今日で、あの日から丸4年が経ちました。 既に4年という月日が過ぎるというのに、
いまだに行方不明者が2,584人にのぼり、避難者は22万8千人を超えるという。
福島原発は対処療法に明け暮れ、未だ汚染水漏れが納まらない。大きな災害に改めて
思いを寄せ、被災された方々のご苦労に胸が痛みます。
今週末(3月14日)には、北陸新幹線(長野~金沢)が開通します。 最近のテレビなどで、沿線スポットや
金沢古都巡り、地域特産品など、いろんな角度から取り上げて、盛り上げているように思えます。
少し前に、話題になったクルーズトレイン “七つ星” という、豪華列車の紹介が報じられていました。 どこかヨーロッパあたりの列車かと見間違えるほどですが、じっと見ていると日本独特のおもてなし心が滲み出て
すぐにわかります。 とにかくすごい列車で、いつかは乗ってみたくなりました。
そんな前置きは、さておき、先ごろH氏からネット配信いただいた記事に “JR九州” の痛快な取り組みが
紹介されていましたので、ここにコピペさせていただきました。
七つ星列車、いずれの写真もJR九州HPから拝借しました。
列車全景 DXスイート
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「JR九州会長『型破り経営者宣言』」
唐池 恒二 (九州旅客鉄道株式会社 代表取締役会長)
文藝春秋 2015年3月号 p354-363
【要旨】大きな反響を呼んだ九州新幹線全線開通のCMが記憶に新しいJR九州(九州旅客鉄道)は、さまざまな
アイデアを駆使したビジネス展開でも知られる。 「ゆふいんの森」に端を発するD&S(デザイン&ストーリー)列車や、
日本初の豪華クルーズトレイン「ななつ星in九州」、また、鉄道関連以外にも船舶、飲食、農業まで多角的に
事業を営む。それらの破天荒な 発想による取り組みを先頭に立って進めてきたのが、本記事の筆者、同社の
唐池会長だ。 同氏の手がけたビジネスの根底にあるのは「九州を元気にする」こと。それは政府が重要課題として
掲げる「地方創生」にもつながるものだ。本記事では、他のビジネスのヒントにもなる、これまでのJR九州における
取り組みと、そのもとになる考え方を語っている。
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2013年10月15日、クルーズトレイン「ななつ星in九州」の初運行。どこの沿線や駅でも、手を振る大勢の
人々がいる。そして、駅に降り立った私の手をとって、「こんなすごい列車を九州に走らせてくれた。九州の誇りだ」と
口々に言ってくれたのです。当初、私は不安でした。誰もが気軽に乗れるわけではない豪華クルーズトレインを
走らせることに、地元の方々がどのように感じるのか、と。しかしそれは杞憂でした。
安倍政権のアベノミクス第三の矢の成長戦略のなかで、最重要課題として掲げるのが「地方創生」です。
このスローガンは、ひらたく言えば、「地域を元気にする」ということ。それはまさに、私たちJR九州がこれまでずっと
取り組んできたことなのです。
大阪出身の私がJR九州に勤めることになったのは、国鉄分割民営化直前に門司鉄道管理局勤務でそのまま
JR九州に振り分けられたからです。福岡は、現在でこそ全く違いますが、“ムラ社会”のような閉鎖的な場所だと感じ、
苦労したものです。その頃、胸襟を開いてくださった社外の飲み友達がいまして、非常に斬新なアイデアに溢れた
方でした。とりわけ彼が強く薦めていたのが、九州全土を周遊する豪華な寝台列車だったのです。しかし当時は
営業本部販売課の一介の副課長に過ぎず、そんな豪華列車など直ちに実現できるわけもありませんでした。
その頃、由布院に向けて観光列車を走らせるということになり、そのプロジェクトを担当することになりました。
由布院が求めているものは何か、私は取材を続けました。すると、ドイツのバーデン=バーデンのような、
温泉と自然が豊かなヨーロッパの高原リゾートを目指していることがわかりました。そんな光景を念頭に置いて考え、
「ゆふいんの森」と命名したのです。
このネーミングは当時、社内で「長すぎる」と議論を醸しました。しかし、私は、「お客さまは、長い名前はすぐに
省略して呼んでくれます」と譲らなかった。つまり、略して呼ばれることが浸透したことの証だと考えていたのです。
運行を始めてすぐに「ゆふもり」と呼ばれているのを聞いたときは嬉しかったものです。
89年3月、博多と別府を結ぶ「ゆふいんの森」は運行を開始します。もっとも、その出発式のまさに当日付けで、
私は船舶事業準備室に異動となり、高速船「ビートル」の就航準備に邁進することになります。
「ゆふいんの森」は、「地域と一緒になって元気を作り出す」というJR九州の目標が具体化した最初であり、
のちに私がJR九州の社長就任後、次々と生み出していった「D&S(デザイン&ストーリー)列車」の魁たる存在です。
地域が持っている文化や歴史、素材からなるストーリーを踏まえ、そのストーリーが魅力的に輝くための列車の
デザインを目指す。そうした想いを込めて、単なる観光列車ではなく、D&S列車という言葉を造ったのです。
現在、D&S列車は9本が運行していますが、外観も内装もすべてデザインは異なります。地域の魅力を最大限
表現するデザインは、水戸岡鋭治さんの存在なくしては実現できませんでした。
「指宿のたまて箱」というD&S列車は、前方から車体を見ると、左半分が白、右半分が黒というシンプルにして
ユニークな配色ですが、デザインが先行したわけではありません。ネーミングがコンセプトであり、ストーリーなんです。
2011年3月の九州新幹線の全線開業に合わせて、鹿児島中央と指宿を結ぶ特急列車を走らせることになりました。
あれこれ考えて、数年前に指宿の旅館の社長さんが、指宿は浦島太郎伝説でまちおこしをしていると話していたことを
思い出しました。指宿には龍宮神社があります。では、浦島太郎を思い浮かべることのできる列車名にすれば、
と思ったのです。考えているうちに、車両を箱に見立てて、「玉手箱」というのが浮かんだ。「指宿のたまて箱」という
名前とともに、「黒髪の青年だった浦島太郎が玉手箱を開けると白髪の老人になったんですから、車両を真っ二つに
して、こっちを真っ黒にしてこっちを真っ白にしませんか?」と水戸岡さんに提案したのです。
「ななつ星in九州」の命名は非常にてこずりました。生みの苦しみを味わって辿り着いたのが、「九州は七県で、
自然・食・温泉・歴史文化・パワースポット・人情・列車という七つの観光資源があり、車両は七両編成」ということで
「ななつ星」だったのです。
他に誇るようなストーリーがない地域はどうするのか。私は、物語がない地域は、物語を作ればいいと考えています。
熊本と天草を結ぶ特急「A列車で行こう」は、2011年10月に運行を開始しました。A列車のAは、天草のAです。
そこから何かないかと考えて、『Takethe 'A' Train』というジャズのスタンダードナンバーを連想しました。
こうした取り組みに対して、天草の方々が喜んで応えてくれたのです。「せっかくこういうD&S列車が誕生したんだから、
天草でジャズフェスティバルをやろうじゃないか」。現在、「A列車で行こう」の運行に合わせたジャズコンサートが
開かれるなど、地域内でどんどん話し合いが進んでいます。
JR九州は“異色のJR”と言われています。その原因の一端は水戸岡さんにあるのですが(笑)、お客さまが求めて
いることに気付き、常に提供することができたからだと思います。それは、鉄道会社にいながら、船舶や外食といった
鉄道以外の事業に長く携わり、鉄道事業を客観視できたという私自身の経験もあったと思います。
「世界一の列車」を目指した「ななつ星」は九州という地域に根ざしたからこそ注目されました。ですから、
「ななつ星」から見える車窓の景色も大事な要素です。九州には、日本の原風景というべき里山や棚田などの
美しい風景が広がっています。ただ、実際は休耕田や荒地が多く、雑草生え放題で車窓が寂しい場所も少なく
ありません。九州で仕事をさせていただいている会社としてなんとかしたい。そこで、「JR九州ファーム」を立ち上げ、
農業に取り組んでいます。荒れ果てた土地を生きた土地に甦らせれば、そこに近辺の人たちの雇用の場が
生まれる。やがては回り回ってJR九州のお客さまになってくださるかもしれない。農業というのは一番地域を
元気にすると思っています。
JR九州は、D&S列車、外食、船舶、農業など様々な分野で知恵を出して、九州が元気になることを目指して
きました。そして、さらに地域の方々を100%意識した事業展開を可能にするため、2016年度の株式上場を
目指し準備しています。上場によって、鉄道沿線の住民のみなさんに株主になっていただき、意見や要望が
届きやすい環境を作りたいと考えております。「ななつ星」の車窓から見えた地元の方々の笑顔を私は終生
忘れることができないでしょう。今後も地域の笑顔を作るべく、努力してまいります。
コメント: JR九州のように、「ストーリー」を提供し、それを顧客や地域住民と共有することは、ビジネスや
地域活性化に資する強力な手段なのだろう。しかもJR九州の場合、唐池氏や水戸岡氏が、自ら “面白がって”
アイデアを出していることが、本記事からうかがえる(もちろん、苦労も多いのだろうが)。特急「A列車で行こう」の
事例などは、その面白さに地域住民が乗っかり、さらに面白い企画を生み出そうとしている。頭を柔軟にして、
“面白がる” ことが、成長戦略の大きなポイントといえるのではないだろうか。
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スタンダードナンバーで・・(先日も選曲しましたが、ここは是非とも。)
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