて
来たとあります。
しかし、昨今のオーバーツーリズムという現象は、かってのそれとは大きく異なる
点がいくつかあるというのです。
一つは外国人の増加です。2024年の国内観光客の約8割は日本人で占められています
が、言葉や文化、ルールやマナーの違う外国人の急増がオーバーツーリズムを引き起こ
しているのです。
もう一つのこれまでと異なる点は、スマホやSNSの影響だとあります。一昔前では、
テレビCMなどで、北海道美瑛の「ケンとメリーの木」が突如として有名になり観光客
が殺到する現象はありましたが、スマホ時代では、これまでとは違った予測不可能な
ようなところが、突然嵐のようにブームとなるなど観光地としてノウハウのない地域が
突如としてオーバーツーリズムに陥るのです。
(現代ビジネスより)
話は少し戻りますが、日本における観光推進の立った動きは、2003年の小泉内閣
時代に観光立国推進が図られ、2006年に『観光立国推進基本法』が成立し、翌年より
施行され、2008年には観光庁(国土交通省)が設置されました。つまり安倍内閣時代
に積極化され、2014年には「アクションプラン2014」により、2020年に向けて訪日
外国人旅行者数2000万人を目指す・・とのスローガンを掲げ、「日本再興戦略」と
して、2000万人時代を早期に実現する・・などの方針のもと、2017年から毎年「観光
ビジョン実現プログラム」を更新して来ています。
新型コロナで、世界的に沈滞化しましたが、昨年(2023年)には、「新時代イン
バウンド拡大アクションプラン」が決定され、「観光立国推進基本計画」が閣議決定
されました。 具体的には、インバウンド回復により早期に5兆円に載せる。 2025年
までに外国人旅行者数を2019年実績(3188万人)を超える・・などが盛り込まれて
います。そうなんですね。2016年には2000万人、2018年には3000万人を超えています。
(観光庁より)
それで、どうするか? ということについて会報にいくつかの提言があります。
観光地の「収容力(キャパシティ)」を超えて観光客が押し寄せることでオーバー
ツーリズムが起こるわけで、必然的に「適切な人数」(=キャパシティ)が存在する
のです。キャパシティは、つまり、宿泊施設、トイレ、道路、駐車場、交通機関などの
容量のことです。
これらの設備などを増強して容量を増やす(キャパシティを大きくする)ことにより
対策を講じることになりますが、季節変動等により一時的にピークとなるような場合
には「ピークカット」により制限することもあり得る・・とあります。設備等を増やす
場合は閑散期におけるコストを考慮した経済バランスを図る必要があるのです。
しかし、収容人員は単に「数」だけではないようです。同じ100人の観光客でも、
同じ言葉を話し同じ価値観を持つ日本人だけの場合と、うち30人が日本語を話さず、
価値観の異なる外国人である場合、そのキャパシティは異なるでしょう。数だけでは
なく観光客の質も重要なポイントであるため、観光客の特性と行動を把握することが
重要だとあります。
このようなキャパシティのある観光地など(花火大会などの一時的な会場も含め)
での観光客をコントロールするには、予約制、宿泊税、入域税、利用料等を徴収し、
観光問題の財源にすることは効果的ではあるが、これだけでは不十分で、特に外国人
観光客の増加に向けてさらに拘束力のある法制度を整えることが大事であると述べられ
ています。
(フジヤマNAVIより)
富士山は、国立公園で世界遺産でもあるのに、これらの対策は山梨県と静岡県がバラ
バラに対処しているようでは、利用者にもわかりずらく、いっそのこと「富士山管理局」
のようなワンストップの責任主体を作ることが必要ではないかとうたわれています。
そして、観光に関するルール作りは利害得失が大きいため政治のリーダシップも欠かせ
ないと結ばれています。
上で見たように、これまで政府の肝いりで、イケイケどんどんの太鼓が鳴り響いて、
成果を上げてきていますが、オーバーツーリズムの問題解消に向けた対策が望まれます
ね。
参考:オーバーツーリズムを感じている住民の地域別の割合は、京都市が最も高く、次いで
浅草のある台東区、奈良市、宮島のある広島県廿日市市の順となっている。 調査対象は一定
程度観光客が急増している地域だが、その中でもこれら地域は、より多くの住民がオーバーツー
リズムを感じていることがわかった。2024/08/08
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